医療コラム
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは?原因・治し方・関節炎との関係を専門家が解説。
手のひらや足の裏に、黄色い膿を持った小さなブツブツが繰り返しできていませんか?これらの症状は、「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という皮膚の病気の可能性があります。人にうつることはありませんが、放置すると悪化したり、関節の痛みを伴う合併症を引き起こすこともあります。この記事では、掌蹠膿疱症の症状、原因、治療法、そして関節炎との関係について詳しく解説します。手のひらや足の裏のブツブツでお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
掌蹠膿疱症(PPP)とは?手のひら・足の裏にできる慢性の皮膚病
「掌蹠膿疱症」とは、手のひらや足の裏に、黄色い膿を持った小さなブツブツ(膿疱)や水疱が繰り返しできる皮膚疾患です。手のひらを意味する「掌(しょう)」、足の裏を意味する「蹠(せき)」に、膿を持ったブツブツができるという意味でこの名前がついています。英語では「palmoplantar pustulosis」と呼ばれ、略して「PPP」と表記されることもあります。
この病気は細菌やウイルスによる感染症ではないため、他人にうつる心配はありません。しかし、一度発症すると、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら長期間にわたって続きます。
掌蹠膿疱症の主な症状
掌蹠膿疱症の主な症状は以下です。
○膿疱(のうほう)
手のひらや足の裏に直径1〜5mmほどの小さな無菌性の膿疱(膿が溜まったブツブツ)が多数できます。水ぶくれのように見えますが、膿が溜まっているのが特徴です。
○痒み
膿疱ができ始める前に、痒みが出てくることがあります。膿疱ができると痒みが治まることが多いです。
○赤み・落屑(らくせつ)
膿疱ができると、その周りの皮膚は赤くなります(紅斑)。そして、次第に膿疱が乾いてかさぶたになり、皮膚が厚く硬くなって剥がれ落ちていきます(落屑)。
○ひび割れと痛み
症状が悪化すると、皮膚が硬くひび割れて、痛みを伴うことがあります。歩行時や手を使う作業でつらい思いをする人も少なくありません。
こうした症状は、主に手のひらや爪、指、足の裏に左右対称に症状が現れますが、片側のみのこともあります。また、足の甲、すね、肘、膝、お尻などにも症状が出る場合があり、「掌蹠外病変(掌蹠外皮疹)」と呼ばれています。
症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的に経過するため、根気よく付き合っていく必要があります。生活の質を保つためには、適切な治療を続けながら、症状をコントロールすることが重要です。
掌蹠膿疱症の主な原因
掌蹠膿疱症の根本的な原因について、まだはっきりとしたことは分かっていません。しかし、発症年齢は30~50代が多く、性別では男性よりも女性のほうが多い、という報告もあります(※1)。
詳しい原因は不明なものの、免疫系の異常が関与していると考えられており、次のような特定の要因が発症の引き金(誘因)になるとされています。
○喫煙
喫煙は、掌蹠膿疱症の発症リスクを大幅に高める重要な要因で、発症者の喫煙率が高いことが知られています。タバコの煙に含まれるニコチンなどが免疫系に影響を与え、皮膚の症状を悪化させることが分かっています。そのため、喫煙者には禁煙が強くすすめられます。
○歯科金属アレルギー
歯の詰め物や被せ物に使われる歯科金属に対するアレルギーが原因で、掌蹠膿疱症を発症するケースがあります。金属アレルギーが疑われる場合はパッチテストなどでアレルギーの有無を確認し、陽性であれば原因となる金属を除去する治療を行います。
○扁桃炎や副鼻腔炎など
扁桃腺や副鼻腔、虫歯などに慢性的な炎症(病巣感染)があると、それが引き金となって掌蹠膿疱症が発症することがあります。掌蹠膿疱症を発症したすべての人に当てはまるわけではありませんが、関連性が高いと考えられています。
その他、ストレス、特定の薬剤、糖尿病なども誘因となる可能性が指摘されています。ただし、一つの要因だけではなく、複数の要因が絡み合って発症することが多いと考えられています。原因を特定し、取り除くことが治療の第一歩となります。
※1:藤城幹山 「第79回日本皮膚科学会東京・東部支部合同学術大会⑧シンポジウム12-1 掌蹠膿疱症の現実~東京医科大学病院の症例統計から~」
https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-160908.pdf
掌蹠膿疱症の治療法
掌蹠膿疱症は根治が難しい病気ですが、適切な治療を継続することで症状をコントロールし、生活の質を向上させることができます。皮膚科で行われる主な治療法を紹介します。
○外用療法(塗り薬)
最も一般的な治療法で、皮膚の炎症を抑え、角化異常(角質を形成するプロセスに異常が生じる状態)を改善するために使用されます。
- ステロイド外用薬:皮膚の炎症を抑える作用があります。症状が強い時期に用いられます。
- ビタミンD3誘導体外用薬:皮膚の細胞の異常な増殖を抑え、正常な状態に戻す働きがあります。長期的な使用に適しています。
○内服療法(飲み薬)
外用療法で効果が不十分な場合や、症状が広範囲に及ぶ場合に行われます。
- エトレチナート(ビタミンA誘導体):皮膚の角化を正常に戻す働きがあります。
- シクロスポリン(免疫抑制剤):免疫系の過剰な反応を抑え、炎症を根本から鎮める効果があります。
- NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬):関節痛がある場合などに用いられ、炎症や痛みを抑えます。
○注射
生物学的製剤を注射して、過剰な免疫の働きを抑える治療法です。掌蹠膿疱症の治療薬として保険適用されたのは2018年で、比較的新しい治療法です。
○光線療法
紫外線を当てて症状の改善を促す治療法です。紫外線には、免疫の働きを抑える作用があり、これを利用して治療を行います。掌蹠膿疱症の治療には、「外用PUVA療法」や「ナローバンドUVB療法」「エキシマライト」「エキシマレーザー」などがあります。
○その他
必要に応じて、根本的な要因(誘因)に対するアプローチが行われます。たとえば、喫煙者に対しては、禁煙指導が行われることがあります。また、慢性的な扁桃炎が疑われる場合、耳鼻咽喉科での扁桃腺摘出術が検討されたり、歯科金属アレルギーが判明した場合は、歯科医と連携して原因となる金属を除去したりします。
このように、掌蹠膿疱症には様々な治療法があります。保険適用外のものもありますが、保険が適用される治療法も多いため、主治医と相談しながら治療方針を決めましょう。
見過ごされがちな合併症「掌蹠膿疱症性関節炎」
掌蹠膿疱症で注意すべき合併症として、「掌蹠膿疱症性関節炎(PAO)」があります。手のひらや足の裏の皮膚症状に加え、関節や骨に痛みを伴う病気です。掌蹠膿疱症患者の約10〜30%がこの関節炎を合併すると言われています(※2)。特に、胸の真ん中にある胸骨や、その両側にある鎖骨・肋骨の関節、仙腸関節(骨盤の関節)、股関節に痛みや腫れが出やすいのが特徴です。皮膚の症状と同時に、あるいは皮膚症状が治まった後に発症することがあります。そのため、単なる肩こりや原因不明の関節痛として見過ごされがちです。
初期にはレントゲン検査でも異常が見られないことがあり、診断が遅れるケースがありますが、掌蹠膿疱症性関節炎を放置すると、関節の変形や破壊が進み、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。関節の痛みやこわばりがある場合は、皮膚の症状が軽くても必ず受診しましょう。
※2:日本皮膚科学会「掌蹠膿疱症診療の手引き 2022」
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/PPP2022.pdf
繰り返しできるブツブツは皮膚科医に相談を
手のひらや足の裏に膿疱が繰り返しできている場合は、皮膚科を受診して相談しましょう。悪化したり関節炎を合併したりすると、日常生活にも支障をきたします。そうなる前に適切な治療を受けて、症状をコントロールしましょう。手のひらや足の裏の症状で悩んでいる人は、ぜひ一度、皮膚科でご相談ください。
まとめ
- 掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に無菌性の膿疱が繰り返しできる慢性の皮膚病で、他人にうつることはない
- 原因は特定されていないが、喫煙や扁桃炎、歯科金属アレルギーなどが誘因となると考えられている
- 主な症状は膿疱、皮膚の赤み、かさぶた、ひび割れなどで、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 治療法は塗り薬や飲み薬、光線療法などがあり、原因となる誘因を取り除くことも重要である
- 掌蹠膿疱症患者の約10~30%が、関節の痛みや腫れを伴う掌蹠膿疱症性関節炎を合併することがある