感染症や花粉症対策でマスクかぶれが急増! 頬・唇・耳のかぶれの対処法を解説

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

今や生活必需品ともいえるマスク。感染症予防や花粉症対策のグッズとして活躍していますが、その一方で、マスクかぶれに悩む人が増えているようです。そこで、マスクかぶれの対処法をご紹介します。

マスクかぶれに悩んでいる人はどのくらい?

いわゆる「マスクかぶれ」とは、マスクの着用が原因で起こる肌荒れやかぶれのことで、「マスク荒れ」や「マスク肌荒れ」などとも呼ばれています。感染症の流行が続く中で、マスクかぶれに悩む人が増えたといわれていますが、実際にどのくらいの人が悩んでいるのでしょうか?
株式会社ポーラが行ったアンケート調査(※1)によると、マスクを着ける時間が長くなったことで肌の不調を感じたことがある人は、約80%でした。中でも、もっとも多い症状はニキビや吹き出物で、約60%を占めています。そのほか、肌の赤みやかゆみに悩まされる人が一定数いることも、明らかになっています。
また別の調査結果からも、マスクかぶれに悩む人が増えていることが窺えます。株式会社インテージヘルスケアが発表した「2020年度10月度市販薬(OTC)市場トレンド(※2)」によると、皮膚用薬(殺菌消毒剤除く)の売れゆきは好調をキープしています。その理由として、乾燥対策で保湿剤や湿疹・皮膚炎などの薬に対する需要が増えていることが挙げられていますが、マスクかぶれに悩む人が増えていることも、要因の一つと考えられています。これらの調査から見ても、やはりマスクかぶれに悩む人が多いことが予想されます。
では、マスクかぶれの原因や症状にはどんなものがあるのでしょうか。

※1:https://www.pola.co.jp/company/news/po20200717_1/un1llu0000009scg-att/po20200717_1.pdf
※2:https://www.intage-healthcare.co.jp/news/release/d20201127/

マスクかぶれ:その原因と症状とは?

マスクによって肌がかぶれる理由として、次のことが挙げられます。

〇マスクの摩擦による刺激

毎日、長時間にわたってマスクを着けていると、肌との間に生じた摩擦が刺激となって、皮膚がかぶれてしまうことがあります。こうした物理的な刺激によるかぶれは、専門的には「刺激性接触皮膚炎」と呼ばれていて、赤みやかゆみ、湿疹、水ぶくれなどの症状をともないます。とくにマスクかぶれの場合は、マスクに触れる口まわりや頬、マスクのゴムが当たる耳の後ろなどに症状が出やすくなります。

〇蒸れ

マスクによって口のまわりが蒸れることも、マスクかぶれの原因になります。というのも、蒸れていると、細菌などが繁殖しやすくなるからです。たとえば、顔の常在菌であるアクネ菌もその一つ。アクネ菌が過剰に繁殖すると、ニキビなどができやすくなります。ちなみに、マスクをこまめに交換したり、洗濯をして清潔にしておかないと、細菌がより繁殖しやすくなるので、注意しましょう。

〇乾燥

マスクを外すと、マスク内の水蒸気が皮膚の必要な水分とともに蒸発していくため、肌は乾燥しやすい状態になります。乾燥が進むと、皮脂が過剰に分泌して、毛穴のつまりやニキビといった肌トラブルにつながることがあります。さらに、肌を守る「バリア機能」が低下するので、摩擦などによる刺激をより受けやすくなります。
また、秋や冬になると唇の荒れに悩む人が増えますが、マスクを外すと唇も乾燥しやすくなるので、ケアを怠っていると、症状がより悪化することがあります。

〇そのほか

ほかにも、人によってはマスクの素材に対するアレルギーを持っていることが、かぶれの一因になります。また、洗ってくりかえし使えるマスクの場合、洗濯時のすすぎが不十分だと、残った洗剤が原因で症状が現れることもあります。

マスクかぶれの予防法:基本の対策

ここで、マスクかぶれの予防法をご紹介しましょう。まず基本の対策として、次のことを実践してみましょう。

〇マスク選びの見直し

まず大切なのは、自分に合ったマスクを着けること。感染症の流行にともなって、素材やデザイン、大きさなど、さまざまなタイプのものが手に入るようになりました。デザインや呼吸のしやすさなど、人によって選ぶ基準は違うでしょうが、マスクかぶれ対策の点でいうと、素材と大きさはとても重要なポイントになります。たとえば、素材はガーゼや布(綿)のほうが肌への刺激を抑えられるといわれています。ただし、これはあくまでも一般的な話で、人によって合う・合わないがありますから、まずは自分に合う素材を探してみましょう。また、ガーゼを挟むことで摩擦による刺激が緩和されることもあります。
次に、サイズ。サイズが合っていないと、口のまわりや耳の後ろに摩擦が生じやすくなって、かぶれる原因となります。もう一度、ふだん使っているマスクのサイズが合っているのか、確認してみましょう。

〇マスクを清潔に保つ

使い捨てタイプのマスクは、毎日交換しましょう。また、布マスクやウレタンタイプなど、くり返し使うものは、しっかり洗って清潔に保ちましょう。使用し始めたばかりでも、とくに汗をかいた後などは、マスクが湿って雑菌が繁殖しやすくなりますので、交換することをおすすめします。なお、お伝えしたように、マスクを洗濯する際は、洗剤によるかぶれが起こらないように、十分なすすぎを心がけましょう。

マスクかぶれの予防法:部位別の対策

次に、部位別のマスクかぶれ対策をご紹介していきましょう。

〇頬

マスクに直接触れる頬は、摩擦が生じやすく、かぶれが起きやすい部位です。くわえて、マスクを外した直後は、水分が蒸発するため、乾燥もしやすくなりますから、着用前や外した後はクリームなどでこまめに保湿しましょう。また、赤みやかゆみが出ているときは、ふだん使っているスキンケア製品や化粧品も刺激になることがあるため、低刺激のものに切り替えることも検討しましょう。

〇唇

皮脂腺を持たない唇は、身体の中でも乾燥しやすい部位の一つです。マスクの着用中は、唇が潤っているように感じて、リップクリームなどを塗らない人がいるかもしれませんが、やはり頬と同じようにこまめな保湿ケアが必要です。マスクの着用前、外した後などは、リップクリームでケアするようにしましょう。

〇耳

耳の後ろに痛みや赤みが出た場合は、まずはマスク選びを見直しましょう。お伝えしたように、自分に合ったサイズのマスクを使用することが重要ですが、それでも耳の痛みが続く場合は、幅の広い平紐タイプなど、耳が痛くなりにくいように工夫されているマスクを使用することも対策の一つです。さらに、耳の後ろを保湿したり、耳切れ用の市販薬を試すのもよいでしょう。

マスクかぶれが良くならないときは

ここまで、基本の予防法をお伝えしてきましたが、こうした対策を試しても改善しない場合や、症状が長く続いている場合には、皮膚科で相談するようにしましょう。皮膚科では、たとえばステロイドの軟膏などを処方されることがありますから、医師の指示に従って、治療を受けましょう。
マスクを着けた生活はしばらく続くことが予想されます。早めに対処して、マスクかぶれを悪化させないように注意しましょう。

まとめ

  • いわゆる「マスクかぶれ」とは、マスクの着用が原因で起こる肌荒れやかぶれのこと
  • さまざまなアンケート調査から、マスクかぶれに悩む人が増えていることが予想できる
  • マスクかぶれの原因の一つが摩擦による刺激で、専門的には「刺激性接触皮膚炎」と呼ばれている
  • マスクで蒸れると、細菌が繁殖しやすくなってニキビなどの原因になる
  • マスクを外すと肌の水分まで蒸発するため、乾燥が進む原因になり、結果として肌トラブルが起きやすくなったり、唇が荒れやすくなる
  • マスクに対する素材が原因でアレルギー反応が出たり、洗濯時の洗剤が残っていることが原因でかぶれることがある
  • マスクかぶれの基本の予防法としては、自分に合ったマスクを選ぶことと、マスクを清潔に保つことが重要
  • 部位別の予防法として、頬や唇はこまめな保湿ケアをすること、耳は平紐など、痛みが出にくいマスクを選ぶことがおすすめ
  • 症状が改善しないときは皮膚科で相談を