医療コラム
鼻や顔のブツブツ「脂腺増殖症」とは?原因とやってはいけないスキンケアを専門家が解説。
鼻や頬、額などに小さなブツブツができると、「毛穴の詰まりかニキビだろう」と思って対処する方は多いかもしれません。しかし、「脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう)」という皮膚の変化が原因のことがあります。この場合、スキンケアを続けても改善することはなく、ケアの方法によっては別の肌トラブルを引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、脂腺増殖症の特徴や原因、やってはいけないスキンケアなどについて解説します。脂腺増殖症の治療法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
脂腺増殖症とは?鼻や顔にできるブツブツの正体
脂腺増殖症とは、皮脂を分泌する脂腺(皮脂腺)の一部が大きく目立つように変化する状態を指します。本来、脂腺は毛穴の奥に存在するものですが、加齢や体質などの影響で大きく目立つように変化し、皮膚が小さく盛り上がって見えてしまうことがあります。この状態を「脂腺増殖症」と呼んでいます。良性の変化であり、基本的に身体に悪い影響を及ぼすものではありませんが、その見た目からコンプレックスにつながることがあります。
脂腺増殖症によるブツブツの大きさは3~8mm程度で、色は黄色~白色です。ドーナツ状に中央が少しくぼんで見える点が特徴で、脂腺増殖症の一つの目安になります。鼻、頬、額など、皮脂の分泌が活発な部位にできやすい傾向があり、顔の目立つ場所にできることもコンプレックスにつながる一因です。
炎症を起こすことは少なく、赤みや痛み、痒みを伴わない場合が多いのも特徴です。自然に消えることは少なく、数年かけて少しずつ大きくなり、体質や皮膚の状態によっては数が増えることもあります。
脂腺増殖症は、その見た目から毛穴の詰まりやニキビと勘違いされやすく、自己判断で毛穴ケアや角質ケアを続けてしまい、皮膚に刺激を与えてしまうケースもあります。一般の方が見た目だけで判断することは難しいため、顔のブツブツが気になる場合は、まずは皮膚科で相談することが大切です。
脂腺増殖症の発症に関係する要因
脂腺増殖症は、皮脂を分泌する脂腺が大きくなることで生じる皮膚の変化ですが、その原因は完全には解明されていません。ただし、いくつかの要因が関係していると考えられています。
○加齢
加齢によって皮膚の代謝や組織の状態が変化し、脂腺が大きくなることがあります。
○皮脂分泌の多い体質
皮脂分泌が活発な人は脂腺が発達して大きくなりやすい傾向が見られます。脂腺増殖症は中高年に多い症状ですが、若い方でも皮脂の分泌量が多い場合は発症する可能性があります。
○ホルモンバランス
男性ホルモンには皮脂の分泌を促進する働きがあり、脂腺の変化にも関係する可能性があると考えられています。
○紫外線
紫外線は皮膚の老化を進める要因の一つで、長年の紫外線ダメージも脂腺の構造に影響を与えるのではないかと言われています。
○薬剤の影響
まれに、「シクロスポリン」などの免疫抑制薬の長期使用が、脂腺増殖症の発症に関与することがあります。服用後に気になる症状がある場合は自己判断で中止せず、主治医に相談することが大切です。
このように、脂腺増殖症は加齢や体質、環境など複数の要因が重なって発生すると考えられています。
脂腺増殖症と間違いやすい肌トラブル
脂腺増殖症には間違いやすい肌トラブルがいくつかあります。正しく対処できるように、それぞれの特徴を知っておきましょう。
○ニキビ
ニキビは、毛穴に皮脂や角質が詰まり炎症が起こることで発生します。赤みや腫れ、膿などを伴うことが多く、思春期から若い年代に多く見られます。
一方、脂腺増殖症は炎症を伴うことが少なく、赤く腫れることはあまりありません。また、ニキビは数日から数週間で変化することが多いのに対し、脂腺増殖症は数年かけて少しずつ大きくなっていきます。
○稗粒腫(はいりゅうしゅ)
稗粒腫は、皮膚表面近くに角質が溜まることで起こる肌トラブルです。目の周りなどにできやすく、白く硬い粒のように見えることが特徴です。
脂腺増殖症の中でも小さいものは稗粒腫と間違われることがありますが、発生する場所や中心がくぼんでいる点などが異なります。
○脂漏性角化症
脂漏性角化症は、加齢とともに現れやすい良性の皮膚腫瘍で、「老人性いぼ」と呼ばれることもあります。茶色や黒色の盛り上がりで、表面はざらついたような質感です。
一方で脂腺増殖症は黄色~白色をしています。比較的滑らかな盛り上がりとして見えることが多く、脂漏性角化症とは色や質感が異なります。
このような脂腺増殖症に似ている肌トラブルの多くは良性ですが、中には基底細胞癌など、早めに対処しておきたい病気が紛れていることもあります。顔のブツブツが気になった時は、自己判断でケアを続ける前に皮膚科で相談しましょう。
脂腺増殖症でやってはいけないスキンケア
脂腺増殖症はニキビと間違われやすく、自己流のケアでどうにかしようとする方が少なくありません。しかし、対処法を誤ると肌トラブルを引き起こす可能性もあり、注意が必要です。特に、次のようなケアは避けましょう。
NGケア(1)強く押し出す・潰す
鼻や顔のブツブツを見ると、ニキビや角栓のように押し出したくなるかもしれません。しかし、脂腺増殖症は皮膚の構造が変化して起こるもので、押し出しても内容物が出ることはありません。無理に潰そうとすると、皮膚を傷つけてしまい、炎症や色素沈着を引き起こす可能性があります。長期間残り続ける可能性もあるため、強く押し出したり潰したりするのは控えましょう。
NGケア(2)毛穴ケア・角質ケアを繰り返す
毛穴詰まりや角栓、ニキビだと思い込み、毛穴パックやスクラブ、ピーリングなどを繰り返してしまう方がいます。しかし、こうしたケアを過度に行うと、皮脂を必要以上に取り除いたり、皮膚表面に刺激を与えたりして、乾燥や赤み、ヒリつきなどの肌トラブルにつながることがあります。
脂腺増殖症は、角質や汚れが詰まってできるものではないため、除去するケアを続けても改善はあまり期待できません。それよりも、肌への刺激を減らし、皮膚の状態を安定させることが大切です。洗顔は1日2回程度を目安にし、ゴシゴシこすらず、泡で包み込むようにやさしく洗いましょう。
NGケア(3)紫外線対策や保湿ケアを避ける
ニキビや毛穴詰まりだと思い、「油分を増やしたくない」「ニキビを悪化させるのでは?」と、紫外線対策や保湿ケアを避ける方がいます。しかし、脂腺増殖症はニキビとは異なる皮膚の変化であり、ケアを減らしても改善しません。
また、そもそもニキビができやすい方にとっても、紫外線対策や保湿ケアはスキンケアの基本です。特に紫外線はニキビなどを悪化させる原因にもなるため、紫外線対策は継続しましょう。
このようなセルフケアを続けると、肌のブツブツが改善しないばかりか、バリア機能の低下を招いて乾燥や炎症といった新たな肌トラブルを引き起こしてしまう可能性があります。
肌の状態が不安定な時や顔にブツブツができて気になる時は、まずは刺激を与えないように気をつけながら、保湿ケアや紫外線対策を丁寧に行いましょう。それでも肌の状態が安定しない場合や肌トラブルが改善しない場合は、皮膚科に相談することが重要です。
脂腺増殖症の治療方法
脂腺増殖症の見た目が気になる場合や大きさ・数に変化が見られる場合は、皮膚科を受診しましょう。治療法はいくつかありますが、代表的な方法は次の2つです。
○炭酸ガスレーザー
炭酸ガスレーザーで皮膚の表面を蒸散させ、隆起した部分を削るように取り除きます。比較的短時間で行われることが多く、小さなものであれば1回で治療が終わります。ただし、病変が皮膚の深いところに及ぶ場合などは、凹み(瘢痕)のリスクを考えて、数回に分けて慎重に治療を行うこともあります。
○電気焼灼(高周波メスなど)
電気焼灼は、熱エネルギーを利用して病変部を処置する方法です。医療機関によっては、高周波メスなどの機器を用いて治療が行われることもあります。
いずれの方法でも、治療後に一時的な赤みやかさぶたがみられることがあるため、ダウンタイムや再発の可能性も含め、医師の説明を受けたうえで検討することが大切です。
その他、症状の出方や数によっては、「イソトレチノイン」などによる内服治療が検討されることもあります。副作用や再発の可能性もあるため、すべての方に行われる治療ではなく、医師が必要と考えた場合に選択されます。
鼻や額にできた小さなブツブツがなかなか治らない場合は、皮膚科に相談することが重要です。潰したり押し出そうとすると、痕が残ってしまうリスクもあるため、専門医のもとで早めに適切な治療を受けましょう。
まとめ
- 脂腺増殖症は、皮脂を分泌する脂腺の一部が大きく目立つようになることで起こる良性の皮膚変化
- 鼻や頬など皮脂分泌が多い部位に、小さな黄色~白色の隆起として現れることが多い
- ニキビや稗粒腫、脂漏性角化症などと見た目が似ているため、自己判断が難しい場合がある
- 押し出す、強い角質ケアを行うなどの刺激は、肌トラブルにつながる可能性がある
- 見た目が気になる場合は、炭酸ガスレーザーなどの治療が検討されることがある