ステロイド外用薬は怖い?正しい使い方の基本とステロイド・抗ヒスタミン薬・抗菌薬の違い。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

ステロイド外用薬が処方された際に、「副作用が怖い」「なるべく使いたくない」と不安に感じる方もいるでしょう。ネットやSNSを中心に様々な情報が発信されていることもあり、ステロイド外用薬に対してネガティブなイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、ステロイド外用薬は正しく使うことで、副作用のリスクを抑えながら症状の改善を目指せる薬です。
この記事では、ステロイド外用薬の基本的な働きや正しい使い方、さらにステロイド・抗ヒスタミン薬・抗菌薬の違いについて解説します。

ステロイド外用薬とは?

ステロイド外用薬は、皮膚の炎症を抑えるために使用される塗り薬です。湿疹や皮膚炎などでは、皮膚に炎症が起こることで赤みや腫れ、痒みなどの症状が現れます。ステロイド外用薬はこうした炎症を抑え、症状の改善を目指すために使用されます。日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024(※)」でも、ステロイド外用薬は治療の基本となる薬剤の一つとして位置付けられています。
また、ステロイド外用薬には複数の種類があり、症状の程度や塗る部位、年齢などに応じて使い分けられています。たとえば、顔やまぶたは薬が吸収されやすいため比較的マイルドな薬が選ばれることが多く、手足のように皮膚が厚い部位ではより強い薬が使用されることがあります。
このように、一言で「ステロイド」と言っても、すべてが同じ薬というわけではなく、皮膚科では患部の状態などに応じて薬を選択しています。

※アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/ADGL2024.pdf

ステロイド外用薬はなぜ怖いと思われているのか

ステロイド外用薬が一般的に「怖い」と思われている背景には、次のようなことが関係していると考えられます。

○一般的に副作用が強いイメージがあるため

ステロイド外用薬の副作用としては、皮膚が薄くなることや(皮膚萎縮)、毛細血管が目立つ(毛細血管拡張)ことなどが知られています。また、免疫を抑える作用があるため、細菌やカビなどによる感染症が起こりやすくなることもあります。ただし、こうした副作用は強いステロイド外用薬を長期間使用した場合や、顔など皮膚が薄い部位に不適切に使用した場合に問題となることが多いとされています。
皮膚科では、こうしたリスクを踏まえて、症状の程度や部位、年齢などを考慮しながら薬の強さや使用期間を調整しており、過度に心配する必要はないと考えられています。

○効き目が強いことに不安を感じる方もいるため

ステロイド外用薬は炎症を抑える効果が高く、症状によっては比較的短期間で赤みや痒みが改善することがあります。効果が高い点はステロイド外用薬のメリットとも言えますが、一方で「効き目がある反面、身体に悪い影響があるのではないか」と不安を感じる方もいるようです。しかし、症状が早く改善すること自体が、必ずしも身体に強い負担がかかっていることを意味するわけではありません。

○「一度使用するとやめられなくなる」と思われているため

ステロイド外用薬について、「使い始めるとやめられなくなる」と聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし実際には、炎症が十分に治まる前に使用を中止したことで症状が再び現れてしまい、ステロイド外用薬を再開する、ということを繰り返しているケースが少なくありません。
こうしたケースでは、結果としてステロイド外用薬を使用する期間が長引いてしまうことがありますが、正しく使い続けることで症状の改善とともに薬をやめられる可能性は十分にあります。

ステロイド外用薬への強い不安から必要な量を塗れなかったり、自己判断で使用を中止したりするケースは国内外で報告されており、「ステロイドフォビア(ステロイド恐怖症)」と呼ばれることもあります。
もちろん副作用への注意は必要ですが、炎症が十分に抑えられないまま放置すると、痒みや湿疹が長引き、皮膚のバリア機能が低下してしまうこともあります。不安な点がある場合は自己判断せず、医師へ相談しながら治療を進めることが大切です。

ステロイド外用薬の正しい使い方の基本

ステロイド外用薬を正しく使うことで、副作用などのリスクを抑えながら、十分な治療効果を得ることができます。「なんとなく怖い」と恐れる前に、まずは正しい使い方を知ることが大切です。基本のポイントは次の通りです。

○適切な量を塗る

副作用が心配だからといって少量しか塗らないと、炎症を十分に抑えられず、症状が長引いたり再発しやすくなったりすることがあります。反対に、多く塗れば良いというわけでもありません。
皮膚科では、適量の目安として「FTU(Finger Tip Unit)」という考え方が用いられることがあります。1FTUとは、大人の人差し指の先から第一関節まで薬を出した量で、おおよそ大人の手のひら2枚分に塗る量の目安とされています。成人の場合、両手なら1FTU程度、両腕なら3FTU程度というように、患部の広さなどによって適切な使用量は異なります。そのため、医師や薬剤師に適量を確認し、それを守って使用することが大切です。

○指示された回数を守る

ステロイド外用薬は、一般的には1日1〜2回程度で使用されることが多いものの、症状や使用する薬によって異なります。「早く治したいから多めに塗る」「今日は症状が落ち着いているから塗らない」といった自己判断は、十分な効果が得られない原因になることがあります。使用回数についても、医師や薬剤師から説明された方法を守ることが重要です。

○自己判断で中止しない

症状が改善してきたからといって、急に使用を中止すると再発することがあるため、自己判断で中止しないようにしましょう。特に湿疹やアトピー性皮膚炎では、見た目上は改善していても皮膚の内部に炎症が残っていることがあり、その段階で使用をやめると、症状が再び現れることがあります。症状の状態によっては、塗る回数を徐々に減らしていくこともあるため、薬の使い方を変更したい場合は、自己判断はせず医師へ相談するようにしましょう。

なお、皮膚科では塗る部位や皮膚の状態なども考慮してステロイド外用薬の種類を選択しています。そのため、以前処方された薬が残っているからといって自己判断で別の部位に使用したり、家族に処方された薬を使ったりすることは避けましょう。

ステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬・抗菌薬の違い

皮膚の症状があると、「ステロイドは怖いから別の薬にしたい」と考える方もいるかもしれません。しかし、薬にはそれぞれ異なる役割があります。ここでは、皮膚科で処方される外用薬として一般的なステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬、抗菌薬の特徴や違いを解説します。

○ステロイド外用薬

ステロイド外用薬は、皮膚の炎症を抑える薬です。炎症が起こると、免疫細胞から様々な炎症物質が放出され、赤みや腫れ、痒みなどの症状が現れます。ステロイド外用薬は、こうした炎症反応を抑えることで症状の改善を目指します。
炎症が原因となっている皮膚疾患では、ステロイドの外用が治療の中心となることが多く、たとえば湿疹、接触皮膚炎(かぶれ)、アトピー性皮膚炎、手湿疹、虫刺されなどの治療に用いられています。

○抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン外用薬は、痒みの原因となるヒスタミンの働きを抑える薬です。虫刺されや軽い痒みを伴う皮膚疾患などで使用されることがあります。
ただし、痒みを和らげることを主な目的としており、ステロイド外用薬のように炎症そのものを強く抑える薬ではありません。

○抗菌薬

抗菌外用薬は、細菌による皮膚感染症に使用される薬です。とびひや毛包炎などで処方されることがあります。一方で、湿疹やアトピー性皮膚炎など、細菌感染が原因ではない皮膚疾患には効果は期待できません。

このように、ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬、抗菌薬にはそれぞれ異なる役割があります。どの薬が良い・悪いということではなく、皮膚科では症状や原因に合わせて適切に使い分けられています。

ステロイド外用薬で心配なことがある時は皮膚科で相談を

ステロイド外用薬をはじめとする皮膚科の薬は、医師が診察した上で、症状や原因に応じて処方されています。「副作用が心配だから」「症状が少し良くなったから」と自己判断で塗る量や回数を減らしたり、途中で使用を中止したりすると、症状が改善しないだけでなく、かえって悪化する可能性もあります。そうならないためにも、必ず医師の指示通りに使用するようにしましょう。もし薬について不安や疑問がある場合や、使用後に気になる症状が出た場合は、自己判断でやめるのではなく、まずは主治医に相談してみてください。
その他、市販のステロイド外用薬を使用しても症状が改善しない場合や、同じ皮膚症状を繰り返している場合なども、皮膚科へ相談することをおすすめします。

まとめ

  • ステロイド外用薬は、湿疹やアトピー性皮膚炎などで起こる皮膚の炎症を抑えるために使用される薬
  • 副作用が起こる可能性はあるものの、薬の強さや使用期間、使用部位などを考慮しながら処方されている
  • ステロイド外用薬は医師の指示に従い、適切な量・使用回数を守り、自己判断で中止しないことが大切
  • 抗ヒスタミン薬は痒みを抑える薬、抗菌薬は細菌感染を治療する薬であり、それぞれ役割が異なる
  • 皮膚科では症状や原因に応じて薬を使い分けているため、不安や疑問がある場合は自己判断せず相談することが重要