医療コラム
急な寒暖差で発生するかゆみ。寒冷蕁麻疹の予防と対処法について
突然、皮膚に膨疹(ぼうしん)ができ、かゆみを伴うこともある蕁麻疹(じんましん)。そのきっかけには、寒さや冷えが関わることもあることをご存じでしょうか。急な寒暖差で発症する寒冷蕁麻疹の、予防と対処法についてお伝えします。
蕁麻疹について
はじめに蕁麻疹についてご説明しましょう。蕁麻疹とは、急に皮膚の一部が赤くくっきりと盛り上がった膨疹(ぼうしん)と呼ばれるものができ、しばらくすると消えて元通りになる病気の総称です。多くの場合、かゆみを伴い、チクチクしたり焼けるような感覚を伴うこともあります。
蕁麻疹と言えば、食べ物のアレルギーやウイルス感染、ストレスなどによってでるというイメージがありますが、きっかけはこれらに限りません。寒さや冷たさ、といった寒冷刺激に反応して蕁麻疹がでることもあり、そのケースを「寒冷蕁麻疹」と言います。また、寒冷以外にも、機械的な摩擦や圧迫、温熱、振動、日光といった物理的な刺激で蕁麻疹が起こることも珍しくありません。これらはまとめて「物理性蕁麻疹」と呼ばれます。
その他、入浴や運動などで汗をかいた時に現れる「コリン性蕁麻疹」、鎮痛剤や造影剤といった薬によるものなど、蕁麻疹の種類はさまざまです。また、蕁麻疹の原因が一つではなく、複数関わっていることもあります。
特に原因がわからない蕁麻疹のことを「特発性蕁麻疹」といいます。多くの蕁麻疹は原因不明なので、この特発性蕁麻疹にあたり、急性と慢性に分けられます。
寒冷蕁麻疹の症状
蕁麻疹そのものの症状は、先にお伝えしたように膨疹とかゆみが特徴です。また、寒冷蕁麻疹は、寒暖差や冷えといった刺激を受けた直後〜数十分後に蕁麻疹が現れ膨ます。膨疹のブツブツや赤みは、基本的に数十分〜数時間で消えますが、場合によっては半日〜1日ほど続くこともあります。
寒冷蕁麻疹の現れ方は、大きく2種類、「局所性」のものと「全身性」のものに分けられます。局所性寒冷蕁麻疹は、水や氷を触るなど、冷たい物質に触れた体の一部にのみ症状がでるもので、円形や地図上の膨疹が現れ、多くの場合かゆみや赤みを伴います。一方、全身性寒冷蕁麻疹は、体が冷えることによって全身に症状がでるもので、とくに、腕や足、背中、腹部、首まわりを中心に膨疹と赤みがでます。強いかゆみを伴うケースも多くあります。
寒冷蕁麻疹としてみられる症状は、95%以上が局所性寒冷蕁麻疹と言われていますが、どちらも基本的には、時間の経過と共に消え、跡は残りません。ただし、再度寒冷刺激を受けると、症状が繰り返し現れることもあります。
寒冷蕁麻疹の原因
寒さや冷えによって起こる寒冷蕁麻疹の、具体的なきっかけをみていきましょう。
局所性寒冷蕁麻疹は、寒冷刺激に直接触れることが引き金となります。例えば日常生活の中では、冷たい水で手を洗ったり、氷に触れたり、冷風が直接肌に当たる、といったことがそのきっかけに。また、全身性寒冷蕁麻疹は、全身の冷えによって発症するため、暑い屋外から急にクーラーの効いた部屋に入ったり、プールや川、海などに入る、床を素足で歩く、冷たいものを飲んだり食べたりする、汗をかいた運動後やお風呂上がりに湯冷めをする、といった何気ない行動がきっかけとなります。その中でも、暖かいところから急に冷えたところに移動する、といった寒暖差の大きいタイミングは、症状がでやすくなります。
寒冷蕁麻疹が起こるメカニズムは、まだ明らかになっていませんが、寒冷刺激によって、皮膚の内部でかゆみを招く物質であるヒスタミンが大量に分泌され蕁麻疹が生じると考えられており、何らかのアレルギー反応や免疫反応の異常が関わっているのではないか、と言われています。
寒冷蕁麻疹の対処法
寒冷蕁麻疹の一番の対処法は、「温めること」です。多くの場合、蕁麻疹の症状は時間の経過と共に落ち着きますが、かゆみを我慢するのは辛いもの。症状がでている部分を温めたり、全身が冷えないように気をつけることが大切です。どうしてもかゆみが強い場合は、市販のステロイド外用薬などを用いることも可能です。掻きむしると蕁麻疹が広がったり、悪化してしまうこともあるため注意しましょう。
また、それでも症状がおさまらなかったり、再発を繰り返す場合は、医療機関を受診することがおすすめです。皮膚科では、寒冷刺激が蕁麻疹のきっかけかどうかを診断するために、実際に氷などを肌に当てて症状の出方を確かめる寒冷負荷試験や血液検査が行われることもあります。寒冷蕁麻疹と診断された上で、症状が強いケースでは、抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されることもあります。稀に、蕁麻疹の原因には他の内科的な病気が関わっていることもあるため、自己判断で様子をみず、気になる場合は早めに病院で相談しましょう。
寒冷蕁麻疹を予防するには
寒冷蕁麻疹は、対処法もさることながら、日常生活の中で発症を予防することが肝心です。
まず、季節を問わず体を冷やさないよう意識しましょう。室内でも靴下やスリッパを履いたり、症状がでやすいところがあれば服を重ね着するなど、一年を通して注意が必要です。寒い冬はもちろん、夏場もエアコンの効いた室内では羽織物やレッグウォーマーなどを活用すると効果的です。
また、寒冷蕁麻疹に悩まされている場合、冷たい飲み物や、アイス、かき氷などは出来るだけ避け、飲食するとしても様子をみながら、少量ずつにしましょう。
総じて意識すべきは「寒暖差を作らないこと」です。短時間だからといって薄着で寒い外にでていないか、お風呂上がりに湯冷めしていないか、など、日々の生活の中で、体を冷やしがちなポイントをチェックしてみましょう。
冷えは万病のもと、とも言われます。体の声に耳を傾け、生活習慣を振り返ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 蕁麻疹は、急に皮膚の一部に膨疹ができ、しばらくすると元通りになる病気の総称
- 蕁麻疹は食べ物やウイルスだけでなく、物理的刺激も発症のきっかけとなる
- 寒冷刺激や機会的な圧迫、温熱、振動、日光などで起こる蕁麻疹は物理性蕁麻疹という
- 寒冷蕁麻疹は寒さや冷えがきっかけとなり、膨疹やかゆみの症状がでる
- 症状は刺激を受けた直後〜数十分後に現れるが、ほとんどの場合自然に軽快する
- 寒冷蕁麻疹の症状は「局所性」と「全身性」に分けられる
- 局所性のものは、氷に触れるといった体の一部の冷え、全身性は体全体の冷えがきっかけとなる
- 寒冷蕁麻疹の対処は、症状がでている部分を温め、全身を冷やさないことが肝心
- 症状が強かったり再発を繰り返す場合は、早めに病院を受診することも必要
- 季節を問わず、体を冷やさないよう意識することが、寒冷蕁麻疹の予防につながる