医療コラム
ひどい手荒れを治したい!予防とケアのご紹介
手荒れと聞くと、秋や冬の悩みというイメージを持っている人は多いかもしれません。けれども最近では感染症対策のために、手洗いをする回数が増加していることから季節に関係なく、手荒れに悩む人が増えてきているようです。また、特殊な薬剤などを取り扱う理・美容業界や手指を消毒する機会が多い医療の現場などでは、「手荒れは職業病」ともいわれています。では、ひどい手荒れはどうすればよくなるのでしょうか。今回は予防法とケアについてご紹介します。
くり返すひどい手荒れは手湿疹かも
手や指がカサカサしたり赤くなる手荒れは、おもに外部の刺激から皮膚を守るバリア機能が低下することで起こります。とくに皮膚が乾燥する秋や冬になると、症状の現れる人が増えてきます。軽度の手荒れであれば、市販のハンドクリームを塗るなどの対処法で改善することも多いのですが、悪化するとひび割れができる、小さな水ぶくれができる、かゆみや痛みを伴う、皮がめくれるといった症状が現れたり、こうした症状を繰り返すようになります。これは「手湿疹」と呼ばれる状態で、セルフケアでは改善しにくく、皮膚科での治療が必要になります。
ひどい手荒れ:手は荒れやすい場所
お伝えしたように、手荒れや手湿疹になるのは皮膚のバリア機能が低下することが大きな原因です。皮膚のバリア機能には、外部の刺激から皮膚を守るとともに、体内の水分が過剰に出ていくことを防ぐ役割があります。ところが、何らかの原因でこのバリア機能が低下すると外部からの刺激を受けやすくなり、赤みやかさつき、ひび割れなどの症状が現れるようになります。
中でも、手はバリア機能が低下しやすい場所です。バリア機能を支える仕組みには、皮膚表面を覆う皮脂膜によるものと、角質に含まれる細胞間脂質によるものとがあります。このうち皮脂膜は、皮脂腺から分泌される皮脂などによってできています。ところが、この皮脂腺は手のひらにはありません。また、手の甲には皮脂腺があるものの、顔などに比べて少ないことがわかっています。ですから、手はもともと皮脂が少なく、皮脂膜も作られにくい場所なのです。加えて、手洗いや水仕事などによっても手の皮脂が洗い流されてしまうことから、バリア機能が低下しやすく、手荒れが起きやすい場所といえるのです。
ひどい手荒れ:症状が出やすい人とは
多くの人を悩ませる手荒れですが、とくに手荒れのリスクが高いのは次のような人です。
〇水仕事が多い人
先にも述べたように、水仕事が多いと皮脂が流されやすいため、手荒れが起きやすくなります。手湿疹は女性に多いといわれますが、これは水仕事を行うことが多いためといわれています。そのため、手湿疹は「主婦湿疹」とも呼ばれています。たとえば台所周りの仕事では、流水によってバリア機能が低下することに加えて、洗剤などの刺激が加わることで手湿疹を引き起こします。
このほか、仕事で水に触れる機会が多い人も、手荒れや手湿疹のリスクが高いといえます。とくに理容師や美容師は、シャンプーやカラー剤など化学物質に触れる機会が多いこともあって、手荒れに悩まされる人がかなり多いといわれています。
〇手を洗う機会が多い人
医療従事者など手洗いや手指の消毒を頻繁に行う人は、手荒れや手湿疹の症状が出やすくなります。とくにアルコール消毒をすると手の必要な水分までがアルコールと一緒に蒸発してしまうため、バリア機能の低下を招きやすく、手荒れの原因となります。最近では医療従事者のみならず、一般の人も感染症予防のために手洗いや手指を消毒する機会が増えていることから、手荒れで悩む人も増えている、ともいわれています。
〇アレルギーやアトピー性皮膚炎の人
特定の化学物質やたんぱく質などがアレルゲン(アレルギーの原因物質)となり、手荒れを引きおこすことがあります。アレルギーによる手荒れは特定の物質に触れることが原因なので、症状を防ぐためには原因物質を避けて生活することが必要になります。また、アトピー性皮膚炎の人はバリア機能が低下しやすい素因を持っていることから、手荒れが悪化するリスクが高いといわれています。
〇そのほか
パソコンのキーボードを使う、ピアノを弾く、紙や段ボールを扱うなどの機械的な刺激も、手荒れの原因になります。
手荒れの予防法とケア
軽度の手荒れであれば、セルフケアで改善することができます。たとえば、市販のハンドクリームや保湿剤などはこまめに塗ることでバリア機能の回復に役立ちます。ですから、手洗いやアルコール消毒の後にはハンドクリームなどを塗る習慣をつけるとよいでしょう。また、購入する際はセラミドなどの保湿成分が含まれていて、アルコールや香料などが添加されていないものがおすすめです。たとえば、ドラッグストアなどで購入できるワセリンもよいでしょう。
このほか、日常生活では次のことに気をつけてみてください。
- 熱いお湯で手洗いや水仕事を行うと必要な皮脂まで流されてしまうため、水またはぬるま湯で手を洗う
- 手洗いの際は、流水でしっかりとすすぎ、石けんが残らないようにする
- 手洗い後は、ゴシゴシと拭かず、優しく、押さえ拭きをする
- 水仕事を行う際は、キッチングローブなどの手袋を使う(ただし、かぶれなどの症状が出る場合には控えること)
ひどい手荒れ:病院での治療法
ここまで手荒れのケアや予防法をご紹介しましたが、症状が悪化すると、セルフケアでは太刀打ちできなくなります。そうなると、皮膚科での治療が必要です。
皮膚科では、手湿疹の原因や症状の程度に合わせて治療を行います。たとえば、症状が軽い場合には、保湿剤などを処方して経過をみることがあります。一方で、炎症をともなう場合にはステロイド外用薬を使ったり、かゆみがある場合には抗ヒスタミン薬などの内服薬を併用します。より詳しい検査(パッチテスト、プリックテストなど)を行った上で治療法を検討することもあります。
ひどい手荒れ:悪化する前に皮膚科の受診を
「たかが手荒れ」と思っている人もいるかもしれません。けれども、手は身体の中でも日常生活にとくに大きな影響を与えるため、悪化すると生活の質(QOL;Quality of Life)の低下を招くことがあります。そうならないためにも、手荒れに悩んでいる人は必ず皮膚科で治療を受けるようにしましょう。
まとめ
- 手荒れは、外部の刺激から皮膚を守るバリア機能が低下することがおもな原因
- 手荒れが悪化した状態は「手湿疹」と呼ばれ、ひび割れ、水ぶくれ、かゆみや痛み、皮がめくれるといった症状が現れる
- 手湿疹は皮膚科での治療が必要
- 皮脂が少ない手は、バリア機能が低下しやすい場所で、手荒れが起きやすい
- 手荒れや手湿疹が起きやすいのは、水仕事が多い人、手を洗うことが多い人、アレルギーやアトピー性皮膚炎の人で、職業では、理・美容師、医療従事者、パソコンのキーボードを使う仕事、紙や段ボールを扱う仕事などに多い
- 軽度の手荒れなら、ハンドクリームや保湿剤をこまめに塗る、手洗いや水仕事の際は熱いお湯を使わない、手洗い時は流水でしっかりとすすぐ、手を拭くときは押さえ拭きをする、水仕事のときはグローブを使うなどを心がける
- ひどい手荒れの場合には皮膚科の受診が必要
- 皮膚科では、原因や症状に合わせて外用薬や内服薬などによる治療が行われる