Vビームレーザーの治療範囲について解説。保険適用での治療も可能?

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「Vビームレーザー」は、「血管腫」の代表的な治療法ですが、最近は、美容目的で用いられることも増えてきています。たとえば、たるみやシワへの効果も期待することができますが、治療の目的によって保険適用になる場合とならない場合とがあるので、注意が必要です。そこで、Vビームレーザーの治療範囲や、費用などについて、解説していきましょう。

Vビームレーザーによる皮膚疾患の治療

Vビームレーザーは、赤血球の成分である「ヘモグロビン」に反応する色素レーザーで、血管腫の代表的な治療法です。血管腫とは、皮膚の血管が奇形を起こしたり、異常に増殖してできた良性の腫瘍のことで、一般的には「赤あざ」と呼ばれています。
血管腫にはいくつかのタイプがあり、自然に目立たなくなるものもあります。けれども、中には消えずに残ってしまったり、どんどん大きくなるものもあります。お伝えしたように、良性の腫瘍なので大きな心配はいりませんが、見た目上の問題から、治療を希望する人が多くいます。その際に行われる治療法の一つが、Vビームレーザーです。健康な皮膚へのダメージを抑えながら、腫瘍にアプローチできるため、Vビームレーザーは今や血管腫治療の主要な治療法とされています。
このほか、「毛細血管拡張症」といって、皮膚表面(表皮)の血管が異常に拡がってしまい、顔などが紅斑して見えてしまう病気の治療にも、Vビームレーザーが用いられています。

Vビームレーザーの特徴

一般的にレーザー治療では、アプローチしたい組織にレーザーを照射して刺激することで、症状を改善していきます。たとえば、加齢にともなうシミ(老人性色素斑)の場合には、表皮に潜むメラニン色素に向けてレーザーを照射し、シミを薄くしていきます。これに対して血管腫を治療する場合には、腫瘍(血管)内のヘモグロビンにレーザーを照射していきます。ヘモグロビンがレーザーの熱を吸収すると、異常に増えた血管が破壊され、血管腫が目立たなくなっていくのです。とくに、最新のVビームレーザー機器である「VbeamⅡ」は、ヘモグロビンにもっとも吸収されやすい波長(595ナノメートル)のレーザーを照射することができます。さらにVbeamⅡには、表皮の健康な組織を守る目的で、冷却機能なども搭載されていて、安全性においても高い評価を受けています。
ところで、冒頭でお伝えしたように、Vビームレーザーは、たるみやシワなどの改善にも、用いられるようになってきています。どんな治療が可能なのか、詳しくみていきましょう。

Vビームレーザーで美容のお悩みも解決!?

VbeamⅡはヘモグロビンに吸収されやすい波長のレーザーを発することができますが、設定を変えると、美容目的での治療に用いることも可能です。たとえば、コラーゲンなどの元になる線維芽細胞を活性化させて、お肌のハリをアップさせます。これによって、たるみやしわの改善も期待できます。また、赤ら顔やニキビ痕の赤みの治療にも有効です。さらに、レーザーの照射範囲が小さいことから、目の周りにも照射することが可能で、目元の小じわの改善を目的に用いることもできます。

Vビームレーザー:治療の流れと注意点

ここで、実際の治療の流れや注意点などについて確認しておきましょう。

〇治療前

カウンセリングや医師による診察を行い、照射範囲などを相談します。また、禁忌に該当していないかどうかも、確認します。たとえば、ひどい日焼けをしている人や、妊娠中、授乳中の人は受けることができません。

〇治療中

医師の診察が終わったら、レーザーを照射していきます。治療中はゴムではじいたような痛みを伴うことがあります。ご希望があれば麻酔クリームや麻酔テープのご用意もございますので、痛みに弱い人は、医療スタッフに相談しておきましょう。治療にかかる時間は照射範囲にもよりますが、たとえば、血管腫の治療では5~15分ほどです。一方、美容目的で顔全体に照射する場合には、30分ほどかかることがあります。

〇治療後

治療後は、ヒリヒリとした痛みや赤み、腫れが続いたり、治療部位が黒っぽくなったり、水泡やかさぶたができる人もいます。とくに血管腫などの治療の場合は、治療直後から内出血のような斑点(紫斑)ができることもありますが、1~2週間で徐々に薄くなっていきます。また、美容目的の治療の場合には、軽い腫れや赤みが続きますが、数日から1週間程で落ち着いていきます。このほか、まれではありますが、色素沈着ややけどを起こすこともあります。
なお、治療後からメイクをすることは可能です。

Vビームレーザーの料金と保険適用

血管腫の治療からシワやシミの改善まで、幅広い症状に対応することができるVビームレーザーですが、治療の目的によって、保険適用になる場合と、ならない場合とがあります。保険適用になるのは、血管腫と毛細血管拡張症など、皮膚疾患の治癒を目的とした場合で、1回あたりの料金は3割負担で6500円ほどです(照射範囲が10㎠以下の場合)。一方でシワ、たるみ、ニキビ痕の赤み、赤ら顔などの改善など、美容目的の治療に関しては、保険が適用されません。実際の料金はクリニックによって異なりますので、問い合わせてみてください。なお、Vビームレーザーに限ったことではありませんが、1回の治療で劇的な効果を実感することは難しいため、期間を空けながら、5~10回の通院が必要になります。治療の目的や肌の状態によっても、必要な回数は変わってくるため、その点も事前に確認しましょう。

まとめ

  • Vビームレーザーは、赤血球の成分である「ヘモグロビン」に反応する色素レーザー
  • Vビームレーザーは、血管腫の代表的な治療法
  • 血管腫とは、皮膚の血管が奇形を起こしたり、異常に増殖してできた良性の腫瘍のことで、一般的には「赤あざ」とよばれている
  • Vビームレーザーは、毛細血管拡張症の治療にも用いられる
  • 血管腫の治療では、腫瘍(血管)内のヘモグロビンにVビームレーザーを照射して、異常に増えた血管を破壊する
  • 最新のVbeamⅡは、血管腫の治療に最適な波長のレーザーを照射することが可能
  • VbeamⅡは、表皮の健康な組織を守る目的で、冷却機能なども搭載されていて、安全性でも評価が高い
  • VbeamⅡの設定を変えると、たるみやしわ、赤ら顔、ニキビ痕の赤み、目元のクマ、小じわなどにもアプローチができる
  • 治療中は軽い痛みを伴うことがある
  • 治療後は、紫斑ができたり、軽い腫れや赤みが残ることがあるが、徐々に落ち着いていく
  • Vビームレーザーが保険適用になるのは、皮膚疾患の治癒を目的としたもので、美容目的の場合は、保険適用外になる
  • 必要な治療回数は、肌の状態や目的によっても変わるので事前に確認すること