医療脱毛と美容脱毛の違いは?

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)

薄着の季節、そろそろ脱毛したい...という気持ちになる人も多いのではないでしょうか。ひと口に脱毛といっても「医療脱毛」「美容脱毛」などの方法があります。それぞれの違いについて、また、メリットやデメリットもみていきましょう。

永久脱毛とは

まずはよく耳にする「永久脱毛」について整理しましょう。コトバだけを聞くと、脱毛したあと永遠に毛が生えてこない、というイメージをお持ちかもしれませんが、そういう意味ではありません。
実は日本では、永久脱毛について明確な定義は定められていません。
参考までに米国電気脱毛協会では、「永久脱毛」は「最終脱毛から1か月後の毛の再生率が20%以下である脱毛法であること」と定義されています。
医療機関で施されるレーザー脱毛は、レーザーの光で毛乳頭(もうにゅうとう:毛球の内側に凹んだ部分の組織)を破壊する施術です。これは永久脱毛に一番近いと言えますが、まだ歴史が浅いため、現状「永久脱毛」として認められていません。レーザー脱毛は、1983年にアメリカでその基礎となる理論が発表されました。日本では1997年に施術が開始されていますが、認可が下りたのは1999年のことでリスクもまだはっきり分かっていないようです。
一方、エステサロンで行う脱毛は、照射を繰り返すことによって、自分でムダ毛を処理しなくてもよい程度の「抑毛」や「減毛」が可能となっています。

医療脱毛の特徴

美容外科や皮膚科のクリニックで行っている医療脱毛は、レーザーを用いた脱毛法です。毛母細胞をレーザーで破壊する行為は「医療行為」にあたりますから、この方法は医療機関でしか扱えません。
毛が生えかわるサイクルを「毛周期」といい、成長期・退行期・休止期という3段階に分かれています。レーザー脱毛は、成長期の初期にある毛に対して作用します。ですから、1回目のレーザー脱毛のときに、退行期や休止期に入っている毛にはアプローチができません。つまり、すべての毛が同じ成長過程にあるわけではなく、毛周期のどこかに散在しているということですね。そのため、1~2ヶ月ほど間を空けて、2回目の脱毛をします。これを繰り返すことで毛が生えてこない状態になります。
実際には施術から2~3週間後に毛が抜け落ちてきます。一般的に3回くらいで脱毛できた状態になりますが、個人差はあるものの、完全に脱毛するには5~7回のレーザー照射が推奨されています。なお、強いレーザーを照射して細胞を破壊しますので、毛が再生されることはほとんどなく、いわゆる「永久脱毛」の効果があるとされています。

医療脱毛のメリット・デメリット

レーザー機器には「ダイオードレーザー」「アレキサンドライトレーザー」「YAGレーザー」などがあります。肌質や毛質によってレーザーを替えて脱毛を行います。いずれにしても1回の施術による脱毛効果は高く、短期間で脱毛ができますが、やや強い痛みがともないます。また、施術後に毛穴が赤くなったり、かさぶたができたりする場合もあります。
クリニックで施術を受ける一番のメリットは、医師や看護師が対応するため、一人ひとりの肌の状態を把握して、その人にあったレーザー照射を行うことができること、そして、万が一肌トラブルが起こった際には、薬の処方など迅速に対応してもらえることでしょう。
個人差がありますが、美容脱毛に比べて、1回あたりの料金は高いですが、脱毛終了までの回数は少なくて済みます。
ただし、レーザー脱毛を検討する際は次のような相性に留意が必要です。

(レーザー脱毛に向いている人)

  • 日焼けしていない
  • 毛が黒く太い

(レーザー脱毛に向かない人)

  • 肌の色が黒い
  • 日焼けしている
  • 毛が金色・白色など色素が薄い
  • 毛が細い
  • 毛抜き処理をしている

美容脱毛の特徴

「美容脱毛」はエステサロンで行う脱毛法です。一時的に毛が生えてくるのを抑える施術で、「フラッシュ脱毛(光脱毛)」とも呼ばれます。美容脱毛は光などを当てて発毛組織にダメージを与えますが、細胞を破壊するほどのパワーには至りません。つまり、医療で行うレーザー脱毛よりも威力が弱く、毛根に働きかける力も劣りますので、同じ場所に毛が再生する可能性があります。そのため、何回かの施術を経て毛の再生を抑えていくことになります。

美容脱毛のメリット・デメリット

痛みが少なくて、安価な料金で脱毛できる点はメリットでしょう。ただし、前述のとおり回数を重ねないとまた毛が生えてきてしまいます。ですから、脱毛というよりは「抑毛・減毛」とも呼ばれます。しばらくはムダ毛が生えてきませんのですべすべ肌ですが、やがて再びムダ毛が生えてきます。ムダ毛は細く弱いもので、この再生された毛に照射を繰り返していくことになります。途中で施術をやめると脱毛になりません。
また、個人差がありますが、医療脱毛に比べて、脱毛終了までの回数は多くなります。なお、医療行為ではないため肌への負担は少ないです。

脱毛中や脱毛後に自宅で行うケア

肌の水分量が上がるとレーザーや光が通りやすく、熱が毛にしっかりと伝わりやすくなります。このように、保湿は脱毛効果を高めることができますので、丁寧なスキンケアを心がけてください。その際、次のようなポイントに注意しましょう。

日焼けしない

脱毛を行っている期間は日焼けをしないように気をつけてください。日焼けした肌や乾燥肌になると痛みを強く感じたり、やけどのリスクが高まります。外出時は長袖を着て日傘を差すなど、日焼け対策をしっかり行いましょう。

温めすぎない

肌を温めると血行がよくなり、ほてりや炎症が長引く可能性があります。長湯、激しい運動、飲酒などの過度なものはできるだけ控えましょう。

毛は抜かない

毛を抜いてしまうと、脱毛効果が低下します。脱毛前はカミソリで剃毛し、脱毛後は自然に抜けるまで焦らずに待ちましょう。

消臭剤・制汗剤などは使用しない

これらの使用によって、脱毛効果が低下します。施術当日は施術部分への使用は避けましょう。

医療脱毛と脱毛サロンの比較

ここまでお伝えした医療脱毛と美容脱毛の比較について、次のように整理してみました。

  • 脱毛法
    医療脱毛:レーザー脱毛
    美容脱毛:フラッシュ脱毛
  • 永久脱毛の効果が出る回数、期間
    医療脱毛:5~6回 1年以内
    美容脱毛:全身だと12~18回 2年~5年ほど
  • 痛み
    医療脱毛:やや強め。
    美容脱毛:痛みは弱い

どちらを選ぶかは、最終的にはご自身が判断することです。毛の濃さや太さといった毛の特徴、脱毛したい場所などの要望、加えて金銭的な条件などを含め検討してください。そして、カウンセリングで自分の希望をしっかりと伝え、分からないことは質問をするなど十分理解をしたうえで決めてくださいね。

まとめ

  • 日本では「永久脱毛」の定義はまだない
  • 医療脱毛がいわゆる「永久脱毛」にいちばん近いもの
  • レーザー脱毛は毛母細胞を破壊するので医療行為となる
  • 医療脱毛は美容脱毛と比較すると痛みが強い
  • クリニックでは、肌に何かトラブルがあるとすぐ対処してくれる
  • レーザー脱毛には向き不向きがある
  • 美容脱毛は、光(フラッシュ)脱毛と呼ばれる方法
  • フラッシュ脱毛は、脱毛後も毛が再生する可能性があるので回数が多い
  • 脱毛を行っている間は、日焼け予防と保湿に注意する
  • 永久脱毛の効果が出るまでに、医療脱毛は1年くらい、美容脱毛だと2~5年くらいかかる場合がある
  • 脱毛したい場所、毛の質、予算などから選択する
  • カウンセリングを受けてから施術を受ける