巻き爪は皮膚科で診療可能? テーピング方法や爪の切り方などのセルフケア方法を解説します

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

爪が変形し、歩くときに痛みを生じることもある巻き爪。自己流のケアを続けていると、症状が悪化してしまうことがあります。そこで、正しいセルフケア方法や病院で受けられる治療法を解説します。

巻き爪とは

巻き爪は、その名の通り、爪が内側に巻き込んでしまう病気です。足の親指に生じることが一般的ですが、ほかの指で起こることもあります。巻き爪の中でも典型的なのは、爪の両端がアルファベットの「C」のようにくるっと巻き込むタイプです。ほかには、一方の端だけが巻き込んでしまうものや、全体的に丸くなってしまうもの、爪の角が直角に強く折れ曲がるものなど、さまざまなタイプがあります。

巻き爪の原因

巻き爪の原因として、おもに次のようなものが挙げられます。

〇誤った爪の切り方

深爪をすると、爪の縁が内向きになりやすく、爪が伸びてきた時に指の皮膚に当たってしまいます。すると爪の正しい成長が阻害されて、曲がってしまうのです。また、「バイアスカット」といって、爪の両側の角を斜めに切る方法も、爪が内向きに巻いてしまうため、おすすめできません。

〇靴などによる圧迫

締めつけの強い靴や靴下を長時間履いたり、ハイヒールなど先端のとがった靴を履き続けていると、爪が常に押されている状態になり、皮膚を挟みこむように巻いてしまいます。

○運動不足など

健康な爪は滑らかなカーブを描いています。この形は、皮膚のほうに向かって巻こうとする爪の力と、歩行などの際に加わる指の力とが、バランスよく拮抗することで保たれています。寝たきりや運動不足などで足を使う機会が減ると、指から爪に向かって加わる力よりも爪の巻こうとする力が上回ってしまうため、結果として巻き爪になることがあります。

〇足の変形

足の変形として代表的な外反母趾は、足の親指の関節が外側に飛びだし、小指の方向に曲がってくるものです。その状態が悪化すると、爪は指の横からの圧力を受けやすくなります。すると、皮膚が爪に被さるように厚くなり、爪自体も押されて内側に巻いてしまいます。

このような原因が一つないし複数、日常的に生じることで、巻き爪が起こってしまうのです。

巻き爪は放っておいても大丈夫?

普段は気になる症状がなくても、長時間歩いた時や運動した時などに痛みが生じる場合は要注意です。放っておくと、巻き爪の先が周りの皮膚に食い込んで炎症や出血を起こす「陥入爪(かんにゅうそう)」の状態になってしまうことがあるからです。さらに陥入爪が慢性化すると、爪があたる部分の皮膚組織が分厚くなって、爪がより変形したり、感染を起こすこともあります。このような状態が続くと、歩きづらくなるなど、日常生活にも支障をきたします。さらに、痛みをかばおうとして無理な姿勢をとることが増えるので、膝や腰の痛みなど、さまざまな場所に不調が出やすくなります。
では、巻き爪を予防するためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

巻き爪の予防

まず最も大事なのは、爪を正しく切ること。とくに深爪しないことが重要です。巻き爪に気づいたり、痛みが生じてくると、多くの人は爪を切って対処しようとします。皮膚に食い込んだ爪を切ると、たしかに一時的には痛みが和らぐのですが、爪が伸びてきた時に症状がさらにひどくなって、悪循環に陥る可能性があります。また、家庭用の爪切りで無理に切ると、出血したり、そこから感染するなど、さらなるトラブルを招きかねません。
トラブルのない爪を目指すために推奨される切り方は、「スクエアカット」です。まず爪をまっすぐに切り、両端の角を少し丸めるように整えていきます。爪切りである程度切ってから、爪やすりで整えてもよいでしょう。刃先にカーブのある爪切りは深爪になりやすいため、ストレートのものか、ニッパー型爪切りもおすすめです。個人差はありますが、目安としては1ヶ月に1回程度の頻度で、指の先端と同じか、やや長いくらいに整えましょう。
また、巻き爪を予防するためには、足に合う靴を履くことも大切です。靴選びではデザインが重視されがちですが、痛みが出て不自然な歩き方になるようでは本末転倒です。サイズを測定してもらったり、試し履きするなどして、足に負担がかからない靴を選ぶようにしましょう。

巻き爪のセルフケア

巻き爪が軽度の場合は、応急処置としてセルフケアで対処することもできます。爪先が2mm程度あれば、脱脂綿などを小さく丸め、爪と皮膚の間に挟むと、痛みが和らぎます。また爪先が1mm程度しかない場合は、テーピングも有効です。次の手順で行ってみてください。

  1. (1)布絆創膏やテーピング用のテープを5〜6cmくらいにカットし、爪の横ギリギリに貼ります。
  2. (2)爪と皮膚の間を広げるように意識して、強く引っ張りながら、指の腹を通して反対側へとテープを回し、指の上に斜めに回しながら引っ張って貼ります。
  3. (3)同じように、指の反対側からも貼ります。

こうすることで、爪の食い込みが緩和し、痛みを和らげることができるでしょう。

巻き爪の治療法

このような予防法やセルフケアを実践していても、巻き爪がよくならない場合は、我慢せずに、医療機関を受診しましょう。皮膚科やフットケア外来などで、治療を受けることが可能です。
たとえば、巻き爪の部分が赤く腫れ炎症を起こしていたり、痛みが強い場合は、抗生物質の飲み薬や塗り薬を使って症状を抑えます。また、巻き爪そのものの治療法としては、爪を斜めに切り、食い込んだ部分を除去する「爪甲除去術」や、爪甲除去術を行ったのち、食い込んだ部分の爪を生えないように処理する日帰り手術もあります。これは「フェノール法」と呼ばれていて、事前に血液検査などの準備をした上で行われます。どちらも局所麻酔が必要で、その際に多少の痛みはありますが、手術自体は大きな苦痛を伴うものではありません。(保険適応)
さらに最近では、超弾性のワイヤーやクリップなどを使って、爪がまっすぐ生えるように矯正する治療法も登場しています。1〜2年程度の時間はかかりますが、痛みの少ない治療法で、爪が伸びるに連れて少しずつ巻き爪が改善されていきます。(自費診療)
このような治療法の選択肢は医療機関によっても異なるため、巻き爪に悩まされている場合は、まずは皮膚科などで相談してみましょう。テーピングなどのセルフケアも、専門家の指導を受けて実践すると、より高い効果を得られます。自己判断で様子を見るのではなく、正しいケアを行うことが巻き爪改善への近道です。

まとめ

  • 巻き爪は爪の変形の中でも代表的な疾患で、爪が内側に巻き込んでしまうものである
  • 原因としては、深爪や外からの圧迫、足の変形、などが挙げられる
  • 悪化すると痛みが生じたり、陥入爪の状態になって炎症を起こすこともある
  • 巻き爪を予防するためには、深爪に注意し、足に合う靴を選ぶことが重要
  • 軽度の場合は、テーピングなどのセルフケアでも痛みを緩和できる
  • 巻き爪は、皮膚科などで治療を受けることが可能
  • 病院の治療には、症状に合わせた薬の処方や日帰り手術、矯正治療などの選択肢がある
  • 巻き爪の誤ったケアは症状の悪化につながるため、専門家に相談することが重要