そのほくろ、取ったほうがいいかも?位置・大きさなどの検討基準とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

皮膚がんの一種である「メラノーマ」。とくに初期のうちは、ほくろのように見えることも多く、見過ごされがちです。けれどもメラノーマはれっきとしたがんであり、悪化すると、他の場所に転移する可能性もあります。そうならないためにも、ほくろとメラノーマの特徴や見分け方などについて、お伝えしていきます。

ほくろとメラノーマ

ほくろ(黒子)は皮膚にできる黒色・褐色の色素斑や塊(腫瘤;しゅりゅう)のことで、専門的には「母斑細胞母斑(あるいは色素細胞母斑、色素性母斑)」といいます。皮膚の母斑細胞が異常に増殖することによってできるものですが、良性で基本的には身体に害はありません。
ほくろの多くは後天的に発生し、幼少期から増えはじめ、20~30代にピークを迎えます。また、いぼ状の形のものから平滑なものまであり、大きさは直径1.5cm以下(ほとんどが5mm以下)です。ほくろより大きい直径1.5cm~20cmの母斑は、「黒あざ」と呼ばれます。
一方でメラノーマ(悪性黒色腫)は、母斑細胞が悪性に変化して増殖したもので、皮膚がんの一種です。初期には黒っぽい斑点として発生することが多く、ほくろとの見分けがつきにくいですが、徐々に悪性化した細胞が増殖していき、しこり(結節)やびらん、潰瘍(表皮や真皮の欠損)ができることがあります。メラノーマの発症率は10万人に1~2人と高くはありませんが、この30年間で増加しています。
メラノーマにはどんな特徴があるのか、次から詳しくみていきましょう。

タイプ別!メラノーマができやすい場所

メラノーマは、大きく4つのタイプに分類されています。タイプ別の特徴や発生しやすい場所をみていきましょう。

○末端黒子型

日本人に多いタイプで、手のひら、足の裏、手や足の爪などにできます。はじめに黒っぽいシミが発生し、徐々に色が濃くなったり大きくなっていきます。爪にできる場合は、黒っぽい縦線が爪に入り、それが爪全体、あるいは爪の周りにまでに拡がることもあります。

○表在拡大型

身体の中心部(背中、胸、お腹など)や、手足のつけ根などに発生します。盛り上がることは少なく、皮膚表面(表皮)に拡がっていきます。この頃、日本人の間で増加しています。

○結節型

しこりのような塊が大きくなるタイプで、全身のあらゆる場所に発生します。

○悪性黒子型

首や顔、手の甲といった日光が当たる場所に発生します。はじめは黒っぽい色素斑として発生しますが、だんだん濃い黒色が混ざって大きくなっていき、部分的に硬くなることもあります。高齢者に多いタイプです。

メラノーマの原因

メラノーマの原因として、次のような要因があげられます。

  • 人種:黒人にくらべて、白人のほうがリスクは高いです。
  • 紫外線:日焼けの回数が多いと、リスクが高くなることがわかっています。ただし、末端黒子型については紫外線の影響が少なく、衣服や靴などの摩擦といった機械的ストレスとの関連が指摘されています。
  • 免疫抑制:臓器移植患者、悪性リンパ腫患者、HIV患者などは、それ以外の人に比べて、発症しやすいことがわかっています。

このほか、外傷や「先天性巨大色素性母斑」も、メラノーマのリスクとして知られています。先天性巨大色素性母斑とは、先天性の黒あざの中でもとくに大きく、成人になった時点で直径が20cm以上になることが予想されるものを指します。先天性巨大色素性母斑がある人はメラノーマのリスクが高く、2万人に1人の確率で発生するという指摘があります。

ほくろとメラノーマを見分ける方法

ほくろと早期のメラノーマは、見た目が似ていますが早期のメラノーマには次のような特徴があるといわれています。

  • Asymmetry(非対称):左右非対称の形をしている。
  • Border(境界、輪郭):ギザギザとした輪郭で、形が整っていない。あるいは、色がにじみ出ている。
  • Color(色):色むらがある。
  • Diameter(大きさ、直径):直径が6mm以上である。

以上の特徴は、頭文字をとって「ABCD診断基準」などと呼ばれています。これらのポイントの中でとくに注意したいのが、短期間のうちに現れる大きさや色、形などの変化です。1~2年のうちに、色や大きさ、形などに変化がみられる場合は、メラノーマの可能性が考えられますから、皮膚科を受診するようにしましょう。
またここであげたように、早期のメラノーマにはいろいろな特徴がありますが、一般の人がほくろとメラノーマの違いを見極めることは簡単ではありません。ですから、心配な症状があるときには、まずは皮膚科を受診しましょう。あわせて、定期的に全身のほくろをチェックして、大きな変化がないか確認することも重要です。

メラノーマの診断

メラノーマを診断する際に、「ダーモスコピー検査」が行われることがあります。これは「ダーモスコープ」という拡大鏡を用いて行う検査で、皮膚の状態を詳しく診ることができます。メラノーマの早期発見に有効な検査法として知られていますが、医療機関によっては実施していないところもあります。検査を受けたい場合は事前に確認しておきましょう。

メラノーマの治療

メラノーマと診断されると、レントゲンやCT検査などを行い、がんのステージやそれに合わせた治療方針を決定していきます。がんの治療法というと抗がん剤治療や放射線治療が有名ですが、メラノーマに対する治療効果は低いことがわかっています。そのため、手術はもっとも有効性のある治療法になります。手術というと怖いイメージがある人もいると思いますが、早期に発見できれば、簡単にがん細胞を切除でき、後遺症の心配もありません。反対に、がんが進行したりほかの場所に転移すると、手術の範囲が広くなったり、化学療法などを並行して行う必要が出てきます。ですから、できるだけ早く病院に行くことが大切です。

気になるほくろがある人は

ほくろが気になるからといって、かきむしる、いじる、傷つけるといったことは、絶対にやめましょう。メラノーマは早期に発見・治療することで、身体への負担を最小限にとどめることができます。気になるほくろがある場合には、まずは皮膚科を受診しましょう。

まとめ

  • ほくろは、皮膚にできる黒色・褐色の色素斑や塊のことで、専門的には「母斑細胞母斑」という
  • ほくろは母斑細胞が増殖することで発生するが、良性である
  • ほくろの大きさは1.5cm以下で、ほとんどが5mm以下
  • ほくろより大きいものは黒あざと呼ばれる
  • メラノーマは、母斑細胞が悪性へと変化・増殖したもので、皮膚がんの一種
  • メラノーマは、4つのタイプに分けられている
  • 末端黒子型は日本人に多く、手のひら、足の裏、足・手の爪などに発生
  • 表在拡大型は身体の中心部(背中、胸、お腹など)や、できやすい場所は手足のつけ根など
  • 結節型はしこりのようなものができるタイプで、全身に発生
  • 悪性黒子型は、日光が当たる部分にできやすく、だんだんと色が濃くなって、大きくなる
  • メラノーマの要因として、人種、紫外線、免疫抑制、外傷、先天性巨大色素性母斑があげられる
  • 早期のメラノーマを見極める方法として、「ABCD診断基準」があるが、一般の人が見分けるのは難しいので、皮膚科を受診することが必要
  • 皮膚科ではダーモスコピー検査が行われることがあり、メラノーマと診断された場合は、さらに詳しい検査を行う
  • 治療では、手術がもっとも有効
  • メラノーマは早期発見・治療が重要
  • 気になるほくろがあっても絶対にいじったり傷つけたりしないこと