必要な成分を注射から。にんにく注射、ビタミン注射、プラセンタ注射...美容注射の効果について

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)

肌荒れがひどかったり血行が悪かったりするとき、あなたはどのように対処されていますか?サプリメントやドリンク剤を飲む...といった方法がポピュラーかもしれませんが、専門のクリニックなどで注射や点滴を受ける方法もあります。今回は美容注射について詳しくお伝えいたします。

美容注射とは

「美容注射」は、身体が必要としているビタミンやミネラル、あるいは抗酸化物質などを素早く補い、体内から健康を獲得するよう働きます。目的によっていろいろな種類がありますが、不足している栄養素を注射や点滴で血液中に注入することで細胞や組織に直接活力を与え、身体の内部から美容をサポートする点はどれも共通しています。また、口から栄養剤を飲むよりも、高濃度で速やかに全身に働きかけるという特徴も備えています。胃腸を経由すると、胃酸や消化酵素によって分解され、効果がなくなってしまう栄養素もありますから、注射や点滴によって必要量を効果的に補給できることが最大のメリットです。

それでは、美容注射には具体的にどのような種類があるでしょうか。主なものをいくつかご紹介します。

にんにく注射

注射したときににんにくのようなニオイがすることから「にんにく注射」と呼ばれます。ビタミンB1やその誘導体フルスルチアミンを主成分としており、加えてビタミンB2やグリコーゲンなども含まれています。ちなみに、にんにくのようなニオイはすぐなくなりますし、効果は同じでニオイのないタイプもありますので、クリニックに確認してください。
にんにく注射は疲労回復に即効性を持ち、エネルギー代謝を活発にして神経や筋肉の働きを改善します。また、眼精疲労や肉体的疲労の回復効果以外にも、肌荒れ、だるさ、筋肉痛、腰痛などの改善にも効果があるとされています。
主な成分の働きについて、それぞれ見ていきましょう。

総合ビタミン注射

ビタミンには三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂肪)の代謝を助ける働きがあって、身体にとって必要不可欠な栄養素です。総合ビタミン注射はビタミンB群、ビタミンCなどを含んでいて、疲労、美白効果、肌荒れ、口内炎などにも効果があります。
メニューにより、配合成分が異なりますので、確認しましょう。
主なビタミンの特徴は次のとおりです。

ビタミンB1

水溶性のビタミンです。かつて日本ではビタミンB1が欠乏することで脚気(かっけ)と呼ばれる病気が起こりました。心不全と末梢神経が侵されることで足がしびれたり、むくんだりする病気でした。ビタミンB1には、糖質からエネルギーを作り、皮膚や粘膜の健康維持を助け、神経や筋肉組織を活性化させる、といった働きがあります。

ビタミンB2

肥満や生活習慣病予防に効果があります。脂肪や糖質の代謝を促進させます。また、肌や髪、爪の健康にも必要な成分です。

ビタミンB6

水溶性のビタミンで、腸内細菌の働きによって体内でも作られています。食品中のたんぱく質からエネルギーを作ったり、筋肉や血液などを作ったりするときに働きます。そのため、たんぱく質を多く摂ればビタミンB6も相応の量が必要になります。

ビタミンB12

ヘモグロビン生成を助ける働きをします。脳からの指令に必要な神経を正常に保ちます。牡蠣などの魚介類、レバーなどの動物性食品に多く含まれています。

ビタミンC

人体で生成できない成分なので、食事などによって補給しなければなりません。また、ストレス、飲酒、喫煙などはビタミンCを消費します。これらを日々の生活習慣にしていると不足する可能性があり、要注意です。
美白効果、コラーゲンの生成を促進することで、肌のハリ、シワ、たるみの予防、肌荒れ、口内炎、皮膚炎などに効果があります。

ビタミンH(ビオチン)

ビタミンB群に属する水溶性のビタミンで、通称「皮膚のビタミン」と呼ばれています。
皮膚の炎症の防止や、皮膚機能を高めて美肌にするなど、肌荒れ、ニキビ、湿疹に効果があるとされます。

プラセンタ注射

プラセンタとは胎盤のことで、子宮の中で胎児が成長していくときに必要とする栄養や、成長に関わる因子を全て供給しています。ですから、プラセンタには生体の維持に必要な多くの栄養素、さまざまな酵素、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、サイトカインや細胞増殖因子などが含まれています。
もともとプラセンタは、医薬品として肝臓疾患や更年期障害などの治療に使われてきました。また、プラセンタには血流をよくする働きがあり、これを利用して美容や肝臓機能を高める目的で使用されるようにもなりました。
プラセンタ注射は、皮下注射や筋肉注射で行うことがほとんどです。
人の胎盤を使用しますので、感染の危険性がゼロとは言えないことから、注射後は厚生労働省により輸血を禁止されています。国内・海外ともに感染した例はなく、リスクは低いと考えられていますが、献血・輸血をする方や不安な方は注射を控えましょう。
効果としては、メラニン色素の生成を抑制する美白効果、アンチエイジング効果、シワやくすみの改善、肌にしっとり感を与える保湿効果、たるみ・乾燥など肌トラブルの改善、養毛作用、白髪の軽減、新陳代謝を高める、細胞の若返り、肩こりや疲労回復、眼精疲労の軽減などが挙げられます。

プラセンタ入り化粧品との違い

化粧品やサプリメントの成分に含まれるプラセンタと、注射で使用されるプラセンタでは成分が異なります。
化粧品などに配合されているのは「豚プラセンタ」など動物性が多く、医療機関で使用されるプラセンタ注射は「人由来のプラセンタ」で、こちらのほうが効果は高いとされています。

美白注射

ビタミンC、グルタチオン、トラネキサム酸など、美白効果のある美容成分を注射や点滴によって身体に取り入れる方法です。
メニューにより配合成分が異なりますので、確認しましょう。

グルタチオン

グルタチオンは抗酸化物質の一つです。細胞に取り込まれてしまった薬剤や異物を細胞外へ排出する、活性酸素を除去するなどの働きがあります。そうした解毒作用から、薬物中毒、肝機能などの改善に使われています。また、湿疹や皮膚炎、肝斑、炎症後の色素沈着の治療などにも使われます。

トラネキサム酸

人工的に合成されたアミノ酸の一種で、抗プラスミン作用をもっています。プラスミンとは、炎症を引き起こす生体内の酵素を指します。
トラネキサム酸は口内炎や喉の腫れの治療薬、歯磨き粉にも使われています。メラノサイト活性化因子でもあるプラスミンをブロックするので、シミの一種である肝斑の原因となるメラニンの発生を抑えて、肝斑を薄くする作用があります。

ただし、美白注射の適用については肌の色を白くするという目的だけではなく、自分の肌や身体の状態を医師に話し、取り入れる成分についてよく相談をしてから決めるとよいでしょう。

 
身体の調子を整えたいけれども「時間がない」「今すぐ何とかしたい」というときには、医院やクリニックで美容注射や点滴を受ける方法を検討してみてもよいと思います。
メニューにより配合成分や費用が異なりますので、相談されるとよいでしょう。

まとめ

  • 美容注射や点滴は血液中に注入するため、速やかに全身に働きかけ、必要な成分を効果的に補給できる
  • にんにく注射は、疲労回復、筋肉痛、腰痛に効果がある
  • ビタミン注射は、美白効果、肌荒れ、口内炎などに効果がある
  • プラセンタ注射は、アンチエイジング効果、肌の保湿、たるみや乾燥の改善、養毛、白髪の軽減、疲労回復などに効果がある
  • 美白注射には美白効果があり、肝斑にも効果的