医療コラム
マイクロニードルとは?効果や美容皮膚科でできる治療をご紹介。
最近、コスメなどでも見かけることが増えた「マイクロニードル」。どのようなものなのでしょうか。そこで、マイクロニードルの特徴や効果、美容皮膚科で受けられるマイクロニードル治療の種類や注意点について詳しく解説します。
美容皮膚科のマイクロニードル治療とは
マイクロニードルとは、1mm未満の細い針のことです。医療の現場では、検査や投薬、予防接種などに活用できるよう開発が進んでいますが、美容の世界では施術や化粧品に用いられています。特に美容医療においては、主に次の2つの目的でマイクロニードルを活用しています。
(1)自然治癒力を高めて肌の再生を促す
肌には自然治癒力が備わっていて、傷ができるとそれを治そうと修復機能が働きます。肌が傷つくと、肌表面の表皮(の角層)では新陳代謝であるターンオーバーが促され、表皮の下にある真皮では、線維芽細胞が活性化します。線維芽細胞は、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの元となる細胞で、生成が促されると、肌にハリやツヤ、弾力などが出やすくなります。
この仕組みを利用してマイクロニードル治療では、肌を傷つけることでダメージを最小限に抑えながら、その再生を促します。
(2)美容成分を浸透しやすくする
毎日のスキンケアで、美容成分がたっぷり含まれた化粧水や美容液を使っている人は多いでしょう。しかし、バリア機能が備わっているため、美容成分は簡単に肌の奥には侵入できません。特に分子量が2000を超えるコラーゲンやヒアルロン酸などは、そのまま塗っても角層を通過することができません。そこで、マイクロニードルを使って肌に小さな孔(あな)を開けると、有効成分が肌の奥まで届きやすくなります。
マイクロニードルコスメとマイクロニードル治療の違い
マイクロニードルは化粧品業界でも注目され、最近では美容液やクリーム、マイクロニードルがついたパッチ(シート)など、様々な商品が販売されています。またエステサロンでも、「エステ版ダーマペン」と呼ばれるマイクロニードルによる施術が行われています。これらと、美容皮膚科のマイクロニードル治療の違いは以下です。
〇アプローチできる場所
肌は外側から表皮、真皮、皮下組織という3層構造をしています。このうち表皮はさらに角層、顆粒層、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層の4つに分かれています。化粧品でアプローチできるのは、一番外側の角層のみです。これに対して美容皮膚科の施術では、真皮までアプローチすることができます。マイクロニードルによって真皮の線維芽細胞が直接刺激されると、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの生成が促されます。
〇期待できる効果
マイクロニードルコスメはあくまでも化粧品です。化粧品には、症状を改善する効果は期待できません。化粧品の説明をよく読むと分かりますが、「美容成分を角層に直接届ける」といったことは書かれていても、何らかの症状を改善する効果は謳われていません。これに対し、美容皮膚科では症状の改善を目的に施術を行います。
〇使用する美容成分
美容皮膚科のマイクロニードル治療では、使用できる薬剤が豊富です。化粧品やエステと比べて高濃度で浸透率が高いため、マイクロニードルと併せるとより効果を実感しやすくなります。
美容皮膚科で受けられるマイクロニードルの施術例
美容皮膚科で受けられるマイクロニードルを使った施術の一例をご紹介します。
〇ダーマペン4
超極細の針が16本付いたペン型の装置を使い、皮膚に微小な孔を開け、肌の再生を促す施術法です。針の刺激によって線維芽細胞が活性化されるため、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などが増生され、小じわやくすみ、ニキビ痕、毛穴の開きなどの改善が期待できます。さらに、他の施術を組み合わせることで、美容効果をいっそう高めることができます。
〇ウーバーピール
ダーマペン4とピーリングを組み合わせた治療です。ダーマペン4で小さな孔を開け、マンデル酸や乳酸、コウジ酸、ヒアルロン酸などの美肌成分を配合した薬剤を浸透させます。角質ケア効果や、美白効果が期待できる薬剤を使用するため、ニキビ、ニキビ痕の赤みや色素沈着などに悩んでいる人におすすめです。
〇ヴェルベットスキン
ダーマペン4とコラーゲンピールを組み合わせた治療法です。コラーゲンピールは、「PRX-T33」というピーリング剤を塗布する施術です。PRX-T33には、コラーゲンの生成を促すトリクロロ酢酸、美白効果のあるコウジ酸、抗炎症作用のある低濃度過酸化水素などが配合されています。ダーマペン4と組み合わせることで小じわやたるみ毛穴、シミやくすみ、ニキビ痕の色素沈着などを改善したり、ハリやツヤをアップさせたりする効果が期待できます。
美容皮膚科でマイクロニードル治療を受ける際の注意点
マイクロニードル治療を受ける前に知っておくべき注意点をご説明します。
〇痛み
髪の毛よりも細い針を使用するため、注射に比べると痛みは少ないでしょう。ただし、痛みの感じ方には個人差があり、施術中にチクチクとした痛みを感じる人もいます。
クリニックでは麻酔クリームが用意されています。痛みを感じることに抵抗のある方や初めてマイクロニードル治療を受ける人は事前に相談してみてください。また、施術後に赤みやヒリヒリ感が出てくることがあります。徐々に治まっていくものですが、長く続くような場合は主治医に相談しましょう。
〇ダウンタイム
マイクロニードルは副作用のリスクが少なく、ダウンタイムも比較的短い施術です。それでも、赤みや皮むけなどの症状が現れることはあります。赤みやほてりなどの症状は2~3日ほどで、内出血や乾燥感は10日ほどで治まっていきます。また、施術後1~2日ほどすると皮むけが現れ、目立たなくなるまでには10日ほどかかります。
〇治療を受けられない人
金属アレルギーがある人は、マイクロニードル治療を受けられません。また、妊娠中や授乳中の人、皮膚炎のある人、ケロイド体質の人、施術部位に傷や炎症の強いニキビがある人、麻酔や使用する薬剤にアレルギーのある人も受けられないため、注意しましょう。さらに、持病によっては治療を受けられない可能性もあるため、既往歴を正しく伝えることも重要です。
なお、痛みやダウンタイムの長さは、使用する針の深さによっても異なります。ダーマペン4は針の深さを調節できますが、肌の奥にアプローチするほどリスクが高くなります。効果やリスクを踏まえて主治医と相談しましょう。
マイクロニードル治療に興味のある人は皮膚科で相談を
今回はマイクロニードルについてご紹介しました。美容皮膚科のマイクロニードル治療は、幅広い悩みに効果を期待できる施術法です。興味のある人は美容皮膚科で相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- マイクロニードルは1mm未満の細い針で、美容の世界で活用されている
- 美容皮膚科で行われているマイクロニードル治療は、マイクロニードルを肌に刺し、極小の孔を開ける施術
- マイクロニードル治療は、肌の自然治癒力を高めて再生を促し、線維芽細胞を活性化させてコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の生成を促すことができる
- マイクロニードルで肌に孔を開けることで、その後に使用する薬剤の浸透を助けることができる
- マイクロニードルは化粧品やエステでも用いられているが、アプローチできる場所や効果、美容成分などが美容皮膚科の施術とは異なる
- 美容皮膚科で行われるマイクロニードル治療には、ダーマペン4、ウーバーピール、ヴェルベットスキンなどがある
- マイクロニードル治療は副作用やダウンタイムが少ないが、注意点もあるため、事前に確認しておくこと