もしかしてまつ毛貧毛症? まつげが「少ない」「短い」「細い」のお悩みに

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

まつげが「少ない」「短い」「細い」といったお悩みを抱えていませんか?もしかするとそれは「まつ毛貧毛症」かもしれません。マスカラやビューラーによるいつものメイクが、まつ毛の負担になっている可能性も考えられます。まつ毛に関するお悩みの解消法をお伝えしていきましょう。

まつ毛貧毛症とは?

目を大きく印象的に見せるため、メイクのポイントとなるまつ毛。ところで、まつ毛の役割を意識したことはありますか?実はまつ毛は、目にホコリや異物が入るのを防ぐ、日差しや汗から目を守る、乾燥を防ぐ...といった大事な役割を担っています。
しかし、そんなまつ毛が少なくなって不足したり、短く不十分な状態になったりするのが「まつ毛貧毛症」です。医学的には「睫毛(しょうもう)貧毛症」とも呼ばれるこの症状、そうとは気づかず悩んでいる人は少なくありません。

まつ毛貧毛症の原因

まず考えられる原因は、まつ毛のお手入れによるダメージです。アイメイクに力を入れるあまり、ついまつ毛をビューラーでひっぱったり、マスカラを何度も重ね塗りしたりすることが習慣になっていませんか?また、ホットビューラーやつけまつ毛の使用、頻繁なまつ毛エクステ、クレンジングの際にまつ毛をゴシゴシこするなども、まつ毛にダメージを与えます。
さらに、お肌や髪の老化と同じく、まつ毛も年齢とともに細くなったり、量が減ったりしていきます。それ以外にも、アトピー性皮膚炎や膠原病(こうげんびょう)といった病気、抗がん剤など薬の副作用が関わって、まつ毛が抜けてしまうこともあります。
ひと言でまつ毛貧毛症といっても、その原因や程度はさまざま。放っておくと、症状がさらに悪化する可能性も否めません。

まつ毛はどんなふうに生え変わるの?

毛が生え変わる周期のことを「毛周期」と言います。毛が活発に成長する「成長期」、その細胞分裂が止まり成長のスピートが鈍くなっていく「退行期」、成長が完全に止まって抜ける準備をする「休止期」という3つに分かれています。毛はこのサイクルを繰り返しながら成長し、生え変わっているのです。
毛周期は身体の部分によって異なります。生え変わるまでの期間が一番長いのは頭髪で、成長して抜け落ちるまでに4~6年ほどかかります。一方、まつ毛の周期はおよそ5~12か月と考えられています。まつ毛は周期の半分以上を休止期が占めると言われており、ダメージを受けて切れたり減ったりしてしまうと、すぐに伸びてもとに戻ることはなかなかありません。
さまざまな原因によって毛周期が乱れると、まつ毛の不足や細く短くなるなど、まつ毛貧毛症になる可能性があります。

まつ毛貧毛症の治療

医療機関に相談をして、治療を受けることができます。自分のまつ毛をチェックしてみて、少ない、短い、細い、不足している...と感じたら、皮膚科や美容外科など専門の病院を受診してみましょう。

ビマトプロストが効果的

「ビマトプロスト」は、まつ毛貧毛症を治療する薬として2014年に承認されました。臨床試験でも効果が認められ、まつ毛の成長に有効な育毛剤として注目されています。目薬のような薬を専用のブラシにつけて、一日1回就寝前にまつ毛の生え際に塗ります。

なお、まつ毛貧毛症は自由診療での治療ですので、保険が適用されません。ですから、費用が高額になる可能性も考えられます。治療内容や費用については、病院やクリニックによる違いもありますので、来院前にリサーチをしておくと安心です。

まつ毛の悩みを改善するため、生活を見直そう

まつ毛の悩みを改善するためには、医療機関への相談とあわせて、普段の生活やまつ毛ケアの見直しが大切です。

さらに、何気なく行っているまつ毛のお手入れを見直してみましょう。ビューラーのゴムは劣化していませんか?日々の繰り返しがダメージにつながりますから、メイク用品は定期的にメンテナンスをしてください。メイクは力を入れすぎないこと、また、クレンジングは丁寧に優しく落とすことも重要なポイントです。つけまつ毛やまつ毛エクステ、まつ毛パーマなどが欠かせないという人も、気になる症状が見られるときは頻度を減らして、ときにはお休みの期間を設けるようにしましょう。

まつ毛の悩みが解消されると、気持ちも前向きになって明るく過ごせるようになりますよ。自分のまつ毛の状態をきちんとチェックして、健やかなまつ毛を育てましょう。

まとめ

  • まつ毛が短い、少ない、細いという症状は「まつ毛貧毛症」の可能性がある
  • まつ毛貧毛症の原因には、間違ったお手入れ方法によるダメージ、加齢、病気、薬の副作用などが考えられる
  • まつ毛の毛周期は5~12か月で、その約半分は休止期である
  • まつ毛がダメージを受けると、生え変わるまでに時間がかかる
  • 原因に病気や薬が関わっている場合は、その治療や処方の見直しをする
  • まつ毛貧毛症を薬によって治療する場合は「ビマトプロスト」が有効とされている
  • まつ毛の悩み改善には、生活習慣やまつ毛ケアの見直しが大切である