「汗疱(かんぽう)」とは?原因と治し方、水虫との違いを解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

手のひらや足の裏に、痒みを伴う小さな水ぶくれが繰り返しできて困っていませんか? 湿度の高い季節によく見られるこの症状は、「汗疱(かんぽう)」によるものかもしれません。一見すると「水虫」と似ているため自己判断で対処してしまいがちですが、実は原因も治療法も全く異なります。
この記事では、汗疱とはどのような皮膚トラブルなのかを解説します。原因や自宅でできるケア方法、そして水虫との見分け方についても詳しく説明するため、思い当たる症状に悩む人はぜひ参考にしてみてください。

「汗疱(かんぽう)」とは?

汗疱は、手のひらや足の裏、手や足の指の間に透明で半球状の小さな水ぶくれ(小水疱)が突然できる皮膚の病気です。汗をうまく排出できず、「汗管(かんかん)」という汗の通り道が詰まってしまうことで起こると考えられています。
小さな水ぶくれは、複数個が散らばって現れることもあれば、一ヶ所に集まって現れることもあります。水ぶくれ同士がくっつき、大きな水ぶくれになることも珍しくありません。通常、水ぶくれは2〜3週間で自然に治ることが多いですが、再発を繰り返しやすいのが特徴です。治癒の過程では、水ぶくれが破れた後、乾燥して白い皮膚片となってポロポロと剥がれ落ちていきます。
多くの場合、初夏から夏にかけての汗をかきやすい季節に症状が現れやすく、季節の変わり目に再発を繰り返す傾向があります。
なお、汗疱は細菌やカビが原因ではないため、周囲の人にうつることはありません。

汗疱の主な症状とできやすい部位

汗疱ができやすい部位は、手のひら、足の裏、手足の指の間です。これらの部位に以下のような症状が現れます。

  • 透明で半球状の小さな水ぶくれ(小水疱): サイズは通常1~2mm大ですが、複数個がくっついて大きくなることもあります。
  • 軽い痒み: 軽い痒みを伴うこともあれば、痒みがない場合もあります。
  • 乾燥後の皮膚の皮むけ: 水ぶくれが吸収されたり破れたりした後、薄い皮がむけてきます。

水ぶくれを潰したり掻きむしったりすると、悪化したり細菌感染を引き起こす可能性があるため注意しましょう。特に水ぶくれが破れた後、自分で皮をむしるなどして刺激を与え続けると、患部が湿疹化して、強い痒みや痛みが出る「異汗性湿疹(いかんせいしっしん)」になる場合があります。症状を悪化させないためにも、正しい対処法を知ることが大切です。

汗疱が起こる主な原因

汗疱がなぜ起こるのか、その明確な原因はまだわかっていませんが、次のような要因が複合的に関与していると考えられています。

〇汗をかきやすい体質

汗疱は名前の通り汗と深く関わっていて、汗をかきやすい体質の人は汗疱ができやすい傾向があります。季節の変わり目や夏場の気温・湿度の変化によって汗の量が増えると、汗管が詰まりやすくなり、汗疱が発生・悪化しやすくなります。汗そのものが皮膚への刺激となり、バリア機能の低下を招くことも一因です。

〇アトピー性皮膚炎や金属アレルギー

アトピー性皮膚炎の素因を持つ方は、もともと皮膚のバリア機能が低下しているため、汗疱ができやすいと考えられています。また、特定の物質に対する金属アレルギーも原因となることがあります。アクセサリーや歯科治療の金属、あるいは食品に含まれるニッケルやコバルトなどが体内に吸収されることで、アレルギー反応が起こり、汗疱を発症するケースがあります。

〇ストレスや疲労

精神的・肉体的なストレスや疲労は、身体の免疫バランスを崩し、自律神経の乱れを引き起こします。これにより、汗疱の発症や悪化につながることがあります。

汗疱の治療法

汗疱は自然に治ることもありますが、痒みがひどい場合や症状を繰り返す場合は、皮膚科での治療が大切です。
皮膚科では、まずは汗疱かどうかを確認するために診察や検査を行います。水虫などが疑われる時には、患部の水ぶくれの皮を少量採取し、顕微鏡で白癬菌(水虫の原因菌)などがいないかを確認します。これにより、正確に診断することができます。
汗疱と診断された場合、炎症を抑えるためにステロイド外用薬を塗るのが一般的な治療法です。痒みが強い場合には、痒みを抑えるための抗アレルギー剤を内服することもあります。

日常生活でできる汗疱のセルフケア

汗疱の症状を長引かせないためには、次のような生活習慣を見直すことが重要です。これらは再発予防にも役立ちます。

〇患部を清潔に保ち、保湿する

汗をかいたら清潔なタオルでこまめに拭き取り、患部を清潔に保ちましょう。お風呂上がりはタオルでやさしく水分を拭き取った後、保湿剤を塗布して皮膚のバリア機能をサポートすることが大切です。

〇刺激を避ける

家庭用洗剤に含まれる界面活性剤が皮膚の刺激となり、バリア機能を低下させる原因になることがあります。水仕事をする際は手袋を着用するなどして、直接刺激を与えないように工夫しましょう。

〇汗をかきにくい環境を整える

通気性の良い靴や靴下を選ぶことも大切です。手足が蒸れないようにすると、汗管の詰まりを予防できます。

〇ストレスを溜めない

ストレスや疲労は自律神経を乱し、汗疱を悪化させる一因となります。十分な睡眠時間を確保し、リフレッシュする時間を作ることも、皮膚の健康を保つ上で重要です。

「汗疱」と「水虫」の違いは?自分で見分けることはできる?

汗疱と水虫は症状が似ています。自己判断で市販薬を塗る人もいますが、この二つの病気は、原因も治療法も全く異なります。誤ったケアをしていると、かえって症状を悪化させてしまうため、注意が必要です。
汗疱と水虫の違いを比較してみましょう。

〇主な原因

  • 汗疱:汗やアレルギー、ストレスなど
  • 水虫(白癬):白癬菌(カビの一種)の感染

〇主な症状

  • 汗疱:透明な小さな水ぶくれ、痒み、皮むけ
  • 水虫:強い痒み、ジュクジュク、皮むけ、かかとの角質化、ただれなど

〇治療法

  • 汗疱:ステロイド外用薬、抗アレルギー剤の内服薬など
  • 水虫:抗真菌薬(外用薬・内服薬)

〇感染性(人にうつるか)

  • 汗疱:うつらない
  • 水虫:うつす可能性がある

水虫は白癬菌というカビが原因のため、治療には抗真菌薬が必要です。一方、汗疱は汗が原因の炎症なので、ステロイド外用薬などで炎症を抑える治療が一般的です。
もし汗疱を水虫と勘違いして抗真菌薬を塗ってしまうと、症状が改善しないだけでなく、皮膚がかぶれて悪化する可能性があります。逆に、水虫にステロイドを塗ると、痒みは一時的に治まっても原因である白癬菌が増殖してしまい、症状が広がってしまうリスクがあります。正確な診断と適切な治療のためにも、自己判断はせずに皮膚科を受診しましょう。

まとめ

  • 汗疱とは、手足に小さな水ぶくれができる皮膚疾患
  • 汗をかきやすい体質、アトピー性皮膚炎や金属アレルギー、ストレスなどが汗疱の発症に関与していると考えられている
  • 治療にはステロイド外用薬や抗アレルギー薬が用いられ、水虫との鑑別が重要である
  • 患部の清潔を保つこと、保湿、刺激を与えないこと、汗を抑えるなどの工夫が再発予防に有効である
  • 汗疱と水虫は症状が似ているが、原因も治療法も異なるため皮膚科での正確な診断が必要である