水虫ってうつるの?原因と予防策を知って適切に対処しよう

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

足の裏がかゆくて皮がむけている...「もしかして水虫!?」と心配になったことはありませんか?水虫は放っておくと広がったり、他の人にうつしたりしてしまう病気です。そこで今回は、水虫の原因と正しい予防策をご説明します。

そもそも水虫ってなに?

男性に多いイメージの水虫。ところが、最近は女性でも水虫になる人が増えており、日本人の5人に1人はかかると言われるほど、誰もがなり得る身近な皮膚病です。
一般的に「水虫」と呼ばれるこの病気は、医学的には「白癬(はくせん)」といいます。この病気は、皮膚がカビの仲間である白癬菌(皮膚糸状菌)に感染して生じるものです。白癬菌には30種類以上もの菌種があり、もともとは土の中にいる菌でした。しかし、進化した一部が皮膚の角質層にある「ケラチン」というタンパク質を栄養分として、繁殖するようになったのです。
白癬菌は高温多湿を好みますので、靴を履いて蒸れやすい足は、もっとも水虫ができやすい環境です。同時に皮膚の角質だけではなく、爪や髪の毛なども水虫のえさになります。つまり、手足の爪や手のひら、顔や頭など、身体中の至るところに症状が出る可能性があるということです。

水虫はどうやってうつるの?

水虫が周りの人にうつる病気であることはよく知られていますが、その理由について考えてみましょう。
白癬菌は、水虫にかかっている人の皮膚だけではなく、実は皮膚から剥がれ落ちた角質の中でも生きています。そのため、家族が水虫にかかっていると、同じスリッパを履いたりバスマットを共用したりすることで、菌が付着して感染してしまうのです。また、多くの人が利用するプールや温泉の脱衣所なども、水虫に感染しやすい場所です。
ただし、菌が付着したからといって、すぐに水虫になるというわけではありません。菌が付着した状態が長く続き、さらに、長時間同じ靴を履く、汗をたくさんかくなどして、高温多湿の状態になったときに発症するのです。やがて菌が増殖しはじめると、さまざまな症状が出てきます。
白癬菌に触れても、感染するまでには最短でも24時間はかかると考えられています。ですから、毎日のお風呂で、足の裏やとくに汚れが残りやすい指などを丁寧に洗うことが、感染予防につながります。ただし、皮膚に傷があると菌が入り込みやすく、約12時間で感染してしまいます。足の裏など、日ごろから自分の皮膚の状態をチェックしておくとよいでしょう。

知っておきたい、水虫の種類と症状

水虫にならないことがベストですが、うつってしまった場合は、速やかな対処が肝心です。しかし、水虫になっていることになかなか気がつかず、悪化してしまうケースも多々あります。「水虫はかゆい」という印象が強いと思いますが、実は初期の段階ではほとんどの場合、これといった症状はありません。さらに約半数の人は、その後もかゆみがないといわれています。早めに対処するためには、水虫ができる部位ごとの症状や特徴を知っておくことが大切です。

〇 足にできる水虫:足白癬

足の中でもとくに風通しの悪い指の間は、水虫ができやすいところです。「趾間型(しかんがた)」と呼ばれ、指の間の皮が白くふやけてめくれたり、ジュクジュクしたりします。また、かゆみが強いのは「小水疱型(しょうすいほうがた)」です。かかとや足の裏などに小さな水疱ができるタイプで、水泡がいくつも集まって破れたり赤くなったりすることもあります。このほか「角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)」は、足の裏やかかとが厚く、かたくなって乾燥し、ひび割れなどの症状がでます。

〇 爪にできる水虫:爪白癬

代表的な症状は、爪が白~黄色に濁り、厚みがでることです。また、爪の下がボロボロになる、表面に線が入る、といった状態になることもあります。足白癬が爪にうつって症状がでるケースがほとんどで、治りづらい厄介な水虫です。

〇 手にできる水虫:手白癬

洗う機会の多い手に水虫が発症する割合は低く、全体の1割程度と考えられています。足にできる水虫と同じように、さまざまな症状が出ることがあります。

〇 身体や腕、脚などにできる水虫:体部白癬(ぜにたむし)

体幹や顔、首、腕、脚など、身体中のいたるところに小さく盛り上がった赤い発疹ができ、広がっていくタイプの水虫です。強いかゆみを伴う症例も多く、動物から感染するケースもあります。

ほかにも、頭に症状がでる「頭部白癬(しらくも)」や、お尻に症状がでる「臀部白癬」、太ももの付け根に感染する「股部白癬(いんきんたむし)」など、白癬菌に感染する部位や症状は多様です。さらに、水虫と思って治療していたところ、実は「接触性皮膚炎」によるかぶれの症状だったり、「皮膚カンジダ症」という別の菌が原因だったりする可能性もあります。
水虫のような症状が出ているのに原因がはっきりしない場合は、まずは皮膚科を受診し、適切な診断を受けることが大切です。

水虫を治すためには

水虫になってしまったら、軽度であれば薬局で購入できる市販の塗り薬などで改善することもあります。しかし、なかなか症状が治まらない場合は、市販の塗り薬にかぶれを起こしている可能性もあり、皮膚科で白癬菌に有効な薬を処方してもらうのが一番です。水虫なのか他の湿疹なのか判断がつかない、身体のあちこちに症状が広がっている、などのケースでは、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
最も多い足や手、体幹などの水虫に対しては、ほとんどのケースで外用の抗真菌薬が処方されます。塗るタイプの薬は、入浴後など皮膚が清潔で角質がやわらかくなっている状態のときに使いましょう。抗真菌薬の塗布により、1~2週間で症状が大きく改善したようにみえますが、完治するには2ヶ月程度は治療を続けてください。自覚症状がなくなっても、白癬菌は生き残っている可能性があるからです。再発を防ぐためにも、医師の許可がでるまでは自己判断で中断しないようにしましょう。
また、爪白癬や頭部白癬は治りづらいため、多くの場合飲み薬を併用します。爪白癬で爪が変形してしまっているときには、爪を切って白癬菌による感染部分を取り除く処置が行われることもあります。いずれにしても、根気よく治療を続けることが改善への近道です。

水虫に悩まされないためには、予防が第一!

一度感染してしまうと継続的な治療が必要になる水虫。そんな水虫に悩まされないためには、何よりも予防が大切です。

(1)皮膚を清潔に保つ
お伝えしたとおり、水虫が感染するまでには最短で24時間かかります。入浴時には身体を丁寧に洗い、皮膚の清潔を保ちましょう。とくに、さまざまな人が使うスリッパなどに素足で触れた後や、プールに行った後などは意識してよく洗い流しましょう。
万一家族に水虫の人がいる場合は、足拭きマットやバスタオル、スリッパなどの共有は避け、こまめに洗濯をして、日光が当たるように干すことが大切です。

(2)菌が繁殖しやすい環境を作らない
一日中靴下と靴を履いていると、足は蒸れ、高温・多湿の状態になっています。自宅では素足で過ごし、可能であれば職場ではサンダルを履き、蒸れが気になる場合は靴下を履き替えることをおすすめします。靴も、毎日同じものを履くのではなく、何足かを交互に使う、こまめに干す、乾燥剤を入れる、中敷きを取り替える、除菌スプレーを使う...といった工夫で清潔な状態をキープしましょう。

身体を清潔に保ち、身につけるものや室内はキレイで通気性良く、快適に使える状態にしておくこと。日常生活のちょっとした気遣いが水虫予防の基本です。

まとめ

  • 水虫は白癬菌に感染することで起こる皮膚病で、医学的には「白癬」と呼ばれる
  • 白癬菌は皮膚の角質層などにあるケラチンを栄養にして繁殖する
  • 白癬菌が付着し、高温多湿の状態が続くなどの条件がそろうと、感染が成立する
  • 足だけではなく、爪や手、体幹、頭など、水虫ができる部位と症状はさまざま
  • 軽度の水虫は市販薬でも治るが、改善しない場合は皮膚科の受診が望ましい
  • 水虫治療の基本は外用の抗菌薬だが、治りづらいタイプは内服薬も併用する
  • 身体の清潔を保つことが予防の第一
  • 室内や足拭きマットなどを清潔に保つ
  • 足が高温多湿の状態にならないよう注意する