病院でファーストピアスの穴を開けるメリットとは?穴開けの方法や場所、期間についても解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

顔周りを華やかに見せてくれるピアス。ファッションアイテムの一つとして人気ですが、イヤリングとは違い、ピアスの場合は穴を開ける必要があります。自分で開ける以外に、皮膚科などで穴開けをしてもらうこともできますが、病院での穴開けにはどんなメリットがあるのでしょうか?穴開けの方法や期間なども含めて、詳しく解説します。

ピアスの穴が完成するしくみ

一般的にピアスの穴開けには、ピアッサーやピアスガンといった専用の器具を使います。これらの器具には穴開け専用のスタッドピアス(キャッチ式のピアス)とバネが付いていて、一瞬でピアスホールを開けつつ、ファーストピアスを装着することができます。穴を開けた後、ファーストピアスをつけた状態で1ヶ月ほど待つと、しっかりとしたピアスホールが完成します。
中には、1ヶ月もピアスをつけたまま生活することに抵抗がある人がいるかもしれません。けれども、しっかりとしたピアスホールを作るためには、この期間が重要です。というのも、皮膚には修復能力が備わっているため、すぐにファーストピアスを抜いてしまうと、穴が塞がってしまうからです。また、中途半端な状態でファーストピアスを抜こうとすると、傷をつけてしまうリスクも高くなります。このようなトラブルを防いでしっかりとしたピアスホールを作るには、穴の内側が皮膚で覆われて上皮化するのを待つことが重要で、そのためには1ヶ月ほどの時間が必要になります。

注意したいピアスの穴開けに伴うトラブル

ピアッサーはドラッグストアをはじめ、様々な場所で市販されているため、自分でピアスの穴開けをする人はたくさんいます。また、「自分で開けるのは怖いから」と友人や家族に頼む人もいるでしょう。このように、素人でも簡単にできると思われているピアスの穴開けですが、実は正しく行わないと、次のようなトラブルを生じる可能性があります。

〇細菌感染

ピアスの穴開けは耳の皮膚に傷をつける行為です。そのため、穴を開ける前には使用する器具や穴を開ける場所をしっかり消毒する必要があります。また、穴を開けた後は2週間程度、専用の消毒液による消毒が必要です。このような準備や予防策を怠ってしまうと、細菌感染によって炎症が起きてしまったり、膿んでしまったりして、治療が必要になる場合があります。

また、ピアッサーなどの専用器具ではなく、安全ピンなどを使って穴を開ける人もいるようですが、必要以上に皮膚を傷つけてしまったり細菌感染したりするリスクが高まります。

〇かぶれ

ピアスに使われている金属に対して抗体を持っていると、アレルギー反応が起きて皮膚がかぶれてしまうことがあります。また、金属アレルギー以外にも、消毒液によるかぶれが起こる場合もあるため注意が必要です。

〇裂傷(れっしょう)

装着したピアスが衣服にひっかかったりすることで、耳が裂けてしまうことがあります。ピアスホールの位置が極端に耳の縁に近いなど、適切な位置に穴を開けられていないことが一因になります。

〇粉瘤(表皮嚢腫)

ピアスの穴開け時にできた傷の修復過程で、皮膚の内部に袋状の「嚢腫(のうしゅ)」ができてしまうことがあります。しこりができたり、指などで圧迫した際にドロドロとした内容物が出てきたりします。粉瘤の原因はいくつか考えられますが、ピアスの穴を開ける際の衝撃が原因になる場合があります。

〇ピアスケロイド

ピアスの穴開けの際にできた傷跡が赤く、硬くなって盛り上がることがあります。いわゆるケロイド体質の人に起こるものですが、まれにケロイド体質以外の人にも起こることがあります。

お伝えしたように、ピアスの穴開けには実は多くのリスクが伴います。そのため、こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、ファーストピアスは医療機関で開けることをおすすめします。

医療機関でファ―ストピアス開けるメリットとは

医療機関でファーストピアスの穴開けをすることには、次のようなメリットがあります。

〇トラブルのリスクを抑えられる

医療機関では、器具や処置前の消毒が徹底されています。また、アレルギーの起こりにくい材質(純チタン製など)を使ったピアッサーやピアスガン、消毒液などを使用している場合が多く、トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。

〇希望する位置に穴開けられる

特に自分で穴を開ける場合には、針が斜めに刺さってしまう、左右の耳で非対称になる、希望する部位に穴が開けられない、といったことが起こる可能性がありますが、医療機関では、基本的に希望する場所に穴を開けてもらうことができます。

〇リスクや注意事項を確認できる

お伝えしたように、ピアスの穴開けにはいくつものリスクが伴うため、ケロイド体質の人や、出血が止まりにくい人(あるいは血栓をできにくくする薬を飲んでいる人)、重度の金属アレルギーの人など、ピアスの穴開けを控えたほうが良い人もいます。医療機関でピアスの穴開けをお願いする場合には、このような注意事項についての説明を受けることができます。また、心配な点がある場合には医師に確認できる点も大きなメリットといえるでしょう。

なお、ピアスの穴開けを友人に頼んだり、ピアスショップなどに依頼する人もいますが、ピアスの穴開けは耳の皮膚に傷をつける行為であり、医療行為に該当するものです。「自分で開けるのは怖いから誰かにお願いしたい」という人も多いでしょうが、その後のトラブルを未然に防ぐためにも、医療機関で行うようにしましょう。

医療機関でのピアスの穴開けの実際

ここでは、医療機関での処置の流れなどについてご説明します。

〇問診

医療機関では、事前に問診を行い、ピアスの穴開けを行います。問診の際に穴を開ける位置を決めたり、医療機関によっては使用するピアスの種類を選ぶこともできます。ピアスの位置は、基本的には好きな場所に開けられますが、耳の縁付近などは裂傷のリスクが高いため避けたほうが良いでしょう。また耳たぶ以外の穴開けに対応していない医療機関もあるため、事前に電話などで確認しておくことをおすすめします。

〇処置

問診が終わったら、消毒をしてピアッサーなどを使って穴を開けていきます。処置にかかる時間は5分程度です。

〇治療後

人によっては処置後から数時間程度、じんじんとした痛みを感じることがあります。冷やすと痛みが軽減しますが、長引くような場合には医療機関に相談しましょう。

なお、医療機関でのピアスの穴開けは自費診療となります。消毒液などを含めて数千円程度が相場ですが、医療機関によって異なるため確認しておきましょう。

医療機関でピアスの穴開けをする際の注意点

先にお伝えしたように、処置から1ヶ月程度はファーストピアスを装着したまま生活することになります。そのため、ピアスをつけられない日がある人は受診日を調整するなど十分考慮して予定を立てましょう。また、治療後は次の点に注意しましょう。

〇消毒を忘れずに行う

処置から2週間程度は、1日1回、入浴後などに医療機関で処方された消毒液を患部に塗布します。綿棒などに消毒液をつけて耳の表側と裏側の両方から消毒していきます。受診した際に詳しいやり方を教えてもらえますので、毎日忘れずに消毒しましょう。

〇ピアスの引っかけなどに要注意

ファーストピアスの装着中は着替えやヘアーセットや睡眠中に、ピアスを引っかけないように注意してください。また、ヘアスプレーなどがかからないように気をつけましょう。

〇サウナなど高温の場所を避ける

金属製のピアスをサウナなどの高温になる場所につけていくと、やけどをしてしまう恐れがあります。ファーストピアス装着後の1ヶ月間はもちろんですが、それ以降も高温の場所では装着しないようにしましょう。

〇異変を感じたら受診を

稀ではありますが、穴開け後に細菌感染を起こしたり出血したりする場合があります。出血が止まらない、耳が赤く腫れる、痛みが出る、熱を持って熱くなっている、膿が出ているなどの症状がある場合には受診しましょう。

ご紹介したように、ピアスの穴開けには実はいろいろなトラブルのリスクがあります。安心してオシャレを楽しむためにも、ピアスの穴を開けたい人は医療機関で処置してもらうようにしましょう。

まとめ

  • 一般的にピアスの穴開けは、ピアッサーやピアスガンといった専用の器具を使う
  • 穴を開けた後、ファーストピアスをつけた状態で1ヶ月ほど待つと、しっかりとしたピアスホールが完成する
  • ピアスの穴開けを失敗すると、細菌感染やかぶれ、裂傷、粉瘤、ピアスケロイドなどのリスクが高まる
  • 医療機関でファーストピアスの穴開けを行うメリットとして、トラブルのリスクを抑えられること、希望する位置に穴を開けられること、リスクや注意事項を確認できることなどがあげられる
  • ファーストピアスの穴を開けた後の注意点としては、消毒を毎日行うこと、ピアスの引っかけなどに気をつけること、高温の場所を避けること、何らかの症状が出たら受診することなど