トラネキサム酸とは?美白効果や副作用について解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

シミ改善に効果のある成分として有名な「トラネキサム酸」。トラネキサム酸を配合したスキンケア製品などをすでに取り入れている人も多いでしょう。いっぽうで、興味はあるけれど効果や副作用がよくわからない、という人もいるかもしれません。そこで、トラネキサム酸の美白効果や副作用について解説します。

トラネキサム酸ってどんな成分?

トラネキサム酸は人工的に作られたアミノ酸のひとつで、止血作用や炎症を抑える作用があることから、もともと医薬品に配合されていた成分です。風邪などでのどが腫れているときや、口内炎ができたときの治療薬として、あるいはアレルギーの薬として病院で処方されることがあるので、服用したことがある人は多いかもしれません。
そんな病気の治療薬として用いられていたトラネキサム酸が、肌に効果のある成分として認められるようになったのは、1990年代に入ってからです。1995年に肌荒れを防ぐ成分として、さらに2002年にはシミの改善に効果のある成分として厚生労働省に認可されるようになると、医薬品だけでなく、医薬部外品にも配合されるようになりました。さらに現在では、シミの一種でもある肝斑(かんぱん)の治療薬としても、美容医療の現場などで広く使われています。皮膚科では内服薬として処方されることが一般的ですが、最近はイオン導入や水光注射などの施術にも、トラネキサム酸を配合した薬剤を使われるようになっています。

トラネキサム酸の美白効果

トラネキサム酸に美白効果があると言われているのは、おもに「プラスミン」というたんぱく質の生成を抑える働きがあるからです。プラスミンは出血が起きた際に発生する物質で、血液を固まりにくくする作用や炎症にかかわる物質を誘発する作用があります。
また、メラノサイトを活発化させる物質(プロスタグランジンなど)の生成にもかかわっています。メラノサイトが活性化すると、シミのもとであるメラニンがたくさん作られてしまうので、シミを予防、改善するためには、プラスミンの分泌を抑えることが重要です。
そこで力を発揮するのがトラネキサム酸です。トラネキサム酸は、「抗プラスミン作用」といって、プラスミンの過剰な生成を防ぐ働きがあり、メラノサイトの活性化を抑えることにも役立ちます。また炎症を抑える作用があるので、紫外線の影響で悪化する一般的なシミや肝斑だけでなく、炎症後色素沈着の予防や改善にも効果を発揮します。

このように、シミ改善に効果のあるトラネキサム酸ですが、体内に取り入れる方法は大きく2つあります。薬を内服する方法と肌に塗る方法です。具体的にみていきましょう。

トラネキサム酸を取り入れる方法(1)内服する

トラネキサム酸は食品から摂ることはできません。そのため、経口摂取したいときは内服薬を用いることになります。
トラネキサム酸の内服薬は、皮膚科など医療機関で処方してもらうことができます。シミ改善での処方は原則として保険適用外になりますが、医師に肌の状態を診てもらえたり、ほかの治療法も含めて相談ができるのは、受診の大きなメリットといえるでしょう。
そのほか、ドラッグストアでもトラネキサム酸配合の市販薬を購入することができます。病院に行かずに薬が手に入る手軽さが魅力ですが、市販薬は処方薬よりもトラネキサム酸の最大配合量が少なく定められています。より効果を実感したい場合や、すでにできてしまったシミを根本的に治療したい場合には、美容皮膚科を受診することをおすすめします。

トラネキサム酸を取り入れる方法(2)肌に塗る

トラネキサム酸は肌から取り入れることもできます。最も手軽な方法は、トラネキサム酸を配合したスキンケア製品を使うことです。最近では、さまざまなメーカーからトラネキサム酸配合の化粧水やクリームなどが出ていますので、自分の肌に合ったものを選ぶとよいでしょう。
また、美容皮膚科では、シミやくすみ改善を目的に行われるイオン導入や、乾燥や小じわの改善を目的に行われる水光注射に、トラネキサム酸を配合した薬剤を追加することも可能です。
こうした薬剤には、ビタミンCなどの成分も配合された薬剤が使われることが多いので、より効果的にシミやくすみにアプローチしたい人にはおすすめです。

トラネキサム酸の副作用と注意点

トラネキサム酸は基本的に副作用が出にくい成分ですが、ごくまれに発疹、嘔吐や吐き気、下痢、食欲不振などの症状が現れる可能性があります。服用後に何らかの症状が出た場合には、服用を中止して医師に相談しましょう。
また、美容目的で日常的にトラネキサム酸を服用している人は、風邪薬などを飲む際に注意が必要です。のどの炎症を抑える薬の中にはトラネキサム酸が配合されているものがあり、一緒に飲むことで過剰摂取につながる恐れがあるからです。
そのほか、人工透析を受けているとけいれんなどの副作用が出る可能性があるほか、血栓ができやすい人、心筋梗塞や脳梗塞の既往歴がある人、妊娠中や授乳中の人、ピルを服用中の人は、トラネキサム酸を服用できないことがあるので、注意しましょう。
なお、スキンケア製品で、肌荒れなどの症状が出たときには使用を中止し、改善しない場合には皮膚科で相談するようにしましょう。

トラネキサム酸だけじゃない!?より効果的にアプローチしたいなら

シミやくすみの改善などに役立つトラネキサム酸。比較的取り入れやすい成分ですが、だからこそ内服する場合も肌に塗る場合も正しく使うことが大切です。くれぐれも内服薬を過剰に摂取したりすることのないように気をつけましょう。
もし、効果に満足できない場合は、美容皮膚科に相談するのもおすすめです。お伝えしたように、内服薬以外のメニューもありますし、ほかの治療法と組み合わせることで、より改善が期待できることがあるからです。シミやくすみ、肝斑などを改善したい人や、トラネキサム酸による治療に興味のある人は、一度専門医に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

  • トラネキサム酸は人工的に作られたアミノ酸のひとつ
  • 出血や炎症を抑える作用がある
  • 1990年代以降、肌荒れやシミ改善への有効性が認められ、医薬部外品などにも使われるようになった
  • トラネキサム酸には、メラノサイトの活性化に関与する「プラスミン」の生成を抑える働きがあり、シミ改善の有効成分として認められている
  • トラネキサム酸は、食品からは摂取できず、経口摂取をしたいときは薬を内服することになる
  • トラネキサム酸の内服薬は処方薬以外に市販薬もある
  • 肌から取り入れる場合には、トラネキサム酸配合のスキンケア製品を使う、イオン導入や水光注射などの美容施術を受ける、といった方法がある
  • トラネキサム酸は副作用が出にくい成分だが、リスクはゼロではないので、何らかの症状が出た場合には服用を中止すること