冬の季節病「しもやけ」 予防法やかゆいときの対策について

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

冬の季節病として知られている「しもやけ」。毎年、寒くなってくると、手足などの痛みやかゆみに悩まされている人がいるかもしれません。そんなしもやけを悪化させないためには、予防が重要。ここでは、しもやけの予防法や対策をご紹介します。

しもやけってどんな状態?

しもやけ(霜焼け)は、寒冷刺激にくり返し晒されることで起こる血流障害で、専門的には「凍瘡(とうそう)」と呼ばれています。この血流障害に関係しているのが、私たちの身体に備わる体温調節のしくみです。通常、身体は温まると血管が拡張して、熱を逃がそうとします。反対に寒さを感じると、血管が収縮して熱が放出されるのを防いでいます。このように、体温などの影響を受けながら、血流がコントロールされています。
ところで、寒冷刺激をくり返し受けていると、収縮した細い静脈がうっ血して、炎症を起こしてしまうことがあります。これは、収縮した血管が元に戻るスピードに関係しています。血管には動脈と静脈とがありますが、静脈のほうが、収縮した血管が戻るまでに時間がかかります。そのため、冷えた部位を温めると、先に動脈が拡張して血流が増えますが、静脈はまだ収縮しているため、血液の流れが滞りやすくなります。時間が経てば、静脈も拡張して、血液がスムーズに流れるようになりますが、寒冷刺激をくり返し受けていると、うっ血しやすくなって炎症を起こし、しもやけを発生させてしまうことがあります。

しもやけの症状

しもやけというと、足先や手指に発生する、というイメージを持っている人が多いでしょう。たしかに手や足先は、身体の中でも末端にあって血流が滞りやすく、しもやけになりやすいですが、頬や耳たぶ、鼻などの部位にも症状が現れることはあります。
また、しもやけの代表的な症状といえば、痛みやかゆみ、赤みや腫れなどです。とくに、症状が発生するタイミングに特徴があって、冷えた際には痛みが強くなり、反対に温まると、かゆみが出ます。さらに、しもやけが悪化すると、水泡ができたり、それが破れてただれてしまうこともあります。
ちなみに、しもやけには大きく次の2つのタイプがあって、症状にも違いがあります。

  • 樽柿型(たるがきがた)・・・手足が真っ赤に腫れるもので、子どもに多いタイプです。
  • 多型紅斑型(たけいこうはんがた):発疹、しこり、水泡ができるもので、大人に多く見られるタイプです。

しもやけになりやすい条件

お伝えしたように、しもやけは、寒冷刺激によって起こる血流の障害です。では、寒い地域に住んでいるほうが発症しやすいかというと、実は必ずしもそうとは言えません。というのも、気温が4~5℃であることと、寒暖差が10℃以上あることが、しもやけになりやすい条件だからです。また、真冬のほうがかかる人が多い、と思われがちですが、むしろ寒暖差の大きい晩秋や冬の初め、春先のほうが、かかりやすいといわれています。
さらに、しもやけのなりやすさには遺伝的な素因、つまり、体質も大きく関係していて、血流障害の起きやすさや、血管の回復力などに影響すると考えられています。実際、同じ地域に住んでいても、しもやけに全くならない人もいれば、反対に、毎年のように悩まされる人もいます。ですから、しもやけになりやすい人は、自分の体質に合わせて、あらかじめ予防したり、対策をとることが重要です。では、具体的にどのような予防法や対策が有効なのでしょうか。

しもやけの予防法とかゆいときの対策

しもやけは、血流の悪化によって起こるため、発症する前からマッサージをするなどして、血流を良くしておくことが、重要です。とくに、血行が良くなる入浴時などに、マッサージをするのがおすすめです。また、寒さが刺激になるので、外出する際には、靴下や手袋といった防寒具で身体を守ることも重要です。ただし、締めつけのある靴や靴下を履いていると、血流障害の原因になるので、注意しましょう。
さらに、意外と見落とされがちなのが、汗のケアです。最近は、性能の高い暖房設備が整っていたり、機密性の高い住宅が増えているので、室内で厚着をしていると、気づかないうちに汗をかいていることも珍しくありません。そして、汗をかいた状態でそのまま寒い屋外に出てしまうと、より冷えて、しもやけを誘発する一因にもなります。ですから、とくにしもやけになりやすい人は、冬でも汗のケアを忘れずに行いましょう。
くわえて、生活習慣を見直すことも、しもやけ予防になります。たとえば、運動不足や喫煙習慣は、血流が悪くなる原因になりますから、注意しましょう。また、食事も重要です。冷たいものばかり摂っていると、血行不良を招く原因になりますから、バランスのとれた食事を心がけましょう。ちなみに、しもやけ予防という点では、血行を促進するビタミンEがおすすめです。うなぎや卵黄、アーモンド、落花生などに含まれているので、こうした食品を意識して摂ってみましょう。

しもやけがかゆい!対策は?

しもやけを発症してしまった場合も、上でご紹介した予防法を実践することが、悪化防止につながります。また、かゆみなどつらい場合には、血流を良くするために、マッサージをしてみましょう。ただし、炎症が起きている部位を直接マッサージすると、かえって症状を悪化させる可能性があるので、足首や手首など、患部の近くをマッサージするほうがよいでしょう。
それでも症状がつらい場合には、薬に頼るのも方法の一つ。最近は、市販薬もありますので、しもやけの症状だとはっきりわかる場合には、こうした薬でセルフケアに取り組んでみましょう。一方、こうした方法で改善しない場合や、しもやけなのかどうかを判断できないときには、皮膚科への受診をおすすめします。皮膚科では、血流を良くする作用を持つビタミンEの外用薬やヘパリン類似物質クリームが処方されます。また、炎症や赤み、かゆみなど症状が強い場合には、ステロイド軟膏が処方されたり、抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。こうした薬を使って治療をすると、改善が期待できるでしょう。

しもやけ:暖かくなっても治らないなら要注意

お伝えしたように、しもやけは寒暖差のある時季に起こりやすい症状です。ですから、もし、春以降で朝晩も暖かくなっているのに、しもやけの症状が改善しないようなときには、要注意。ぜひ病院に相談してください。というのも、実はしもやけのような症状が出る病気がほかにもあるからです。その一つが「全身性エリテマトーデス」です。自己免疫の異常で起こる病気で、女性に多く見られます。関節や皮膚、中枢神経など、さまざまなところに症状が現れますが、寒冷刺激を受けると、しもやけと似た症状が出ることがあります。お伝えしたように、基本的にしもやけは、症状が現れる時季が決まっているので、暖かくなっても症状が続くようなときには、必ず病院を受診してくださいね。

まとめ

  • しもやけ(霜焼け)は、寒冷刺激に繰り返し晒されることで起こる血流障害で、専門的には「凍瘡(とうそう)」と呼ばれている
  • 寒冷刺激がくり返されると、細い静脈がうっ血して炎症を起こし、しもやけを発生させる
  • しもやけは、足先や手指、頬や耳たぶにも症状が発生することがある
  • しもやけになると、痛みやかゆみ、赤み、腫れ、水泡といった症状が現れる
  • しもやけには樽柿型と多型紅斑型がある
  • しもやけになりやすいのは、気温が4~5℃で、寒暖差が10℃以上あるところ
  • 体質もしもやけの発症に関係している
  • マッサージや、防寒具の着用、締め付けのある靴などを履かないこと、汗のケア、生活習慣の見直しなどの予防策が有効
  • 症状がつらいときには皮膚科で相談すること
  • 暖かくなってもしもやけのような症状がある場合には、全身性エリテマトーデスなど、ほかの病気が隠れている可能性もあるので要注意