飲む日焼け止めは効果ある?副作用の有無や選び方まで紹介

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

日差しが強くなってくると気になるのが、紫外線による肌のダメージ。日焼け止めを塗っていても赤くなってしまった、シミが目立ってきた...などの悩みを持つ人も多いでしょう。そんななか「飲む日焼け止め」に注目が集まっています。どのような効果を期待できるのでしょうか。

紫外線によるダメージ

さまざまな肌トラブルを招く紫外線。「お肌の大敵」というイメージは定着していますが、なぜ避ける必要があるのか知っていますか?
紫外線は太陽光線の一種で、地上まで届くのは波長が長いUVAと、波長が短いUVBです。UVAは「生活紫外線」とも呼ばれ、肌の奥深くにある真皮にダメージを与え、シミやしわ・たるみといった肌老化を引き起こします。また、ガラスも通り抜けるため、室内や車に乗っている時も油断はできません。日常的に浴び続けているUVAによって、私たちの肌には日々そのダメージが蓄積されています。
一方、UVBは「レジャー紫外線」とも呼ばれ、長時間日差しを浴びたときに肌が赤くなる原因となります。このUVBが皮膚に届くと、焼けてヒリヒリするだけではなく、「メラニン色素」を生成して肌を守ろうとする仕組みが働きます。その際、肌の新陳代謝であるターンオーバー(肌の生まれ変わり)によりメラニン色素がうまく排出されないと、シミやそばかすとして残ってしまうのです。
肌にダメージを与える紫外線は、365日、くもりや雨の日も降り注いでいます。「天気が悪いから」「短時間の外出だから」と紫外線対策を怠るのはご法度。その油断が確実に肌老化を進めてしまいます。

塗る日焼け止めの効果とデメリット

さて、このような紫外線への対策として最もよく使われているのは、塗るタイプの日焼け止めでしょう。塗る日焼け止めは、正しく使えば紫外線対策としては有効です。ところが「正しく使えば」と条件がつくように、実際のところ、塗る日焼け止めの効果を充分に得られる使い方ができている人は、あまり多いとは言えません。
ほとんどの日焼け止めに表記されている「SPF」と「PA」の値。これは、紫外線をカットする効果の強さを表しています。「SPF」は「UVB」をカットする効果の目安で、2〜50(50を超える場合は50+)の数字で表わされます。数値が大きいほど、肌が赤くなるタイプの日焼けが起こるまでの時間を伸ばす効果を期待できます。また、「PA」は「UVA」をカットする効果の目安で、「+」から「++++」までの4段階で表わされます。+の数が多いほど、老化を招くUVAの悪影響から肌を守る効果が高くなります。
ここで知っておきたいのは、塗る日焼け止めに示されている数値どおりの効果を期待できるのは、「1平方センチメートルの皮膚に日焼け止めを2mg塗った時」が基準になっているということ。しかし、その量を使うとベタついたり白くなったりしやすいため、実際の使用量は基準よりもかなり少ない人がほとんどです。そうなると、塗る日焼け止めで紫外線対策をしたつもりが、実は意味をなしていないかもしれないのです。さらに、塗る日焼け止めは汗やハンカチの摩擦などでも少しずつ落ちてしまうため、こまめに塗り直すことも肝心です。
とは言うものの、塗る日焼け止めをとにかくたくさん塗ればいい、というわけではありません。効果が高ければ、その分肌への負担も大きくなりますし、クレンジングなどのスキンケアを丁寧に行わないと、逆にシワの原因となる危険も。
こうした事情から、塗る日焼け止めだけで万全な紫外線対策を施すのは、なかなか難しいことなのです。

注目を浴びている「飲む日焼け止め」

そこで昨今注目を集めているのが「飲む日焼け止め」です。紫外線による肌のダメージを身体の内側からケアするもので、もともとはサプリメントタイプの飲む日焼け止めとして、ヨーロッパで生まれました。
紫外線を浴びると、DNAが損傷し身体を老化させる原因となる「活性酸素」が発生します。この活性酸素は、日焼けをして肌が赤くなったり痛みがでたりすることにも関わっています。飲む日焼け止めを使うと、このような症状を抑えたり、紫外線による肌のダメージや老化を緩和したりすることができるのです。
ヨーロッパの人々は小麦色の肌を好み、積極的に日差しを浴びる傾向にありますが、日焼けによる痛みを抑える目的もあって飲む日焼け止めのニーズが高まりました。その成分が日光過敏症の治療薬として用いられるようになり、今では日本をはじめ、世界中で流通しています。

飲む日焼け止めのメリット

国内で流通している飲む日焼け止めの多くは、植物などから抽出された天然成分で作られていて、副作用の心配は少ないものがほとんどです。また、製品ごとの違いはあるものの、ビタミンCなどさまざまな成分が配合されており、上手に活用すれば紫外線対策を含む美肌作りの助けとなります。
塗るタイプの日焼け止めと比較すると、飲む日焼け止めの大きなメリットは、塗り忘れや塗りムラの心配がない点です。また、塗るタイプは、汗や手洗いで落ちてしまったり、効果をキープするために塗り直しをしたり、という手間がかかりますが、飲む日焼け止めは不要です。
飲む日焼け止めの効果が持続する時間は製品ごとに異なり、1粒で4〜6時間のものから24時間持続するものまで幅があります。また、より強い紫外線を浴びるときに服用量を増やせるタイプ、うっかり日焼けをした後に飲んでも効果が期待できるタイプなど、製品によって特徴があり、ライフスタイルに応じて選べる点も、飲む日焼け止めのメリットといえるでしょう。

知っておきたい注意点

ただし、サプリメントタイプの飲む日焼け止めを服用していれば、紫外線対策は完璧!というわけではありません。飲む日焼け止めは、活性酸素の発生を抑え、紫外線によるダメージから身体の内側を守りますが、直接光を浴びる皮膚にもダメージは蓄積しています。ですから、より万全な紫外線対策を目指すのであれば、塗る日焼け止めと飲む日焼け止めの併用をおすすめします。
また、副作用の心配が少ないとはいえ、アレルギー反応がでる可能性はあります。さまざまな食物でアレルギー反応を示す人がいますので、初めて服用するときは身体に異常が出ていないかとくに注意してください。
なお、妊娠・授乳中の人や、持病があって薬を飲んでいる人は、念のために控えるか、かかりつけ医に相談する方が安心です。

飲む日焼け止めを購入するには

紫外線対策に飲む日焼け止めを取り入れたい場合は、美容皮膚科やクリニックで処方してもらうか、最近では薬局やインターネットでも購入可能です。費用は、成分の含有量により異なりますので、しっかり確認してから購入しましょう。

かつてよりも紫外線が増加傾向にある今、その悪影響からお肌を守るための有効な手段については、最新の情報を入手しておきたいものですね。

まとめ

  • 肌にダメージを与える紫外線にはUVAとUVBがあり、シミ・しわ・たるみなどのトラブルを招く
  • 紫外線は365日、くもりや雨の日も降り注いでいて、肌のダメージは蓄積している
  • 塗る日焼け止めは、正しく使わなければ本当の効果を期待できない
  • 汗や摩擦でも落ちやすい日焼け止めは、こまめな塗り直しが必要で肌の負担にもなる
  • ヨーロッパで生まれた飲む日焼け止めは、活性酸素の発生を抑え、紫外線による悪影響から肌を守る
  • 飲む日焼け止めは副作用の心配が少なく、塗り直しの手間がないといったメリットがある
  • 飲む日焼け止めの効果が持続する時間は製品によってさまざま。ライフスタイルに合うものを選択できる
  • 万全な紫外線対策には、塗るタイプと飲むタイプ両方の日焼け止めの併用がおすすめ
  • 飲む日焼け止めは美容皮膚科などで処方してもらうか、薬局やインターネットでも購入できる