大人になっていきなり発症?大人と子どものアトピー性皮膚炎について

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)

肌のかゆみや湿疹は、子どもでも大人でもつらいものです。社会人になって肌荒れがひどくなり、ストレスかと思ったらアトピーだった...という人も多いようです。大人と子どものアトピー性皮膚炎についてお伝えします。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、半年以上良くなったり悪くなったりを繰り返し、かゆみや湿疹などの症状を伴ってなかなか治らない、といった特徴を持つ皮膚の病気です。
バリア機能が整っている皮膚であれば、水分の蒸発や外部からの刺激を防いでくれますが、アトピー性皮膚炎の人の肌は皮膚のバリア機能が低下している状態です。
体内の水分が蒸発して肌が乾燥してしまい、ウイルスなどの細菌や摩擦など、外部からの刺激をじかに受けやすくなっているのです。また、ダニや花粉など、アレルギー反応を起こす原因となるアレルゲンも侵入しやすく、食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎を引き起こすケースも見受けられます。
皮膚のバリア機能をみてみると、子どもと大人とでは状態が異なります。

子どものアトピー性皮膚炎の特徴

成長段階のため、どの子どももバリア機能は未熟な状態といえます。保育園や幼稚園に入る前に発症したとしても、年齢が上がるとともに皮膚のバリア機能が向上し、改善していく傾向にあります。統計によると、生後4ヶ月で発症し1歳6ヶ月頃までに改善した子どもは70%ほどいるというデータも示されています。
アトピー性皮膚炎になる主な背景としては「アトピー素因」が指摘されています。アトピー素因とは、家族歴や本人の既往歴として、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎の中の1つ以上がある、または、アレルギー反応が出やすい要因をたくさん持っているという体質をさしています。

大人のアトピー性皮膚炎の特徴

子どもの頃にアトピー性皮膚炎がなくても、大人になってから症状が出る人もいます。社会人になったときや妊娠・出産などの環境の変化、日々の生活習慣やストレス、ホルモンバランスの変化など原因はさまざまです。
日々忙しく仕事をしている社会人は、慢性的にストレスを感じていたり、継続的な通院が難しかったりする状況も考えられます。そのため、症状が良くなったかと思うと悪くなるといった状態を繰り返し、結果として治りにくくなっているケースも多いようです。

アトピー性皮膚炎の症状

「かゆい部分が赤く乾燥している」「かゆみが治まらない」といった症状が出ます。かゆみを伴った湿疹が、顔や手足の関節の内側、首、わきなどにできます。顔の中ではとくに、目・口・耳の周辺などにできます。

肌が乾燥する

皮脂が少なく、角層に十分な水分を保てないため、カサカサして肌が乾いてしまいます。フケが出ているように粉を吹くのも乾燥が原因です。

湿疹ができる

進行していくと紅斑(こうはん)という赤味を帯びたり、丘疹(きゅうしん)という腫れが目立つ湿疹ができたりします。アトピー性皮膚炎では、丘疹は触った感じがブツブツしていてドーム状になっており、左右対称に出ることが多いのが特徴です。

痂疲(かひ)ができる

かゆみを伴うことから患部を掻き壊してしまい、痂疲というかさぶたができます。

受診するタイミングは?

アトピー性皮膚炎かどうかの判断は医師しかできません。
アトピー性皮膚炎と似た湿疹などの症状が出ている場合、免疫不全の病気や膠原病(こうげんびょう)といった自己免疫疾患など、単なる乾燥肌ではない病気の可能性も否めません。自分で判断はしないで、皮膚科を受診しましょう。気になる症状が改善されないようであれば、主治医に相談してみてください。
また、アトピー性皮膚炎はアレルギー反応で悪化していきます。遺伝的な要因だけではなく、食べ物や花粉など、何か環境的な要因によってアレルギーを起こしているかもしれません。それぞれ原因によって対処法も変わりますので、受診して確認しましょう。
つらいかゆみから解放され快適な生活を送るためには、自分の今の健康状態をしっかりと観察することが大切です。生活習慣を見直すきっかけとして、健康診断を受けるというのもひとつの方法です。

日ごろから気をつけることは?

まずはそのとき一番つらい症状に対して対処しましょう。皮膚の炎症が続くと、かゆみも持続します。引っ掻いて炎症がひどくなるとバリア機能がさらに低下して、外からの刺激で悪化に拍車がかかるという悪循環に陥ります。この悪循環を断ち切るためには、早めに炎症を抑えることが必要です。かゆみがある場合は、受診して薬を処方してもらいます。
その上で、日々の生活において次のようなポイントに気をつけましょう。

皮膚の清潔と保湿

かゆみの症状が落ち着いたら、皮膚のバリア機能の維持と向上のために、毎日のスキンケアをしっかりと行ないお肌を改善していきましょう。症状を継続的に抑える対策としては、乾いた状態を防ぎ、潤いを保つスキンケア(清潔と保湿)を行うこと、皮膚への刺激を減らすことが大切です。

バランスのよい食事

皮膚をつくっているのは食事です。間違ったダイエットで不規則な食事制限をすると、ホルモンバランスが崩れてしまいます。栄養バランスのとれた食事をして、規則正しい生活を心がけましょう。

十分な睡眠

良質な睡眠はホルモンバランスを安定させ、肌の健康にも良い影響を与えます。ストレスはかゆみなどの症状を悪化させる可能性がありますが、十分な睡眠はストレスの解消につながります。

環境的な要因の除去

環境的な要因でもっとも身近な場所は、部屋です。部屋にはダニやハウスダストなどがたくさん存在します。これらは皮膚への刺激となり、症状を悪化させる原因となり得るので、日頃からこまめに掃除をして除去しましょう。また、シャワーを浴びて汗やホコリを流し、皮膚に残らないように清潔な状態を心掛けましょう。ただし、必要以上に洗うことは、乾燥を進行させ、バリア機能の低下に繋がるため、注意しましょう。

まとめ

  • アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気
  • アトピー性皮膚炎の皮膚は、バリア機能が低下している状態
  • 「アトピー素因」があると発症しやすい
  • 子どものアトピー性皮膚炎は、成長とともにバリア機能が発達して改善することが多い
  • 大人になってから発症する場合は慢性化する傾向にある
  • 症状としては、かゆみや赤み、乾燥、湿疹や痂疲(かひ)などがある
  • アトピー性皮膚炎かどうかは自己判断せず、医師の診断を受けることが必要
  • 症状がある場合は、まず炎症を抑えることが大切
  • 日常的に気をつけることは、皮膚の清潔と保湿、バランスのよい食事、十分な睡眠、環境的な要因の除去