肌バリアの仕組みと低下する原因。専門家が教えるバリア機能を高めるスキンケアの基本。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「しっかり保湿しているのに肌が乾燥する」「今まで使えていた化粧品がしみるようになった」「肌荒れを繰り返している」といった悩みはありませんか。
こうした肌トラブルの背景には、「肌バリア」の機能が関係していることがあります。この記事では、肌バリアの仕組みやその働きが低下する原因、そしてスキンケアのポイントについて解説します。

肌バリアとは?肌を守る重要な仕組み

肌バリアとは、外部刺激から肌を守りつつ、肌内部の水分が逃げるのを防ぐための仕組みのことです。その中心的な役割を果たしているのが、肌表面の「角質層(かくしつそう)」です。
私たちの肌は、表面から表皮、真皮、皮下組織という構造をしています。その中でも角質層は、表皮の最も外側に位置しており、厚さはわずか0.02mmほどしかありません。しかし、この薄い層が肌の健康を維持するうえで重要な役割を担っています。
角質層では、角質細胞が規則正しく並び、そのすき間を細胞間脂質が埋めています。細胞間脂質の主成分として知られるセラミドは、水分を保持する働きに関わっています。また、角質細胞の内部には天然保湿因子(NMF)と呼ばれる成分が存在し、肌の潤いを保つ役割を果たしています。
さらに、肌の表面を覆う「皮脂膜」にも、乾燥を防ぎ外部刺激から肌を守る働きがあります。こうした仕組みが正常に働くことで、肌は必要な水分を保ちながら、外部からの刺激を受けにくい状態を維持しています。

肌バリアの機能が低下すると起こる変化

肌バリアの機能が低下すると角質層から水分が逃げやすくなり、乾燥しやすい状態になります。洗顔後につっぱりやすい、化粧ノリが悪くなった、季節の変わり目に肌がゆらぎやすくなった、今まで使えていた化粧品がしみるようになった、などの不調が現れた場合は、肌バリアの機能が低下し始めている可能性があります。この段階でスキンケアや生活習慣を見直すと改善する場合もありますが、悪化すると、肌の乾燥が進み、赤みや痒み、ヒリヒリ感などの症状が出やすくなります。
さらに、外部からの刺激を受けやすくなり、花粉や汗、マスクの摩擦などにも敏感に反応する場合もあります。いわゆる「敏感肌」と呼ばれる状態で、肌荒れを繰り返してしまうことも少なくありません。このような状態にまでくると、普段のスキンケアだけで改善することが難しくなることもあるため、皮膚科に相談することを検討したほうが良いでしょう。

肌バリアの機能が低下する主な原因

肌バリアの機能が低下する要因は、一つではありません。次のような要因が関係しています。

○加齢による肌質の変化

年齢を重ねると、肌の潤いを保つセラミドなどの成分は徐々に減少していきます。また、皮脂の分泌量も変化するため、若い頃と同じスキンケアを続けていても乾燥しやすくなったと感じる方は少なくありません。
「以前は気にならなかったのに、最近肌がつっぱる」「季節の変わり目に肌荒れしやすくなった」という場合は、加齢による肌の変化が関係している可能性もあります。

○洗いすぎや摩擦などの誤ったスキンケア

肌バリアの機能低下に大きく関わる要因の一つが、日頃のスキンケアによる刺激です。たとえば、「毛穴汚れをしっかり落としたい」「皮脂を取り除きたい」と考えて、洗浄力の強い洗顔料やクレンジングを頻繁に使用している方がいるかもしれません。しかし、過度な洗浄は肌に必要な皮脂や水分まで取り除いてしまう場合があります。
また、1日に何度も洗顔をする、熱いお湯で洗うといった習慣も、角質層の潤いを保つ成分の減少につながります。さらに、タオルでゴシゴシ拭く、スクラブ洗顔やピーリングを頻繁に行う、コットンで強くこするといった摩擦も肌への負担になります。

○紫外線によるダメージ

紫外線はシミやしわの原因として知られていますが、肌バリアにも影響を与えることが分かっています。紫外線によって角質層の細胞や細胞間脂質にダメージが加わると、肌の潤いを保つ働きが低下しやすくなります。その結果、肌内部の水分が失われやすくなり、乾燥や肌荒れにつながる場合があります。また、強い紫外線による日焼けは炎症を引き起こし、赤みやヒリヒリ感などの原因にもなります。

○生活習慣の乱れやストレス

睡眠不足や偏った食事、過度なストレスなどは肌のターンオーバー(生まれ変わり)に影響を与えます。ターンオーバーが乱れると角質層の状態も不安定になり、結果として肌バリアの機能低下につながります。

肌バリアを守るために意識したいスキンケアの基本

肌バリアを守るために大切なのは、特別なケアを追加することよりも、肌への負担を減らしながら潤いを保つことです。以下は肌バリアを守るために取り入れたい、基本的なスキンケアのポイントです。

○洗顔やクレンジングはやさしく行う

まず意識したいのが、落としすぎないスキンケアです。洗顔やクレンジングは肌を清潔に保つために必要ですが、必要以上に皮脂や水分を取り除くと、肌バリアの機能を低下させる可能性があります。洗顔料は十分に泡立て、肌をこすらないようにやさしく洗うことが基本です。
また、毛穴や角質が気になる場合も、スクラブ洗顔やピーリングはやりすぎないように気をつけましょう。肌が敏感な時はこうした刺激の強いケアを控えることも重要です。

○保湿ケアで肌の潤いを保つ

洗顔後は保湿を行い、角質層の水分を補うことも大切です。化粧水や乳液、クリームなどを使用し、自分の肌質や季節に合わせた保湿ケアを続けましょう。
スキンケア製品を選ぶ際には、肌にもともと存在する潤い成分に着目した製品を取り入れることも一つの方法です。代表的なものとしては、セラミドやヒアルロン酸などがあります。セラミドは角質層の細胞間脂質の主成分であり、肌の水分保持に重要な役割を担っています。また、ヒアルロン酸には水分を抱え込む性質があり、肌の潤いを保つサポートが期待できます。
ただし、肌が敏感になっている時は必ずしも新しいものを取り入れる必要はありません。使い慣れているものや刺激性の低いアイテムで、まずは肌の状態を整えましょう。

○紫外線対策をしっかり行う

紫外線対策も肌バリアを守るうえで欠かせません。日焼け止めや帽子、日傘などを活用し、日常的に紫外線を防ぐ意識を持ちましょう。また、紫外線は夏だけでなく一年を通して降り注いでいるため、季節を問わず対策することも重要です。

その他、十分な睡眠やバランスの良い食事、適度な運動など、生活習慣を整えることも健やかな肌づくりにつながります。

スキンケアを見直しても肌荒れが改善しない場合は皮膚科へ相談を

肌バリアを守るためには、基本的なスキンケアを継続することが大切です。一方で、適切なケアを続けても乾燥や赤み、痒みなどの症状が改善しない場合もあります。そのような場合は、単に肌バリアの機能が低下しているわけではなく、皮膚疾患などが関係している可能性も考えられます。自己判断で様々な化粧品を試し続けることで、かえって肌への刺激が増えてしまうこともあるため、肌荒れを繰り返している場合や、症状が長引いている場合は、一度皮膚科へ相談してみることをおすすめします。

まとめ

  • 肌バリアとは、肌内部の水分が逃げるのを防ぎ、乾燥や外部刺激から肌を守る仕組み
  • 肌バリアの機能が低下すると乾燥や赤み、痒みなどの肌トラブルが起こりやすくなる
  • 洗いすぎや摩擦、保湿不足などの誤ったスキンケアは肌バリアの機能低下につながる
  • 紫外線や加齢、生活習慣の乱れも肌バリアに影響する
  • 肌への負担を減らしながら保湿や紫外線対策を行い、赤みや痒みなどの症状が続く場合は皮膚科へ相談することが大切