皮膚科で受ける「高濃度ビタミンC点滴」とは?免疫力アップやエイジングケアなど注目の効果を徹底解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

ビタミンCは美容や健康の維持には欠かせませんが、日本人が不足しがちな栄養素の一つです。では、どうすれば効率よくビタミンCを摂取できるのでしょうか。そこで、ビタミンCの働きや摂取方法についてご紹介します。さらに、皮膚科で受けられる「高濃度ビタミンC点滴」についても詳しく解説します。

ビタミンCはなぜ重要?

ビタミンCは水溶性ビタミンの一種です。私たちが生きていく上で欠かせない5大栄養素の一つ「ビタミン」の仲間ですが、その重要性や効果をしっかり理解している人は少ないかもしれません。そこでまずは、ビタミンCの働きをご紹介します。

〇酸化を抑える働き(抗酸化作用)

ビタミンCには体内で発生した活性酸素を抑える働きがあります。活性酸素は体内の細胞にダメージを与え、細胞の老化を引き起こす物質です。肌のコンディションを悪化させるだけでなく、病気の原因にもなることが知られています。ビタミンCはこのような有害な活性酸素を抑制することで、エイジングケアや病気の予防に役立つと考えられています。

〇コラーゲンの合成を促進する働き

ビタミンCには、肌に潤いやハリを与えるコラーゲンの合成を促進する働きがあります。コラーゲンは美しい肌を作る他、丈夫な骨や筋肉を作るためにも必要な成分です。私たちの身体を若々しく保つにはコラーゲンが必要不可欠です。ビタミンCにはそんなコラーゲンの合成をサポートする作用があり、身体を若々しく保つことに役立ちます。

〇メラニンの生成を抑える働き

ビタミンCには、メラニンの生成を抑制して、シミをできにくくする働きがあります。また、すでに生成されたメラニンの色を薄くする働き(還元作用)もあるため、シミの改善にも効果があると考えられています。透明感のあるみずみずしい肌のキープに欠かせない栄養素の一つと言えるでしょう。

〇鉄分の吸収をサポートする働き

ビタミンCには、主に植物性食品(野菜、穀類、海藻、キノコ、果物など)に含まれる鉄分の吸収をサポートする働きがあります。鉄分は血液を作るのに必要な栄養素であり、不足すると貧血を引き起こします。動悸、めまい、息切れなどの貧血症状に悩んでいる人は、ビタミンCが不足している可能性があります。特に女性は鉄欠乏性貧血になりやすいため、鉄分だけではなくビタミンCの不足にも注意が必要です。

〇免疫機能を助ける働き

ビタミンCには、血液細胞の働きをサポートする作用があることが報告されています(※)。血液細胞とは、ウイルスや細菌といった病原体と闘う白血球やリンパ球のことで、これらにはビタミンCが多く含まれています。つまり、ビタミンCは、病原体から身体を守るためにも必要な栄養素ということです。
※1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/87/9/87_KJ00008828840/_pdf/-char/ja

ビタミンCを摂取する方法

ビタミンCは水溶性のため、一度に多くの量を摂取しても時間が経過すると尿として排出されてしまいます。そのため、こまめに必要な量を摂取することが必要です。
ビタミンCの主な摂取方法は、次の3つです。

〇食事から摂取する

ビタミンCはオレンジやレモンなどの柑橘類や、キウイなどのフルーツ、ピーマンやブロッコリーなどの野菜に多く含まれています。十分な量のビタミンCを摂取するには、これらの食材をうまく取り入れることが大切です。ただし、ビタミンCは熱に弱い性質があるため、料理方法にも注意しましょう。

〇サプリメントを利用する

栄養バランスの摂れた食事が難しい人は、サプリメントで補うことも一つの方法です。サプリメントの中には、一日に必要なビタミンCが含まれている商品が多く、手軽に不足分を摂取することができます。ただし、ビタミンCを過剰に摂取すると、下痢や吐き気などの消化器症状などを引き起こすことがあるため、サプリメントを摂取する場合は、摂取量を必ず守るようにしましょう。

〇「高濃度ビタミンC点滴」を受ける

近年、不足しがちなビタミンCを効率よく摂取する方法として、美容皮膚科などで受けられる高濃度ビタミンC点滴が注目されています。高濃度ビタミンC点滴は、吸収率が高いのが特徴です。食事やサプリメントによる補給では到達できない濃度のビタミンCを体内に行き渡らせることができるため、一般的な摂取方法よりも高い美容・健康効果が期待できるとされています。特に、エイジングケア、疲労回復、免疫機能向上などの効果を早く実感しやすく、昨今、多くの人が施術を受けています。

では、そんな高濃度ビタミンC点滴にはどのような特徴や注意点があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

高濃度ビタミンC点滴とは?期待できる効果は?

美容クリニックなどで受けられる高濃度ビタミンC点滴では、6~50g程度のビタミンCを一度に投与することが可能です。一般的なサプリメントに含まれるビタミンCは1g程度であるため、はるかに多くのビタミンCを一度に取り入れることができます。また、ビタミンCを直接血液中に取り込むため、吸収率が高く、効果を実感しやすくなると考えられています。
高濃度ビタミンCは高い抗酸化作用があり、次の効果が期待できます。

〇エイジングケア

高濃度ビタミンCによる強力な抗酸化作用によって活性酸素が抑制されることで、肌の老化を抑えることができると考えられています。また、メラニンを還元して生成を抑えるためシミやくすみの改善や、肌の保水力を促進しつつ、皮脂の分泌を抑制するので、お肌のトラブル改善にも効果的です。その他、骨や筋肉を丈夫にする効果も期待でき、全身のエイジングケアをサポートします。

〇疲労回復

高濃度ビタミンCにはエネルギー代謝をサポートする働きがあり、慢性的な疲労を軽減する効果が期待できます。忙しい毎日を送っていても、十分に休養する時間が取れない人などに特におすすめです。

〇免疫機能向上

高濃度ビタミンCは免疫機能を向上させ、感染症を予防したり回復を早めたりする効果があることが報告されています。ストレスなどが溜まると免疫機能が低下しやすいため、疲れやすい人やストレスフルな人には、疲労回復効果もある高濃度ビタミンCが有用です。

高濃度ビタミンC点滴:施術の流れ

高濃度ビタミンC点滴は皮膚科などの医療機関で施術を受けることができます。以下で、施術に関する情報をご紹介します。

〇施術の流れ

実施する医療機関によって異なりますが、まずは医師や看護師などによるカウンセリングや診療を行い、健康状態などをチェックします。その結果から個々の状態に合ったビタミンC濃度を決めるのが一般的な流れです。

〇所要時間

高濃度ビタミンCは腕の血管から点滴します。血管への刺激を抑えるためゆっくりと投与しますが、30分から1時間程度で完了することがほとんどです。
施術中でも、点滴をしている腕以外は動かすことができるため、スマホチェックや読書などをしてリラックスして過ごせます。

〇痛みの有無

点滴の針を刺す時に軽い痛みを感じることはあります。濃度が高いため稀に、点滴中に腕が重いような鈍い痛み(血管痛)が起きる場合があります。

〇ダウンタイム

高濃度ビタミンC点滴にはダウンタイムはありません。点滴をした部位に軽度な皮下出血や腫れが生じることはありますが、施術後は通常の生活が可能です。

〇効果の持続期間

高濃度ビタミンC点滴の効果持続期間は個人差もありますが、数日から1週間程度とされています。美容や健康を維持するためには、月に1~2回程度の定期的な施術が必要です。

高濃度ビタミンC点滴を受ける時の注意点

高濃度ビタミンC点滴の施術を受ける際には、次の2点に注意が必要です。

〇施術を受けられない人がいる

腎機能障害、心不全、強いむくみ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症がある人は、高濃度ビタミンC点滴を受けることができません。また、妊娠中や授乳中の人は医療機関によって施術を受けられない場合があります。カウンセリングや診療時には正確に既往歴や現病歴、今ある症状などを医師に伝えましょう。

〇副作用が出ることがある

高濃度ビタミンC点滴の副作用は多くありませんが、急速に投与したり、空腹時に点滴をすると一時的に吐き気や気分不快を引き起こす場合があります。また、極めて珍しいケースではありますが、血糖値の低下やアレルギーが生じることもあるため、身体に異常を感じたら、医師や看護師に申し出るようにしましょう。

ここまでビタミンCの働きや高濃度ビタミンC点滴についてご説明しました。不足しがちなビタミンCですが、効率よく摂取することができれば健康管理や美容に役立てることができます。高濃度ビタミンC点滴に興味のある方は、美容皮膚科などで相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ビタミンCには抗酸化作用、コラーゲンの合成促進、メラニンの生成抑制、免疫機能向上、鉄分の吸収サポートなど、美容と健康に良い働きがたくさんある
  • ビタミンCの摂取方法には食事、サプリメント、高濃度ビタミンC点滴がある
  • 高濃度ビタミンC点滴はビタミンC摂取方法の一つで、エイジングケア、疲労回復、免疫機能向上などの効果が期待されている
  • 所要時間は30分~1時間程度
  • 効果の持続期間は1週間程度で、定期的な施術が推奨されている