肌のハリ・ツヤを取り戻したい方に...皮膚科で受けられるケミカルピーリングとは?

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

多くの女性が憧れる、ハリ・ツヤがあって、なめらかでシミのない肌。そんな理想の肌に近づく方法の一つに、ケミカルピーリングがあります。美容皮膚科やエステティックサロンなどでも受けられますが、実際にはどのような施術なのでしょうか?今回は、皮膚科で受けられるケミカルピーリングについて解説します。

ケミカルピーリングの基本情報

ケミカルピーリングは、化学薬品を皮膚に塗って皮膚の表面をはがすことにより、皮膚の再生を促す治療法です。ニキビや色素異常の治療のほか、くすみやシミ、小じわの改善といった美容目的の施術としても用いられています。より詳しく理解するために、皮膚の構造について簡単にご説明しましょう。
ヒトの皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織という3層構造をしていて、一番外側の表皮はさらにいくつもの層が重なり合ってできています。表皮の奥(基底層)で作られた新しい皮膚組織は、表皮の表面(角質層)まで押し上げられて角質となり、最終的には垢となってはがれ落ちます。この現象は「ターンオーバー」と呼ばれる、いわば皮膚の新陳代謝です。健康な肌は、およそ28日周期でターンオーバーが繰り返されています。しかし、ホルモンバランスの乱れや加齢などによって、ターンオーバーが乱れる場合があります。そうすると、古い角質が皮膚の表面に残ってシミやくすみを招いたり、毛穴をふさいでニキビの原因になったりします。皮膚の表面が硬くなり、ごわつくこともあります。ケミカルピーリングは、薬剤によって皮膚表面に残る古い角質を除去し、皮膚の再生を促して、こうした肌トラブルを改善しようという治療法なのです。

ケミカルピーリングの効果

ケミカルピーリングに効果が期待できるといわれている肌の状態は、ニキビ、シミ、小じわの3つです。
たとえば、ニキビでは毛穴のつまりの改善や、毛穴に溜まった膿を外に出して症状を改善する、といった効果が実証されています。シミでは、とくに長年紫外線を浴び続けたことが原因で現れる、光老化によるシミには効果が期待できます。さらに、ケミカルピーリングによって表皮や真皮の浅い部分の皮膚が再生されると、小じわが薄くなる、きめが整う、といった作用も期待できますが、深いしわまでは改善できません。

ケミカルピーリングで使用される薬剤

ケミカルピーリングで使用する薬剤は、皮膚の状態や目的とする効果などに応じて変わってきます。薬剤には、グリコール酸や乳酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸(TCA)などがあり、それぞれ作用(剥離深度など)やメリット、デメリットが異なります。また、同じ薬剤でも、濃度の調整によって、皮膚のより浅い部分だけを剥離させる、もしくは表皮よりさらに深い真皮まで剥離させることもできます。さらに、複数の薬剤を組み合わせて使うこともあります。日本では安全性の配慮から、一般的に浅い層にだけ届く20~35%グリコール酸や乳酸、サリチル酸マクロゴールなどが使われています。

ケミカルピーリング:施術の流れ

実際の施術では、顔の余分な脂を取った後、顔に薬剤を塗布します。この時、薬剤の種類にもよりますが、ヒリヒリとした刺激を感じることや赤みが出ることがありますので、そうした反応を見ながら進めていきます。その後薬剤をふき取り(必要がない薬剤もある)、流水で流して顔を冷やします。顔を冷やす手段として、パックなどを用いる場合もあります。
時間はおよそ30分ほどですが、1回の施術で目に見えるような効果を得るのは難しいため、一定の期間(2週間~1か月ほど)をあけて数回繰り返します。必要な回数は個人差や目的によって変わります。たとえば、ニキビの改善を目的とする場合は、3~5回ほど繰り返すことで、効果を実感できるとされています。

ケミカルピーリングを受ける際の注意点

前述のとおり、ケミカルピーリングは、施術中に痛みを伴うことがあります。痛みが強い場合は我慢せず、医師や看護師に申し出ましょう。また、一時的に施術後の皮膚にかさぶたができる可能性についても、想定しておきましょう。施術後は紫外線の影響を受けやすいため、日焼け止めを塗ること(サリチル酸マクロゴールの場合は紫外線吸収剤を含まないもの)、施術後数日~1週間程度は角質を剥離するような施術を受けないことなど、注意点もいくつかあります。施術後の肌トラブルを避けるためにも、事前にしっかり確認して確実に守るようにしましょう。

施術を受けられないケース

妊娠中の人や日焼けをしている人、皮膚にやけどや傷、炎症がある人などは施術を受けることができません。また、サリチル酸マクロゴールを使用する場合は、アスピリンアレルギーを持っている人やアスピリン喘息を患っている人には、施術ができないこともあります。ですから、施術前の問診では、既往歴などについて医師に正確に伝えてください。

皮膚科とエステティックサロンで受けられるピーリングの違い

ケミカルピーリングは、皮膚科以外に、エステティックサロンでも受けられますが、施術の目的には違いがあります。皮膚科などの医療機関では、美容目的のほか、治療行為として見なされますので、顔以外への施術も可能です。一方、エステティックサロンでは、肌に透明感を持たせる、化粧ノリをよくするといった、美容目的に限って施術を行うことができ、使用できる薬剤も制限されます。
シミやしわへの効果からエステサロンでも人気が高いピーリングですが、経験の浅い施術者が安易に行うと皮膚トラブルを引き起こす可能性も考えられます。こうしたリスクを回避するためにも、施術を希望している人は、皮膚科など信頼のおける医療機関で受けることをおすすめします。

進化するケミカルピーリング

ニキビやシミ、小じわの改善に効果が期待できるケミカルピーリングですが、最近では研究が進み、より副作用が出にくい方法も登場しています。また、ヒアルロン酸や亜鉛などを配合し、トータルなアンチエイジング効果を期待できる方法もあります。さらに、美容皮膚科などでは、他の施術方法との組み合わせも可能です。これによって、ピーリング治療の効果を一層高め、ハリやツヤのある肌を目指すこともできるようになってきています。ただし、こうした美容目的の施術は、保険が適用されません。ですから、自分の理想とする肌の状態や安全性、費用などを含め、医師に相談をしながら、最適な方法を検討するとよいでしょう。

まとめ

  • ケミカルピーリングは、皮膚に専用の薬剤を塗って皮膚の表面をはがし、皮膚を再生させる治療法である
  • ケミカルピーリングは、ニキビやシミ、小じわの改善に効果が期待できる
  • ケミカルピーリングで使用される薬剤は複数あるが、安全性などの点から日本ではグリコール酸や乳酸、サリチル酸マクロゴールが使われることが多い
  • ケミカルピーリング(サリチル酸)では、薬剤を塗布して時間を置いた後、流水で流して顔を冷やす
  • 施術にかかる時間は30分程度だが、1回の施術では効果が現れないので、期間をあけて複数回繰り返す必要がある
  • ケミカルピーリングは施術中に痛みを伴うことや、施術後にかさぶたができることもある
  • 施術後は、日焼け止めを塗ること、一定期間は角質をはがすような施術を避けることなど、いくつかの注意点があるので、しっかりと確認して厳守する
  • 妊娠中の人や日焼けをしている人、皮膚に傷ややけどがある人などは施術を受けられない
  • エステティックサロンでも施術を受けられるが、皮膚トラブルを避けるためには、皮膚科で医師に相談する方法をおすすめする
  • ケミカルピーリングも進化し、副作用が出にくく、ハリやツヤを目指せるさまざまな方法が登場している
  • 他の施術と組み合わせることで、より高い効果を期待できるが、保険適用外になるので、目的や安全性はもちろん、費用も含めて医師に相談しながらよりよい方法を検討するとよい