汗や日焼け止めから、夏に増える肌トラブル。あなたのかぶれ(接触性皮膚炎)の原因は?

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

肌トラブルにはいろいろな種類がありますが、その中でも「かぶれ」は、誰もが一度は経験したことがあるでしょう。身近な皮膚病ともいえるかぶれですが、その原因はさまざまで、夏に起こりやすいものもあります。そこで今回は、かぶれの原因や、夏に向けての注意点をご紹介します。

かぶれってどんな皮膚炎?

かぶれは、外部から刺激が加わったり、アレルゲン(アレルギーの原因物質)などが皮膚に触れるなどによって起こる湿疹のことで、専門的には「接触皮膚炎」と呼ばれています。代表的な症状は、皮膚の赤み、ブツブツ、水ぶくれなどで、かゆみや痛みを伴います。
接触皮膚炎は発症のメカニズムによって、刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の大きく2つにわけられています。それぞれについて、みていきましょう。

かぶれ(接触皮膚炎)の種類:代表的な2つのタイプ

(1)刺激性接触皮膚炎
皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織という構造になっていて、表皮はさらにいくつかの層から成り立っています。そのうち一番外側の角層にはバリア機能が備わっていて、外の刺激から皮膚を守る役割を果たしています。ところが何らかの理由によってこのバリア機能が低下していると、そこから化学物質などが侵入し、炎症を起こすことがあります。これが刺激性接触皮膚炎です。石鹸やシャンプー、洗剤などの日用品、化粧品、植物(イラクサ、ニンニク、アロエなど)、農薬、セメントなどが原因となります。アレルギーなどとは違って、誰でも発症する可能性があります。

(2)アレルギー性接触皮膚炎
アレルゲンが表皮に侵入することによって起こる接触皮膚炎です。原因となる物質にはいろいろなものがあり、アクセサリーやベルトに使われる金属(ニッケル、コバルトなど)、クロム革製品、食べ物(ぎんなん、柑橘類、プロポリスやキチンキトサンを含む健康食品など)、植物(ウルシ科など)、化粧品や医薬品など、あらゆるものがアレルゲンになります。刺激性接触皮膚炎とは違って、発症するのはアレルゲンへの抗体を持った人に限られます。

かぶれ(接触皮膚炎):そのほかのタイプ

接触皮膚炎には、先にあげた2つのほかに特殊型と呼ばれるものもあります。そのうちのいくつかを解説します。

○全身性接触皮膚炎

アレルゲンを口などから体内に取り込むことで、手や足、全身などに皮膚炎が現れるタイプです。特定の物質がアレルゲンとなって症状を引き起こす点はアレルギー性接触皮膚炎と同じですが、このタイプでは、アレルゲンが皮膚以外の場所(経口摂取、注射など)から体内に取り込んだ際に皮膚炎の症状を引き起こすという特徴があります。たとえば、ニッケルに抗体を持っている人がニッケルを含む食品(ココナッツ、チョコ、きなこなど)を食べることによって、皮膚が赤くなるなどの症状が現れるようなケースです。また、歯科治療で使われる金属(水銀など)が原因になることもあります。

○光接触皮膚炎

日光や紫外線に当たることで起こる皮膚炎で、2つのタイプにわけられます。

  • 光アレルギー性皮膚炎:皮膚についた物質が、紫外線と反応することでアレルギーを引き起こすものです。抗体がある人だけが発症します。
  • 光毒性皮膚炎:特定の薬剤を一定量使い、それが紫外線と反応を起こすことで発症します。アレルギー性ではないので、誰でも発症する可能性あります。

夏に注意したいかぶれ

今回ご紹介したかぶれは、季節に関係なく発症する可能性があるものばかりです。けれども、とくに夏に注意したいものがあります。

○金属が原因でおこる接触皮膚炎

ネックレスや指輪などのアクセサリーや、ベルトのバックルなどには、金属が使われています。夏の暑い時季にこれらを身につけていると汗の影響で金属の成分が溶け出し、金属イオンへと変わります(イオン化)。するとこれが皮膚へ侵入し、アレルギー反応を起こすことがあります。金属の中でも、ニッケル、クロム、コバルトはイオン化しやすい種類で、そのうちコバルトは、口紅などの化粧品にも使われます。

○ゴム(ラテックス)が原因でおこる接触皮膚炎

仕事などでゴム手袋を使う人もいると思いますが、ゴムに使われるラテックスもアレルギー性接触皮膚炎の原因になります。季節に関係なく、ゴム手袋を装着すると手汗をかきやすくなりますが、夏になると気温も高くなって、より一層汗をかきやすい状態になります。その結果、ラテックスが汗で溶けてアレルギー症状を起こし、皮膚炎を発症することがあります。

○日焼け止めなどが原因でおこる接触皮膚炎

夏は日焼け止めを使う人が増えてきますが、日焼け止めに使われる紫外線吸収剤が原因で接触皮膚炎を発症することがあります。紫外線吸収剤が入っていない日焼け止めも販売されていますから、皮膚が敏感な人や日焼け止めが原因でかぶれた経験がある人は、「紫外線吸収剤フリー」の日焼け止めを使うことがおすすめです。

○植物が原因でおこる接触皮膚炎

夏になるとアウトドアを楽しむ人がたくさんいます。ただし、その際の服装には注意が必要です。半そでや短パン、サンダルといった露出の多い服装で、草木などが多く生えている場所に行くと、植物などが原因の接触皮膚炎を起こす可能性があります。これを防ぐためには、植物が多い場所に出かける際には袖や丈の長い衣服を着用したり、スニーカーを履いて、皮膚の露出を減らすことが大切です。

夏に向けて知っておきたい接触皮膚炎の予防策

接触皮膚炎は、原因となる物質を避けることがいちばんの予防法になります。とくに、これまでアレルギー性の接触皮膚炎を発症したことがある人は要注意です。また、夏は汗をかきやすくなります。そのままにしておくと皮膚がかぶれやすくなりますから、汗をかいた後はシャワーを浴びるなどして、清潔を心がけることも大切です。さらに、初めて使う化粧品や石鹸、シャンプー、日焼け止めなどにも注意が必要です。少量から使いはじめ、使い始めのうちは皮膚に異常が出ないか様子をみるようにしましょう。
なお湿疹ができてしまった場合には、皮膚科を受診するようにしましょう。お伝えしたように接触皮膚炎の原因はさまざまで、素人では判断がつかないこともあります。また、夏は汗疹をはじめほかの肌トラブルも起こりやすい季節です。自分ではかぶれだと思っていても、ほかの皮膚病の可能性もありますから、安易に自己判断せず、受診することが大切です。

まとめ

  • かぶれは、外部からの刺激やアレルゲンの皮膚への接触によって起こる湿疹で、専門的には「接触皮膚炎」という
  • 代表的な症状は、皮膚の赤み、ブツブツ、水ぶくれなどで、かゆみや痛みを伴う
  • 接触皮膚炎は、刺激性とアレルギー性に大別される
  • 刺激性接触皮膚炎は、皮膚のバリア機能が破壊されたところに、化学物質などが侵入することで起こり、誰でも発症することがある
  • アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質への抗体を持っている人が発症するもので、金属や植物、食べ物、化粧品、医薬品といった多くのものがアレルゲンとなり得る
  • 特殊型として、全身性接触皮膚炎、光接触皮膚炎などがある
  • 金属やゴム(ラテックス)は、汗によって溶けるため、これらを原因とする接触皮膚炎は、とくに夏は注意が必要
  • 日焼け止めに使われる紫外線吸収剤が原因で、かぶれることがある
  • 植物が原因で起こる接触皮膚炎もあるので、アウトドアの際は服装にも注意が必要
  • 原因となる物質をさけること、清潔を心がけること、初めて使う化粧品などは少量からはじめることなどが、予防策になる
  • 湿疹ができた場合には皮膚科を受診すること