医療コラム
乾燥肌のスキンケアとは?皮膚のバリア機能の低下を防ぐ方法や、化粧水や乳液の選び方を解説。
秋や冬になると、お肌の乾燥が気になりませんか?「いつも通りにお手入れしているのに、肌が乾燥してしまう」と悩んでいる人もいるかもしれません。そこで、乾燥肌の原因や、乾燥が気になるときに実践したいスキンケアのコツをご紹介します。
乾燥肌とはどんな肌?
お肌の乾燥を気にされている方の中には、美容雑誌やWebサイトなどで「肌質チェック」を試したことがあるという人もいるのではないでしょうか。一般的に肌質は、皮膚表面の皮脂量と水分量によって、大きく次の3つに分けられます。
- 普通肌:皮脂量と水分量の両方が正常な肌
- 乾燥肌:水分量が正常よりも少ない肌
- 脂性肌:正常よりも皮脂量が多い肌
このほか、顔の部分によって脂性肌と乾燥肌が混在している混合肌(例:鼻は脂性肌で口まわりは乾燥肌)、水分量は少なくて皮脂量は多い脂性乾燥肌など、さらに細かく分類されることもあります。
皮膚の水分を保つバリア機能
前項でお伝えしたとおり、乾燥肌は正常よりも水分量が少ない状態です。この皮膚表面の水分量には、皮膚のバリア機能が大きく影響しています。
私たちの皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっています。さらに表皮はいくつかの層に分けることができ、一番外側を構成しているのが「角層」です。この角層を覆う皮脂膜や、角層内の角質細胞間脂質(セラミドなど)、天然保湿因子などが皮膚のバリア機能として働いていて、外部の刺激から皮膚を守るとともに、皮膚の水分量を保つ上でも大きな役割を果たしています。つまり、何らかの理由でバリア機能が低下すると水分は蒸発しやすくなり、肌の乾燥や肌トラブルを引き起こす原因になるとも言えるのです。
なぜ肌は乾燥するの?
それでは、バリア機能の低下や肌の乾燥を招く要因についてみていきましょう。
〇環境によるもの
空気が乾燥している環境では、肌の水分も蒸発しやすくなります。皮膚のバリア機能のひとつである皮脂膜は、肌の水分と皮脂が混ざり合ってできていますが、空気が乾燥して皮膚の水分が蒸発してしまうと、この皮脂膜まで薄くなります。そうすると、皮膚のバリア機能が低下して、肌も乾燥しやすくなるのです。また、湿度が高い夏の季節も、屋内などエアコンの使用状況によっては、お肌の乾燥を招きます。このほか、急激な温度変化や紫外線、花粉、ホコリなども、皮膚のバリア機能を低下させる一因といわれています。
〇誤ったスキンケア
肌に合わない化粧品を使う、洗顔時にゴシゴシと強くこする、熱いお湯で顔を洗うなどは、誤ったスキンケア方法です。皮膚のバリア機能の低下を招き、乾燥の原因にもなります。また、乾燥対策にシートマスクを取り入れている人も多いと思いますが、決められた時間以上の使用は、かえって乾燥の原因になることがありますので注意が必要です。
〇加齢
セラミドをはじめとする角質細胞間脂質や天然保湿因子は、25~30歳を過ぎると減少することがわかっています。そのため、年齢を重ねると皮膚は乾燥しやすくなります。
〇ターンオーバーの乱れ
ターンオーバーとは、新しい細胞ができて古い角質が剥がれ落ちる、いわばお肌の新陳代謝のこと。このしくみが乱れて古い角質が皮膚の表面に溜まっていくと、皮膚に水分が行き届かなくなり乾燥を招きます。
こうした原因によるお肌の乾燥は、肌荒れなど他の肌トラブルにもつながりかねません。皮膚のバリア機能が低下しますので、外部からのちょっとした刺激でもかゆみや痛みを感じたり、水分量と皮脂量のバランスが崩れて皮脂量が過剰に増え、ニキビや吹き出物ができたりすることもあります。また、皮膚の乾燥状態が続くと、しわの原因にもなります。
それでは、これらの肌トラブルを引き起こさないためには、どのようなお手入れをしたらよいのでしょうか。
うるおいを取り戻すスキンケア方法
うるおいを取り戻すスキンケアの重要なポイントは「保湿」です。次のような点に注意してお手入れをしましょう。
〇クレンジング・洗顔
健やかな肌の維持には、まずはお肌を清潔な状態に保つことが大前提です。そのため、クレンジングや洗顔はとても重要です。ただし、前述のとおり、ゴシゴシと力を入れて顔を洗うと、皮膚を傷つけたり、必要な皮脂まで洗い流したりすることになり、かえって皮膚のバリア機能は低下してしまいます。洗顔料を充分に泡立てて優しく洗い、洗顔後はしっかり洗い流すようにしましょう。このとき、水の温度にも気をつけてください。熱いお湯は必要以上に皮脂を取ってしまい、乾燥しやすくなります。なお、クレンジング剤はオイルタイプよりも、クリームタイプのほうが乾燥を防いでくれます。
〇保湿
乾燥肌対策では、保湿ケアが重要です。洗顔後の肌は、時間とともに水分を失い乾燥していきますから、できるだけ早く保湿することがポイントです。また、化粧水は肌への刺激が少ないものや、「セラミド」などが配合されている保湿力の高いものを選ぶとよいでしょう。さらに、乳液やクリームなども取り入れて、水分を逃さないようにしましょう。また、1年を通して同じ化粧品を使っている場合、冬は保湿力の高い化粧水にしてクリームをプラスするなど、季節に合わせてスキンケアのアイテムを変えるのも一つの方法です。
こうした日々のお手入れに加え、食事や睡眠、ストレス解消といった生活全体の見直しも大切です。なぜなら、乾燥の原因にもなりうるターンオーバーの乱れには、生活習慣やホルモンバランスなどが大いに関係しているからです。何よりも、きれいなお肌を手に入れるためには、カラダも健康でなくてはいけません。ですから、生活とスキンケアの両方を見直して、うるおいのあるお肌を取り戻しましょう。ただし、それでもお肌の乾燥が続き、状態が悪化してかゆみや痛み、炎症などの症状を伴っている場合は、早めに皮膚科医などに相談してださい。
まとめ
- 肌質は皮膚表面の水分量と皮脂量によって、普通肌、乾燥肌、脂性肌に分類される。混合肌や脂性乾燥肌など、さらに細かく分類されることもある
- 乾燥肌は正常よりも水分量が少ない肌のことを指す
- 皮膚の水分量には、皮膚のバリア機能が関係している
- 皮脂膜、角質細胞間脂質、天然保湿因子などが皮膚のバリア機能として働き、外部の刺激から守る、水分量を保持する、といった役割を果たしている
- 皮膚のバリア機能が低下すると、乾燥や肌トラブルの原因になる
- 肌の乾燥を招く要因として、空気の乾燥、急激な温度変化、紫外線などの環境要因、誤ったスキンケア、加齢、ターンオーバーの乱れなどが挙げられる
- うるおいを取り戻すためには、保湿を中心とした正しいスキンケアを行うことが重要
- クレンジングや洗顔は優しく洗い、洗い残しがないようにすること、熱いお湯を使わないことが大切
- クレンジング剤は、オイルタイプよりもクリームタイプのほうが乾燥を防ぐ
- 洗顔後はすぐに保湿を行う
- 化粧水は刺激が少ないものや、保湿力の高いものを選ぶ
- 化粧水後は乳液やクリームなどを取り入れる
- 季節に合わせてスキンケアを変えるのも方法の一つ
- 生活習慣やホルモンバランスを整えることも、乾燥を防ぐうえで大切
- 生活やスキンケアを見直しても、乾燥が改善しない、もしくは何らかの症状が出ている場合は、早めに皮膚科を受診する