季節の変わり目に気になるゆらぎ肌。その原因やスキンケアによる改善方法について解説

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

季節の変わり目や忙しい時期、日によって異なる肌トラブルに悩まされていませんか。そんな肌の不調は「ゆらぎ肌」によるものかもしれません。ゆらぎ肌の原因や改善方法について詳しくお伝えします。

ゆらぎ肌とは

今回お伝えする「ゆらぎ肌」という状態は、医学的な用語ではありませんが、肌が一時的に敏感になることを意味して一般的に使われているものです。
健康的な肌には「ターンオーバー」と呼ばれる仕組みが備わっていて、細胞が一定の周期で生まれ変わっています。その周期は基本的に4週間で、古い角質は押し上げられて最終的に垢となって剥がれ、新しい細胞に入れ替えられます。
このような肌のコンディションは、絶妙なバランスの上で成り立っているため、気温の変化や乾燥、花粉、ほこりといった外的要因、ストレスや食事といった内的要因によって、簡単に崩れてしまいます。その結果、肌が刺激に弱くなると、乾燥や吹き出物、赤み、痒み、ごわつき、といった不調が日ごとに変化して現れやすくなります。このような肌の状態は「ゆらぎ肌」と呼ばれています。

ゆらぎ肌によって生じる肌トラブル

ゆらぎ肌は敏感肌とも混同されやすく判別が難しいものですが、それぞれの状態は少し異なります。一般的に敏感肌と言われるのは、肌の表面のバリア機能が低下して刺激に弱くなり、赤みやひりつきが出やすい状態が慢性的に見られる肌タイプ。一方、ゆらぎ肌の症状は一時的で、季節の変わり目の気温差が大きい時期や、花粉などのアレルゲンに触れやすい時期、ストレスや睡眠不足といった体調不良が生じているタイミングなどに現われます。
ゆらぎ肌の代表的な症状は、肌のかさつきやひりつき、痒みなど。いつも寒くなると肌がかさついて痒みが生じる、といった症状には、ゆらぎ肌が大きく関わっていると考えられます。また、プツプツとしたできものや、湿疹、大人ニキビ、肌のごわつきなどが見られることも少なくありません。ゆらぎ肌になるとこのようなトラブルが起こりやすく、肌の状態が不安定になっているため、普段使っている化粧水があまり浸透しなかったり、ピリッとした刺激を感じたりすることもあります。

ゆらぎ肌の原因

ゆらぎ肌が起こる根本的な原因は、肌のバリア機能の低下です。私たちの肌は、外側から表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっています。表皮の中でも一番外側にある「角質層」は、外部刺激から肌を守り水分の蒸発を防ぐバリア機能を持っています。この機能が十分に働くためには、肌にもともと備わっている「皮脂膜」「角膜細胞間脂質」「NMF(天然保湿因子)」という3つの要素が整っていることが欠かせません。ところが、外から様々なダメージを受けて、表皮が薄くなったり傷ついたりすると、バリア機能が低下してしまいます。また、ストレスや食事といった内的な要因もバランスが崩れるきっかけとなります。このような影響で、肌の中で水分をキープする力が弱まると、水分が蒸発して乾燥しやすく、刺激に弱くなってしまうのです。
こうした肌トラブルが一時的に起こるのがゆらぎ肌ですが、その代表的なきっかけには次のものがあげられます。

〇季節の変わり目の気温差や乾燥

「三寒四温」とも言われる春先など、気温の変化が大きい時季はゆらぎ肌が起こりやすくなります。また秋から冬にかけてみられる空気の乾燥もゆらぎ肌を招く大きな要因に。特に、夏のダメージが蓄積した肌は、秋の気温差が刺激となってトラブルが生じやすく、冬も暖房の使用による乾燥に加えて、冷えた外気との温度差がダメージを与えやすい季節と言えます。

〇紫外線

シミやしわの原因として広く知られる紫外線ですが、ゆらぎ肌を招く一因にもなります。日差しの強い夏はUVケアを心がけていても、それ以外の季節は油断している人も少なくありません。けれども、紫外線は一年中、降り注いています。特に、春は紫外線量が一気に増え始めゆらぎ肌のきっかけにもなるため、注意が必要です。

〇花粉などのアレルゲン

花粉やダニ、ほこりといったアレルギーを招く物質(アレルゲン)も肌にとって強い刺激となります。また、痒みから肌を擦ったり掻いたりしてしまうと、皮膚に傷がつき、ゆらぎ肌の状態を悪化させてしまいます。

〇ホルモンバランスの変化

女性は特に、月経周期に伴うホルモンバランスの変化が肌に大きな影響を与えます。ホルモンバランスが乱れやすい月経前は、肌がゆらぎやすいため要注意。また、年齢とともに、美肌ホルモンとも呼ばれる「エストロゲン」の分泌量が減ると、トラブルが起こりやすい肌状態になります。

〇不規則な生活やストレス、栄養・睡眠不足

生活リズムがくずれて、食事内容に偏ったり睡眠時間が不足したりすると、ターンオーバーが乱れてゆらぎ肌になりやすくなります。また、過度なストレスがかかると、自律神経が乱れるため、異動や進学といった環境の変化が大きい時期は、肌のトラブルに要注意です。

ゆらぎ肌を改善するスキンケア方法

ゆらぎ肌によって生じるトラブルに悩まされている時は、まずスキンケア方法を見直すことが重要です。普段使っている洗顔料や化粧水に違和感が生じた時は、ゆらぎ肌のサイン。低刺激のものや敏感肌用のスキンケアアイテムに変更することがおすすめです。
特に、クレンジングは肌の負担となりやすいものです。肌の赤みやヒリヒリ感などが出ている場合は、刺激の少ないミルクタイプを選ぶとよいでしょう。また、洗顔の際も決してゴシゴシ擦らず、洗顔料を十分に泡立ててやさしく洗うことが大切です。洗い流す際も、人肌程度のぬるま湯で丁寧に流すと、肌への刺激を最小限にすることができます。
また、ゆらぎ肌を改善するためには、何よりも保湿ケアを徹底することがポイントです。普段使っている化粧水や低刺激タイプのものでもピリピリとした刺激を感じる場合は、ワセリンなどの保湿剤を使ってみましょう。その他、クリームタイプの保湿剤も水分が少ないため、肌にしみる刺激を減らしつつ、潤いケアをすることができます。
このようにスキンケア方法を見直し保湿を徹底すると、少しずつ肌のバリア機能が戻り、ゆらぎ肌やそれに伴うトラブルの改善が期待できます。ただし、症状がなかなか改善しない場合は、それ以外の原因が隠れている可能性もあるため、早めに皮膚科を受診しましょう。

まとめ

  • 「ゆらぎ肌」は一般的に、肌が一時的に敏感な状態になることを意味する
  • 肌が刺激に弱くなり、乾燥や吹き出物、赤み、痒み、ごわつき、といった不調が日ごとに変化して現れる
  • ゆらぎ肌の根本的な原因は、肌のバリア機能の低下である
  • バリア機能の低下には、気温の変化や乾燥、花粉、ほこりといった外的要因が大きく関わる
  • 不規則な生活やストレス、栄養・睡眠不足、ホルモンバランスの乱れといった内的要因もゆらぎ肌の引き金となる
  • 普段使っている洗顔料や化粧水に違和感が生じた時は、ゆらぎ肌のサインと言える
  • ゆらぎ肌を改善するには、スキンケアアイテムを低刺激のものに変更することがおすすめ
  • スキンケアでは、特に保湿を重視することが肌状態の改善につながる
  • ゆらぎ肌の症状がなかなか改善しない場合は、早めに皮膚科を受診することも必要