その脂肪の塊、「脂肪腫」?専門家が教える粉瘤(アテローム)との違いと見分け方。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

皮膚の下にできた柔らかいしこりやふくらみ・・・「粉瘤(ふんりゅう:アテローム)?」と思う人もいるかもしれませんが、「脂肪腫」の可能性があります。見た目は「粉瘤」と似ていますが、原因も治療法も異なります。そこで、脂肪腫の特徴やできやすい部位、粉瘤との見分け方、そして治療の流れまでをわかりやすく解説します。気になるしこりがある方や受診を迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

脂肪腫とは?

脂肪腫は、脂肪の元になる細胞が増えてできる良性の腫瘍で、がんのような悪性腫瘍ではありません。皮下組織にできるしこりは、柔らかい脂肪の塊で、表面を触ると少し動く感触があります。脂肪腫のしこりには次のような特徴があります。

〇発生部位

脂肪腫は、皮下脂肪が多い部位であれば身体のどこにでもできます。よく見られるのは、背中、肩、首周り、上腕、太もも、腹部などです。

〇大きさ

数ミリ程度のものから数センチ程度のものまで様々で、中には10センチを超えるものもあります。自然に小さくなったり消えたりすることはほとんどなく、徐々に大きくなっていきます。ただし、大きくなるスピードが非常に遅いため、若いうちは自覚されにくく、40〜50代になってから気付くケースが少なくありません。

〇痛み

基本的には痛みや皮膚の色の変化はありませんが、しこりが大きくなると神経を圧迫したり、衣服と擦れて痛みが出ることもあります。また、筋肉や筋膜など深い部分にできるタイプ(深在性脂肪腫)では、筋肉の張りやしびれが生じることがあります。

脂肪腫の原因

脂肪腫ができる明確な原因はまだわかっていません。ただし、次のようないくつかの要因が関係していると考えられています。

〇体質・遺伝的要因

脂肪腫は、家族の中に同じようなしこりができる人がいる場合に発生しやすい傾向がみられます。このことから、体質や遺伝的な要素が関係していると考えられています。

〇外からの刺激の影響

衣服・下着が擦れる場所や、ベルトやリュックのストラップが当たる場所など、日常的に刺激を受けやすい部位に脂肪腫ができることがあります。直接的な原因とまでは言えないものの、外的な刺激が影響する可能性が指摘されています。

〇その他

肥満、糖尿病、高血圧、飲酒、喫煙などの生活習慣との関連が指摘されることもありますが、はっきりとしたことはまだ分かっていません。

脂肪腫と粉瘤の違いや見分け方

脂肪腫とよく似た見た目で混同されやすいのが、粉瘤です。粉瘤は良性のできもので、毛穴の奥に袋状の嚢腫(のうしゅ)ができ、そこに角質や皮脂が溜まっていくことで徐々に大きくなっていきます。しこりの中心に黒い点のような開口部が見えることが多く、そこから内容物が排出されると特有のにおいを感じることもあります。炎症を起こすと赤く腫れたり、痛みを伴ったりするのも特徴です。
脂肪腫も粉瘤も皮膚の下にしこりができるため、見た目だけでは区別がつかないこともありますが、次のような違いがあります。

〇しこりの発生場所

  • 脂肪腫:皮下組織内。
  • 粉瘤:毛穴の奥。

〇しこりの内容物

  • 脂肪腫:脂肪細胞の塊。
  • 粉瘤:老廃物や角質などの皮脂の塊。

〇主な原因

  • 脂肪腫:脂肪細胞の増殖。
  • 粉瘤:毛穴の詰まりや皮膚の損傷。

〇見た目・感触

  • 脂肪腫:柔らかく、丸いしこり。
  • 粉瘤:硬くコリコリしている。しこりの中心に黒い点があることが多く、炎症すると赤くなることもある。

〇痛み

  • 脂肪腫:基本的にはないが、大きくなると神経を圧迫して痛みを生じることもある。
  • 粉瘤:炎症が起きると痛み・腫れを伴う。

見た目は似ていますが、原因や治療法は異なります。自己判断で対処せずに、早めに受診しましょう。

「脂肪腫かな」と思ったときの受診の目安

脂肪腫は良性のため、急に悪化したり命に関わったりすることはほとんどありません。しかし、自然に治ることはないため、症状が軽いうちに治療しておいた方が負担を最小限に抑えることができます。また、脂肪腫以外の可能性もあるため、しこりに気づいた時点で受診することが望ましいでしょう。特に次のような変化がある場合は、早めに皮膚科や形成外科に相談しましょう。

  • しこりが大きくなっている、または短期間で急に成長している
  • 痛みや違和感、しびれなどがある
  • 表面に赤みや熱感がある
  • 硬さや形が以前と違う
  • 同じ場所に繰り返しできる

脂肪腫と似ていて注意したい病気に、「脂肪肉腫」という悪性腫瘍があります。珍しいがんではありますが、転移する可能性があり、早期発見・早期治療が重要です。
脂肪腫か粉瘤か、あるいは別の腫瘍かを正確に見極めるには、医師による診察と検査が必要です。超音波検査やMRI検査を行うことで、腫瘍の性質をより正確に見極めることができます。

脂肪腫の治療法について

脂肪腫の基本的な治療法は、外科的にしこりを取り除く切除手術です。皮膚を小さく切開し、内部の脂肪腫を丸ごと取り除きます。脂肪腫は「被膜(ひまく)」と呼ばれる薄い膜に包まれていて、被膜ごと丁寧に取り除くことで再発を防ぐことができます。
手術は局所麻酔で行うことが多く、日帰り手術で所要時間は30分程度です。脂肪腫の大きさや深さ、部位によっては、入院が必要になることもありますが、小さいものであれば数センチの切開で済み、縫合して1週間ほどで抜糸を行います。
手術後は患部を清潔に保ち、必要に応じてガーゼで圧迫固定を行います。軽い痛みや腫れが出ることがありますが、数日で落ち着くことがほとんどです。脂肪腫の摘出後に再び同じ場所にできることは少ないものの、体質的に複数の脂肪腫ができやすい人は、別の部位に新しく発生することがあります。繰り返し同じ部位にしこりができる場合や、急に大きくなる場合は、再度検査を受けて脂肪腫以外の病気が隠れていないかを確認することも重要です。

脂肪腫の切除手術は、見た目の改善にもつながる治療です。痛みがない場合でも、気になるしこりがある人は、まずは皮膚科で相談してみましょう。

まとめ

  • 脂肪腫は皮下脂肪の元になる細胞が増えてできる良性の腫瘍であり、基本的に痛みはない
  • 背中や肩、首、腕、太ももなどに発生しやすく、自然に消えることはない
  • 粉瘤は毛穴の詰まりが原因で生じ、脂肪腫とは性質が異なるものである
  • 脂肪腫は放置すると大きくなり、圧迫による痛みや外見上の変化を招くことがあるため早期の受診が望ましい
  • 治療は局所麻酔による切除手術が基本であり、被膜ごと摘出することで再発を防ぐことができる