乾癬とアトピーの違いはなに?乾癬の原因や症状、治療方法もご紹介

執筆:南部 ようこ(助産師・看護師)

乳幼児から高齢者まで誰もが発症する可能性のある乾癬。症状や見た目は、人によって様々で、「人に移る」と誤解されやすいのですが、感染する病気ではありません。
一度かかると治ることが難しい乾癬、症状やその見た目はアトピー性皮膚炎とも似ていますが、その違いなども含めて詳しく解説いたします。

乾癬とは

赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層に発症する可能性がありますが、その平均年齢は、40歳弱で、男女比は2対1と男性が多いようです。
発症した時の皮膚の症状や出る場所などは人によって様々なのですが、髪の毛が伸びる時に髪が頭皮を擦る、といったように外部からの刺激を受けやすい場所に出ます。他にも摩擦を受けやすい肘、膝などにも出る傾向があります。
また、一度治ったと思っても同じ場所に症状がでて、何度も繰り返す場合があり、長期的な治療やケアが必要となります。

乾癬の症状と種類

乾癬の特徴的な症状に、「紅斑(こうはん)」「肥厚(ひこう)」「鱗屑(りんせつ)」があり、これが複合的に現れます。それぞれについては下記の通りです。

紅斑:細胞が炎症を起こして⽑細⾎管が拡張し、⽪膚が⾚みを帯びる
肥厚:⽪膚の⾓質が積み重なって、⽪膚表⾯が盛り上がった状態になる
鱗屑:⽪膚表⾯が銀⽩⾊のかさぶたのようになり、最後はポロポロ剥がれ落ちる
無理にはがそうとすると出⾎する。

これら特徴的な症状は共通するのですが、5つのタイプの乾癬にわけられます。

1. 尋常性乾癬
乾癬のほとんどがこのタイプで、上記の典型的な症状がでます。⽪膚が⾚みを帯びた状態になり、⽪膚は厚く積み上がった状態になり、最終的には、ウロコ状態になって剥がれ落ちます。
⽪膚を引っ掻くなどして刺激を与えると症状が出ていなくても、その刺激から新たにそこに発疹が現れたりします。
また⽖にも乾癬の症状がでることがあり、⽖の先が⽩く浮き上がって⾒えたり、凹凸が出てきたりもします。

2. 関節症性乾癬
尋常性乾癬の症状に関節炎の症状が合わさったもので、⼿⾜の関節やアキレス腱、⾜の裏にも腫れやこわばりがでてきます。
通常、関節に症状が出る前、あるいは同時期に乾癬の⽪膚症状が出ますが、まれに関節炎が現れてから⽪膚症状がでることもあります。関節に痛みがでるので、関節リウマチを疑われる場合がありますが、関節リウマチの検査をすると、関節リウマチなのかどうかがハッキリわかります。

3. 膿疱性乾癬
尋常性乾癬の症状にプラスして⽪膚の表⾯にジクジクした⾚い部分ができて、そこに膿の⼊った膿疱という丸い袋が多数できます。ただしこの膿疱には細菌は含まれていません。
急な発熱と⼀緒に膿疱が出る場合などは、⼊院加療が必要な時もあります。

4. 乾癬性紅⽪症
尋常性乾癬が全⾝に広がって⽪膚が⾚くなり、細かいフケのような鱗屑が剥がれ落ちる状態をいいます。
発熱、悪寒、倦怠感が⼀緒にでることが多くあります。
尋常性乾癬の治療ができていない場合や誤った⺠間療法などを⾏ったとき、不適切な治療を⾏ったときなどに発症します。

5. 滴状乾癬
⾵邪や扁桃腺炎などの感染症が誘因となって、0.5〜2㎝の⽔滴のような発疹が全⾝に出ます。若い⼈に多く出ますが、感染症を治療すると症状は治まります。
何度も繰り返して起こり、尋常性乾癬に移⾏することもあります。

乾癬の原因

乾癬の原因は、今のところハッキリとはわかっていません。ただ、遺伝的体質と様々な環境要因が複雑に 影響しあって、免疫のバランス異常が起こり発症するのではないかと考えられています。
乾癬が出ている部位は、⽪膚の表⾯にある⾓質が重なって、その部位だけの⽪膚が厚くなります。これは、その乾癬が出ている部位だけが、通常の10 倍の速さで⽪膚が作られることによるものです。その箇所だけ新陳代謝が活発になり、⽪膚のターンオーバーの異常がおきているのです。
どうしてこのようなことがおきるのかは、まだ⼗分に解明されていませんが、最近の研究では、「⾃⼰免疫反応」が起きているのではないかと指摘されています。
免疫機能というものは、本来⾝体に細菌やウイルスなど異物が体内に⼊りこむのを防ぐシステムです。しかし、この免疫機能に異常が起きると、異物ではなく⾃分⾃⾝を攻撃してしまい、炎症などの症状を引き起こすようになります。これを「⾃⼰免疫反応」といいます。

乾癬とアトピーの違い

乾癬もアトピー性⽪膚炎も、⽪膚が乾燥したり炎症が起きたりして、似ているところがあります。完治が難しいということも共通していることです。
症状や特徴の違いと、共通する点を⾒ていきましょう。

場所:
アトピーは、⽪膚の柔らかい部分に出やすく、顔に出やすい
乾癬は、顔にはあまり出ないが、全⾝のどこにでも出る

症状:
アトピーはかゆみがつよい。掻くことで⽪膚が厚くなって、かさぶたができ、⽪膚が剥げ落ちて、症状を悪化させる。
乾癬は、⼀般的にはあまりかゆみがない。

⾒た⽬:
アトピーは肌荒れの延⻑のようなもの。
乾癬は、⾚く盛り上がっていて鱗屑が出るので普通の⽪膚とは違ってみえる。

乾癬の治療法

乾癬は、完全な治療法はまだ⾒つかっていません。しかし対症療法によって症状のない状態を保つことができます。その時の状態で治療法もかわってくることがあるため、医師とよく相談して、⾃分の状態にあった治療法を⾒つけることが⼤切です。
治療法には、部分的なところに治療を⾏う「局所療法」と、全⾝に向けて⾏う「全⾝療法」があります。
局所療法には外⽤療法、光線療法という治療法が、全⾝療法には内服療法、光線療法の⼀部、注射療法という治療法が⾏われます。

〇外⽤療法

乾癬ができている部位に塗り薬を塗る療法です。主な薬としては以下の通りです。

  • 「副腎⽪質ホルモン(ステロイド)外⽤薬」︓免疫の働きや炎症を抑える
  • 「活性型ビタミンD3 外⽤薬」︓表⽪細胞の異常な増殖を抑える

軟膏・クリーム・ローションなどのタイプがありますから、塗る部位に適したものを選びます。

〇光線療法

紫外線には、免疫の過剰な働きを抑える⼒があります。それを利⽤して患部に紫外線を照射し、改善を促します。⽪疹の範囲に紫外線を照射していきます。
外⽤薬を使⽤しても効果が得られない場合や、患部が全⾝に広がっていて薬を塗るのが⼤変な場合などに⾏います。
通常光線療法は、⼊院するなら週4〜5回、外来通院ならば週2〜3回⾏います。20 回を1クールとして治療していきます。

〇内服療法

乾癬の中でも⽐較的症状が重い場合に⽤いられるもので、飲み薬を服⽤します。塗り薬や光線療法と組み合わせて⾏われることが多いです。飲み薬には免疫の過度な働きを抑える薬や、⾓質細胞の異常な増殖を抑える薬、炎症を抑える薬などが使われます。使われるものは以下の通りです。

  • ビタミンA 誘導体︓表⽪細胞の過度な増殖を抑える
  • 免疫抑制薬︓免疫の過剰な働きを抑える
  • PDCE3 阻害薬︓乾癬による過剰な炎症を抑える

〇注射療法

飲み薬や光線療法であまり改善がみられない場合に⾏われるもので、⽣物学的製剤を使⽤するものです。
炎症を抑えて、⽪膚の新陳代謝の調整を⾏います。
⽣物学的製剤とは、化学的に合成した注射薬ではなく、⽣物が合成するタンパク質を応⽤して作られた治療薬を⾔います。乾癬の原因物質である「サイトカイン」の働きを弱めるものです。
これは、⽇本⽪膚科学会が承認した施設でのみ治療が受けられます。

乾癬の予防法

・保湿
乾癬は、乾燥が⼤敵です。肌の保湿に気を付けてください。特に外出時や⼊浴後、冬場などは念⼊りに保湿を⼼がけましょう。加湿器や保湿剤を利⽤するのもよいですね。

・⽇光浴は適度に
⽇光に含まれる紫外線は、乾癬の炎症を和らげる働きがあります。散歩や⽇光浴で、紫外線を浴びるようにしましょう。ただし⽇焼けや発汗で発疹や痒みがでることがあるので注意が必要です。

・こすらない
乾癬にかかっている⼈が、何も症状がでていない⽪膚を引っ掻いたり、傷つけたりすると、そこに新しい湿疹ができてしまいます。これは「ケブネル現象」とよばれるものですので、かゆみがあっても引っ掻かないようにしましょう。またかゆみがあるときは主治医に相談しましょう。
また⾐服などでこすれたり、傷ができると、悪化させてしまうことになりますので、注意が必要です。

・⽣活習慣の⾒直し
乾癬は睡眠や⾷事、合併症などが⼤きく関わってきます。⽣活習慣の⾒直しには、以下のことから取り組むことが良いでしょう。

  • 睡眠:
    寝不⾜にならないように⼗分に睡眠をとる。
  • ⾷事:
    脂肪分の少ない⾷事を⼼がける。
  • ⼊浴:
    ぬるめのお湯で、体を洗うのにタオルは使⽤せず、⼿で優しく洗う。また、⼊浴には⽪膚を清潔にするだけでなくリラックス効果がある
  • ⾐類:
    化学繊維のものではなく、綿素材のものを着⽤する。フケのようにでるので、⽬⽴たないために⽩っぽいものを選ぶと良い。
  • 運動:
    適度な運動が⼤切。乾癬はメタボを合併しやすい。⽇常に運動を取り⼊れること。
  • タバコ:
    喫煙は症状を悪化させると⾔われているので禁煙するように。
  • 合併症:
    糖尿病、⾼脂⾎症、脂質異常症、感染症などに注意する
  • その他:
    薬などで悪化する可能性があるので、主治医と相談してから服⽤する。飲酒、喫煙、精神的なストレスも悪化させる要因

乾癬は、良くなったり、悪くなったりを繰り返す病気です。
医師と相談しながら、⽇常⽣活でのセルフケアに⼼がけてみましょう。決してあきらめずに⾃分なりの⼯夫や⼼がけで、快適な⽣活を⼿に⼊れることは可能です。

まとめ

  • ⽪膚の病気で、⾚ちゃんから⾼齢者までかかる可能性がある。
  • ⼈体の擦れる場所にできる傾向がある。
  • 完治するのが難しく、何度も繰り返すのが特徴
  • 症状の特徴は、「紅斑(こうはん)」「肥厚(ひこう)」「鱗屑(りんせつ)」である。
  • タイプが5 つあるが、多くは尋常性乾癬である。
  • 原因は、まだ解明されていないが、遺伝的体質と環境的要因が絡み合って⾃⼰免疫反応が起こっていると考えられている。
  • アトピーとの違いは、乾癬はあまり顔にはでない、痒みがない、など。
  • 治療法は、外⽤薬、光線療法、内服、注射、などがある。
  • 予防法は、保湿と⽪膚を擦らないこと。⽣活習慣の⾒直しが⼤事