秋冬の乾燥は油断大敵!季節に合わせた保湿ケアでお肌を守ろう

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

真夏の日差しが落ち着いたからといって、スキンケアの手を抜いていませんか?実は、秋から冬にかけては乾燥しやすくお肌にとって油断大敵。季節に合わせた保湿ケアを心がけることで、未来の肌の状態が変わってきます。この時季に改めて見直したい、適切な保湿ケアについてご説明します。

秋~冬は肌トラブルが目立ちやすい季節

ジリジリと日差しが照りつける夏。そのような時季は、たいていの人が紫外線のダメージを気にして、念入りなUV対策や美白ケアを行っていると思います。ところが、秋~冬になると一転、「もう大丈夫。スキンケアはほどほどに」という気持ちになる人が多いようです。しかし、油断は禁物です。いくら過ごしやすい季節でも、空気の乾燥が強まる秋冬は、肌トラブルが目立ちやすくなります。なぜなら、秋や冬に近づくほど、湿度とともに気温も低下します。冷えは血液の巡りを悪くして、肌の新陳代謝である「ターンオーバー」がうまく機能しない原因にもなります。暖房を使い始めると室内はさらに乾き、肌は乾燥にさらされます。そこに、夏場に蓄積された紫外線のダメージなども加わります。「女性は夏に5歳老ける」と言われるほど、夏に肌が受ける影響は大きく、秋や冬になるとそれが表面化してくるのです。ですから、秋冬にどのようなお手入れをするかによって、肌年齢やお肌のコンディションは大きく変わってきます。

秋冬に気になるお肌の症状

それでは、実際にはどのような症状が目立つようになるのか見ていきましょう。

(1)シミやくすみ

夏の間に入念なUV対策をしても、紫外線の強いダメージは見えないところで着実に肌に蓄積されています。さらに、朝晩の気温差が大きい秋口になると、冷えや疲れなども加わってターンオーバーが乱れます。そして、メラニンがうまく排泄されず、シミやそばかすとなって現れるようになるのです。また、肌の透明感が失われ、ワントーン暗くなるなど、くすみが気になることもあります。

(2)肌の乾燥やごわつき

気温が下がってくると、汗や皮脂の分泌量は減少します。すると、健康な肌に欠かせない皮脂膜が十分に作られず、目元や口元、頬などのかさつきや、ごわつきが気になるようになります。肌に白い粉がふいたようになる、ファンデーションがよれる・だまになる、といったお悩みも肌の乾燥が原因です。こうした症状を放置しておくと、本格的に乾燥する冬には、より深刻な状態に陥ってしまいます。

(3)ハリの低下、しわ、たるみ

紫外線による悪影響はシミやくすみに限られません。肌の奥深くにまで届く紫外線は、内部にあるコラーゲンなどの組織にもダメージを与えます。その結果、肌のハリや弾力が低下して、しわやたるみが気になってくることもあります。

スキンケアの要は「保湿」

夏に浴びた紫外線によるダメージを最小限に押さえ、乾燥による肌トラブルを予防するために何よりも大切なポイントは「保湿」です。空気が乾燥すると、肌の角質に含まれる水分も蒸発しやすくなります。肌のうるおいが失われると、バリア機能が低下して肌荒れが起こる、ターンオーバーが乱れてシミやくすみが目立つなどの症状が現れ、肌の老化がより進むことになります。とは言え、肌を保湿するために、たっぷりの化粧水をつける、長時間シートマスクをするなど、やみくもなスキンケアはご法度です。間違った保湿ケアを続けていると、肌はいっそう乾燥してトラブルを招きやすくなります。

なんとなく...の保湿ケアを見直そう

私たちの肌には、もともと必要な水分をキープするための仕組みが備わっています。しかし、その機能は年齢やさまざまなダメージによって低下していきます。この現象をカバーすることが、保湿の本当の目的です。
保湿には「まず化粧水!」と思われやすいのですが、化粧水をつけて肌がしっとりした状態になっても、それは応急処置にすぎません。乳液やクリームをつけても時間が経つにつれて肌がカサカサするのは、十分な保湿ができていない証と言えます。
そこで、うるおいを保つ鍵となるのは、肌の角層にあるセラミドなどの角質細胞間脂質です。セラミドは細胞のすき間で水分を挟み込み、角層の水分を守っています。赤ちゃんの肌がプルプルしているのは、大人よりもセラミドの量が豊富だからです。残念ながら、加齢とともにセラミドは減少しますが、化粧品で補うことができます。本来の保湿という観点からは、セラミドなど保湿効果を期待できる成分が含まれる美容液や乳液などを、毎日のスキンケアに取り入れると良いでしょう。

保湿ケアにも要注意

セラミド配合などの化粧品を取り入れたらもう安心、というわけではありません。日々のスキンケアにちょっとした間違いがあって、知らず知らずのうちにかえって肌を乾燥させているかもしれません。たとえば、次のような誤ったケアをしていませんか?

〇肌の汚れを落とすために、洗顔時は強い力でこする、長い時間をかける

このような洗い方は肌に負担をかけ、乾燥を招いてしまいます。洗顔料はよく泡立て、優しく丁寧に洗いましょう。

〇化粧水を浸透させるために、コットンで強くパッティングする

洗顔後はタオルでそっと水分を拭き取り、化粧水をなじませます。このとき、コットンで強くパッティングするのは肌の刺激になります。角層が傷つくと、肌のうるおいが蒸発しやすくなり、外からの刺激を受けやすくなるなど、肌の乾燥につながります。ですから、化粧水は手でそっとつけましょう。

〇ニキビが気になるオイリーな肌なので、美容液や乳液などは使わずに、化粧水だけで済ませている

秋~冬はとくに肌が乾燥しやすい季節です。化粧水を使わないことで乾燥が進めば、これを防ごうとして必要以上に皮脂が分泌されます。そうすると、水分や油分のバランスが崩れて逆にテカリが目立つ可能性が考えられます。また、肌の乾燥は角層のバリア機能を低下させることがありますので、ニキビなどの肌トラブルも起こりやすくなります。こうしたトラブルを防ぐ意味でも、化粧水の後は保湿効果の高い成分を含む美容液を顔全体に塗り、乳液やクリームで油分を補いましょう。

〇秋になったので、UV対策は行わない

涼しくなったからといって、UV対策を怠るのは禁物です。紫外線は365日、雨の日や室内にいる時でも肌に届き、少しずつダメージを与えています。日焼け止めは毎日欠かさず使いましょう。

スキンケアはとにかく優しく、丁寧に行うことがポイントです。毎日のスキンケアをトータルで見直して、保湿ケアを徹底しましょう。

生活習慣を見直し、ときにはスペシャルケアも取り入れて

秋冬の乾燥からお肌を守るためには保湿ケアが第一ですが、それだけでは理想の美肌に近づくことはできません。毎日の生活習慣も見直しましょう。
とくに重要なのは、皮膚や身体を作る食事です。1日3食、バランスの良い食事を心がけることはもちろん、肌が潤う食材を意識して取り入れましょう。乾燥が気になる季節に積極的に補給したい栄養素は、ビタミン類です。なかでもレバーや緑黄色野菜などに多く含まれるビタミンAは、ターンオーバーを整え、健やかな肌の再生をサポートしてくれます。また、冷えによる血行不良は、代謝を悪くしてターンオーバーが乱れ、乾燥を進めてしまう悪影響をもたらします。身体を温める生姜やネギなどの食材や、血行を促す働きを持つ鉄分などを意識して摂りましょう。
また、食事と同じくらい大切にしたい要素は睡眠です。睡眠時間の不足や就寝時間がまちまち、といった生活習慣では、体内時計が乱れてしまいます。続けていると、肌の再生に重要な役割を果たす成長ホルモンの分泌が阻害されることも。睡眠は、毎日6時間以上確保するように心がけましょう。
しかし、適切なスキンケアに加えて生活習慣の見直しを行っても、乾燥が気になり、肌に赤みや痛みが生じているようなケースでは、皮膚科などで相談してみましょう。乾燥による皮膚炎が起こっている可能性も考えられ、治療が必要かもしれません。また、ときにはケミカルピーリングやイオン導入やケアシスなど、美容医療によるケアを取り入れることによって、肌の状態の改善が期待できる場合もあります。さまざまなアプローチを想定しつつ、秋の乾燥から肌を守りましょう。

まとめ

  • 湿度や気温が低下する秋は、乾燥による肌トラブルや夏のダメージがでやすい
  • 秋冬に保湿ケアを徹底することが、その先の肌の状態を左右する
  • 肌の潤いを守るためには、保湿効果をもつ成分が含まれる化粧品を取り入れると良い
  • 洗顔から保湿、UV対策まで、トータルでスキンケアを見直すことが大切
  • 健やかな肌を保つためには、食事や睡眠など、生活習慣の見直しも重要
  • 乾燥の症状が強い場合は皮膚科などに相談し、ケアを取り入れることも方法の一つ