唇の荒れが治らない...乾燥や刺激、考えられる要因と皮膚科を受診する基準について

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

唇のかさつきや荒れ、そのままにしていませんか?リップクリームなどで保湿を心がけていても荒れが治らない場合には、早めの対処が必要です。唇が荒れる原因や病院を受診する目安についてもお伝えします。

唇が乾燥しやすいのはなぜ?

はじめに、唇は乾燥しやすい部分だと言うことを知っていましたか。飲み物を飲んだり、舐めたりしていると、なんとなく潤っているように思える唇は、実は周りの皮膚よりも角質層が薄く粘膜に近い構造で、乾燥しやすいのです。常に外に露出している状態なので、乾燥や紫外線といった刺激を受けやすい一方、皮脂腺や汗腺がないので、バリア機能がありません。空気が乾燥する冬場はとくに、誰でも唇がカサつきやすくなります。ただし、リップクリームなどでケアしていてもカサついて荒れたり、皮がめくれるような状態になってしまう場合は、何気ない生活習慣が、唇の乾燥を悪化させている可能性があります。

唇の荒れを悪化させる要因

唇の荒れが悪化する要因として、まずあげられるのは、つい舐めてしまう癖です。舐めるとその瞬間は唇が潤ったように感じられますが、その水分が蒸発する際に、唇はさらに乾燥してしまいます。また、荒れが気になるからと言って、無意識に唇を触ったり、めくれてきた皮を剥くような行為は厳禁。荒れは余計に悪化してしまいます。

さらに、食事の際、唇に食べ物や飲み物がつくと紙ナフキンなどで拭き取りますが、強く擦るのはご法度。擦る、という動作も唇の刺激になります。また、拭いた後、すぐに口紅を直したり、メイクの際、下地なしで直接口紅やグロスをつけることも唇の負担となります。洗顔後の肌にすぐファンデーションをつけないように、唇もリップクリームなど下地の役割を果たすアイテムで保湿をした上でメイクしなければ、荒れが悪化してしまいます。

その他、長時間のマスク着用も、唇の荒れが悪化しやすい要因に。マスクをつけていると、口周りはなんとなく潤っているように思えますが、実際はムレているだけです。マスクを外しづらいため乾燥が気になる時は舐めてしのいだり、そのままにしておくと乾燥が助長されてしまいます。また、マスク着脱時の擦れも刺激となります。

乾燥から起こる唇のトラブル

唇が健康な状態であれば、多少乾燥してもリップクリームなど保湿するとすぐに潤い、その状態をキープできます。しかし、唇の乾燥や荒れが悪化すると、次のようなトラブルが生じることもあります。

  • 口角炎
    唇の端の部分である口角に炎症が起こり、赤く腫れたり、皮がむける、かさぶたになる、といった症状がみられる病気です。
  • 口唇炎
    唇全体に炎症や亀裂が生じる病気です。唇が全体的に乾燥して、皮がむけたり腫れることもある他、かゆみを伴ったり、湿疹がでることもあります。

このような病気には、まず気温や湿度、紫外線といった外的な要因が関わる他、化学的な刺激が原因になっているケースもあります。例えば口紅やリップクリーム、歯磨き粉など唇に触れるものが合っていなかったり、矯正器具があたる、といった要因も含まれます。また、食べ物によるかぶれやタバコが刺激になっていることもあり、この場合は原因を取り除くことが重要です。さらに、風邪や胃腸疾患といった、体の不調が関わっていることもあるため、唇が荒れる原因がはっきりしなかったり、保湿ケアをしていても悪化する場合は、病院を受診することが改善の近道です。

唇が荒れる場合の対処法

まず、日頃から唇の潤いを保つためには、たっぷりと油分を与える保湿ケアを徹底することが重要です。乾燥やカサつきが気になる場合は、ワセリンなど柔らかい油分をたっぷりと塗るようにしましょう。その際は縦じわにも油分が入るよう、指の腹で丁寧に塗ることがポイントです。

また、唇が荒れる場合は、何気ない癖が関わっていることが多くあります。先にお伝えしたような要因に心当たりがある場合は、それを避けるよう意識しましょう。具体的には、舐めない、擦らない、など、唇に与える刺激を最小限とすることが重要です。メイクを落とす際も、リムーバーは低刺激のものを選び、ゴシゴシ擦らず、優しく落としましょう。

さらに、唇の潤いを保つためには、部屋の環境に気を配ることも大切です。冬場は特に、暖房を使用していると室内の空気が乾いているので、唇の荒れは悪化してしまいます。加湿器などを適切に使い、乾燥を予防しましょう。

唇のターンオーバーは、顔など他の皮膚よりも早く3〜4日程度と言われています。きちんとケアすれば、遅くとも1週間程度でよくなることが期待できるでしょう。

ただし、このような方法を試しても唇の荒れが改善しない場合は、口角炎や口唇炎の症状が重度になっていたり、何か別の病気が関わっている可能性もあります。市販薬を用いる方法もありますが、原因がはっきりしなければ、皮膚科を受診することがおすすめです。

唇は周りの人からの印象を左右する部分でもあり、荒れがひどいと食事や会話といった生活にも支障をきたします。毎日の保湿ケアを徹底した上で、荒れが治らない場合は適切な対処を行いましょう。

まとめ

  • 唇は、周りの皮膚よりも角質層が薄く粘膜に近い構造で乾燥しやすい
  • 外に露出している唇は乾燥や刺激を受けやすいが、皮脂腺や汗腺がないため、バリア機能が乏しい
  • 唇を舐めたり、拭くといった何気ない習慣が、唇の乾燥を悪化する要因になる
  • 長時間のマスク着用も、唇の荒れが悪化しやすい要因になる
  • 唇の乾燥や荒れが悪化すると、口角炎や口唇炎といったトラブルが生じることもある
  • 唇の潤いを保つためには、たっぷりと油分を与える保湿ケアを徹底することが重要
  • 室内では加湿器を使用し乾燥を予防することも、唇の荒れ予防につながる
  • 唇の荒れがなかなか改善しない場合は、早めに皮膚科を受診することがおすすめ
  • 保湿ケアを徹底し原因にあった適切な対処をすることが、唇の荒れを改善する近道