その爪の違和感、もしかして爪水虫?その症状や原因、皮膚科で行う治療について

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

爪の一部が白色や褐色に変色していたり、分厚くボロボロになっていたり、いつもと違う違和感に気づいたことはありませんか?その症状は、もしかすると爪水虫かもしれません。10人に1人が感染したことがあるとも言われる爪水虫の症状や原因、治療についてお伝えします。

足の水虫を放っておくと「爪水虫」に

水虫は一般的に、足の指と指の間などに発症する病気、というイメージがありますが、実は、悪化すると爪にまで広がってしまいます。まずは水虫のメカニズムから説明しましょう。
水虫は、白癬菌(はくせんきん)というカビが、皮膚に感染することで発症する病気で、医学的には「白癬」と言います。白癬菌は、手や腕など、体のさまざまなところに感染しますが、最も多いのは足です。足は靴下や靴を履く機会が多いためムレやすいため、高温多湿で菌に適した環境になりやすいと言えます。

そして、足の水虫は放っておくと爪にも侵入します。白癬菌は、爪にまで進行してしまうと、完治するまでに時間がかかることも。そんなやっかいな状態が「爪水虫」で、「爪白癬」とも呼ばれます。

爪水虫の症状

爪水虫になると、次のような症状がみられます。

  • 爪の一部が白色や褐色に濁ったようになる
  • 爪が分厚くなったり、ポロポロと欠け落ちる
  • 爪が変形してくる
  • 爪の周りの皮膚が分厚くなり、ガサガサする

このような症状に当てはまる場合は、爪水虫の可能性があると考えて良いでしょう。初期の段階では、爪の先端など一部に白色や褐色に変色した部分がみられますが、徐々に範囲が広がり、爪が分厚くなって黒っぽく濁った色になることもあります。また、爪には神経がないので、初めのころは痛みやかゆみを感じることが少なく、気づきにくいのも特徴。進行すると、靴を履いた時に圧迫されて痛みが生じたり、変形した爪が周りの皮膚に食い込んで、痛みのため歩きにくくなるケースもあります。

爪水虫は特に、足の親指の爪に発症することが多いと言われていますが、他の足の爪や、まれに手の爪でも発症したり、悪化するといくつもの爪に広がることもあります。

爪水虫が疑われる時は、とにかく早めに対処することが肝心です。

爪水虫の対処法

先にお伝えしたような症状に気づいたら、まずは早めに皮膚科を受診し、診察を受けましょう。爪水虫を見た目だけで診断することは、とても難しいものです。爪乾癬(つめかんせん)や厚硬爪甲(こうこうそうこう)など、一見爪水虫のように思える他の病気はいくつもあります。自己判断で市販の薬などを使って様子を見ていると、症状が悪化してしまうこともあるのです。

皮膚科では、爪の濁っている部分など、症状がでている爪の一部を削り取り、診断のための検査をします。検査に伴う痛みはほとんどなく、削り取った爪を顕微鏡で観察して、白癬菌がいれば「爪水虫」と診断されます。市販薬を使っていると正しく診断できないこともあるため、このような観点からも、まずは病院で正しい診断を受けることがおすすめです。

爪水虫の治療法

病院で爪水虫と診断された場合は、白癬菌を殺菌したり、増殖するのを抑えたりする効果のある抗真菌薬を使った治療が必要となります。抗真菌薬には塗り薬と飲み薬がありますが、爪水虫は原則、飲み薬を服用することとなっています。

目安として、飲み薬を服用するのは3〜6ヶ月程度。ただし、抗真菌薬は変色したり変形した爪を元に戻す薬ではなく、白癬菌をなくすためのものです。感染した症状のみられる爪が先端に押し出され、新しい爪に生え変わるまでには約1年〜1年半程度かかるため、完治するまでにはある程度時間がかかると心得ておきましょう。また、爪水虫だけではなく足水虫の症状もみられる場合は、一緒に治すことが重要です。どちらか一方だけを治療していても、残っている白癬菌によって再発が繰り返されるため、両方の完治を目指しましょう。

治療を続ける中で、一見爪が治ったように思えても、自己判断で薬を中断するのは厳禁です。目に見えなくとも、白癬菌は残っている可能性があります。さらに、爪水虫は完治しなければ、症状が悪化して他の爪にも広がったり、一緒に住んでいる家族などに感染させてしまうこともあります。爪水虫が治ったように思えたり、すぐには薬の効果が感じられなかったとしても、医師の指示があるまでは、必ず決まった治療を続けましょう。治療を根気強く続けることが、爪水虫克服の近道です。

爪水虫治療中の注意点

爪水虫をしっかり治すために、日常生活でも心得ておきたいポイントがあります。
まず、足は常に清潔な状態を保ちましょう。毎日の入浴の際は、足の指と指の間も丁寧に石鹸で洗い、泡はきちんと流すことが大切です。また、白癬菌が好むジメジメとした環境を作らないよう、入浴後はもちろん、汗で足が湿った時などもこまめに拭き、足はできるだけ乾燥した状態をキープすることが必要です。靴や靴下も長時間履いているとムレてしまうため、通気性の良いものを選んだり、何足か靴を用意して交互に履く、休日は靴を干して乾燥させる、といった工夫を取り入れると良いでしょう。

ただし、爪水虫をもつ人が室内を素足で歩くと、剥がれ落ちた爪や皮膚に潜む白癬菌が、同居する家族などにうつってしまう可能性があります。周りへの配慮として、スリッパやバスマットは共有しない、こまめに部屋を掃除する、マット類を適宜天日干しする、といった対策を取りましょう。生活環境を清潔に保つことで、自分自身の再発も予防できます。

爪水虫は自然に治ることはほとんどないため、生活環境へ気を配りながら、根気よく治療を続けることが大切です。気になる場合は、早めに病院を受診しましょう。

まとめ

  • 水虫は白癬菌が皮膚に感染することで発症する病気で、医学的には「白癬」と言う
  • 足の水虫が悪化すると、白癬菌が爪にまで侵入し、爪水虫となる
  • 爪水虫は、爪の一部が白色や褐色に濁ったり、ポロポロと欠け落ちる、変形する、といった症状がみられる
  • 初期は自覚症状がないため気づきにくいが、進行すると痛みが生じ歩きづらくなることもある
  • 爪水虫は見た目だけでは判断しづらいため、病院で検査し正しい診断を受けることが必要
  • 爪水虫の治療は抗真菌薬の内服が基本となる
  • 爪水虫が完治し、爪が新しく生え変わるためには1年〜1年半程度の時間がかかる
  • 治療を中断すると、症状が悪化する可能性があるため、医師の指示に従うことが重要
  • 爪水虫の治療中は、足を清潔に保ち、生活環境にも気を配ることが大切