その症状は帯状疱疹?帯状疱疹の症状についてと疑いがあるときしてはいけないこととは

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

「身体の一部がなぜか痛い」「思い当たることがないのに赤いブツブツができた」このような症状が出たら、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」かもしれません。帯状疱疹は放っておくと、重症化したり、他の人にうつしてしまったりする可能性があります。そこで、帯状疱疹が疑われるときにしてはいけないことを確認しておきましょう。

帯状疱疹とは?

帯状疱疹は、身体の一部分、おもに左右のどちらかに痛みが出た後に、ポツポツとした赤い斑点と小さな水ぶくれができる皮膚の病気です。症状が帯状(おびじょう)に現れることから、このような名前で呼ばれています。
帯状疱疹の原因となるのは、水ぼうそうと同じ「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」です。多くの場合、子どもの頃にはじめてこのウイルスに感染すると、水ぼうそうを発症します。水ぼうそうが治ると「ウイルスがいなくなった」と思われがちですが、実は「神経節」と呼ばれる、脊髄からでる部分に潜んでいます。ふだんは悪さをすることはありませんが、加齢や免疫力の低下、疲れなどの要因が重なると増殖し始め、神経で炎症が起こると帯状疱疹を発症します。つまり、水ぼうそうの経験がある人なら、誰でも帯状疱疹を発症し得るということです。一般的には高齢になるほど免疫力が落ちるので、ウイルスが再活性化しやすくなります。

帯状疱疹の症状はさまざま

帯状疱疹の特徴は、皮膚の症状が出るよりも前に、患部に痛みや違和感が出ることです。「前駆痛(ぜんくつう)」と呼ばれる痛みが数日〜1週間ほど続いた後、赤い小さな発疹が出るのが一般的なパターンです。ただし、前駆痛の程度は人によってさまざま。ピリピリ、ビリビリする痛みや、刺すような痛みが出る人もいれば、重苦しいズーンとした痛みが出る人もいます。あるいは、かゆみやモゾモゾとした違和感程度で、気がつかない場合もあります。前駆痛の後、赤い発疹が現れると、さらに痛みは強くなります(急性痛)。
また、皮膚の症状も時間とともに変化します。はじめに虫刺されのような小さな赤い発疹が数個集まって現れた後、徐々に水ぶくれとなります。4〜5日経つと透明の水ぶくれが黄色い膿疱(のうほう)に変わり、6〜8日経つとそれがやぶれて、ただれや潰瘍のようになります。最終的に乾くとかさぶたになりますが、個人差も大きくあります。
また、帯状疱疹は全身のどこにでもできる可能性がありますが、とくに多いのは胸や顔です。一般的には身体の左右どちらかだけに出ることがほとんどですが、まれに全身に発疹が広がったり、複数の場所にできたりすることもあります。

帯状疱疹は免疫力低下のサイン 重症化に気をつけて

治療の基本は、抗ウイルス薬の内服です。早めに発見し、すぐに抗ウイルス薬を飲みはじめれば、10日間ほどで治ることがほとんどです。また、気づくのが遅れて自然治癒の経過をたどったとしても、3週間程度で症状は落ち着きます。
ただし、高齢の場合や、免疫力がとくに低下している場合にはよりいっそうの注意が必要です。というのも、重症化すると、症状が広範囲に及んで入院治療が必要になることがあるからです。また、糖尿病やがんなど、免疫力の低下する病気が原因で帯状疱疹を発症している可能性もあり、そのような場合には原因となる病気の治療も必要になります。

帯状疱疹の治療が遅れると、合併症や後遺症の可能性も

さらに、治療の開始が遅れると合併症を引き起こしたり、後遺症が残ったりすることもあります。たとえば、頭部から顔面に症状が出ている場合、角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などの目の病気を発症することがあり、重症化すると失明に至ることもあります。ほかに、顔面神経麻痺などを引きおこす「ラムゼイ・ハント症候群」も帯状疱疹の合併症の一つです。この病気にかかると、耳の神経に影響を及ぼして難聴やめまいなどの症状が現れることもあります。
また、後遺症としては「帯状疱疹後神経痛」が有名です。帯状疱疹が発生してから3か月以上、痛みが続くもので、長いと治るまでに数年かかることもあります。帯状疱疹の痛みとはやや異なり、"うずくような痛み"や"電気が走るような痛み"などと表現されることがあります。また、神経がダメージを受けているため皮膚に違和感が残りやすくなり、感覚が鈍くなったように感じる人がいます。
このような合併症や後遺症を避けるためにも、帯状疱疹を早期に発見し、すぐに治療を受けることが重要です。

帯状疱疹が疑われるときの注意点

前駆痛には個人差があり、はじめにできる小さな赤いブツブツをかぶれや虫刺されと間違う人もいて、帯状疱疹を発症していることに気がつかないことも珍しくありません。また、単純ヘルペスや「丹毒(たんどく)」などのように、同じような発疹ができる病気もありますが、その違いを素人目で判断することは難しいでしょう。ですから、原因不明の発疹を見つけたときには、早めに皮膚科を受診することが大切です。自己判断で誤ったケアをしたり、放置したりすると、症状が悪化する危険があるので、くれぐれも注意してください。
さらに、帯状疱疹が疑われるときにしてはいけないのは、水ぶくれをつぶすこと。つぶすと細菌感染を起こし、悪化する可能性があります。病院では、たまっている膿を出すために、処置としてつぶすことがありますが、自分で触るのは厳禁と心得ましょう。
また、他の人にうつって帯状疱疹を発症させることはないものの、水ぼうそうを経験していない人が帯状疱疹のウイルスに感染すると、水ぼうそうを発症してしまいます。そのため、帯状疱疹が疑われる時、水ぼうそうを発症したことのない人がまわりにいる場合には注意しましょう。とくに妊娠中に水ぼうそうにかかると、おなかの赤ちゃんに影響がでてしまう場合があります。疑わしい発疹が出ている1〜2週間は、こうしたリスクのある人には極力近づかないようにし、同居家族がいる場合は、患部に触れるタオルなどは使い分ける、といった対策をとりましょう。
そのほか、顔に帯状疱疹ができた場合は、目にウイルスが付着すると炎症を起こす可能性があります。とくに目の痛みや充血があるときには、コンタクトレンズの使用を控えましょう。

帯状疱疹を発症するのは、身体の免疫が低下し、潜伏していたウイルスが再活性化する時です。その要因となる過労や睡眠不足、過度のストレスなどにも注意し、適度な水分補給やバランスのよい食事などの生活習慣を見直すことも、帯状疱疹が疑われる際には重要です。

まとめ

  • 帯状疱疹は身体の一部分、おもに左右のどちらかに痛みや発疹がでる皮膚の病気である
  • 症状が帯状に現れるため、「帯状疱疹」と呼ばれる
  • 帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスである
  • 水ぼうそう後、潜伏していたウイルスが再び増殖し、炎症を起こすと帯状疱疹を発症する
  • 帯状疱疹の痛みには個人差があるが、一般的に前駆痛のあと、発疹や水ぶくれができる
  • 治療の基本は抗ウイルス薬の内服で、早期に治療を開始すれば10日間ほどで落ち着く
  • 治療が遅れると、重症化したり、合併症、後遺症が残ったりする可能性もある
  • 帯状疱疹が疑われる際は、自己判断で様子をみたりせず、皮膚科を受診することが重要
  • 水ぶくれを自分でつぶすことは、細菌感染を起こす可能性があるので厳禁
  • 水ぼうそう未経験者にウイルスがうつると水ぼうそうを発症する恐れがあり、注意が必要
  • 顔の帯状疱疹が疑われる場合は、コンタクトの使用を控えるほうがよい
  • 免疫力の低下を予防するため、生活習慣を見直すことも大切