ウイルス性いぼができる原因は?レーザー治療は効果がある?

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

ウイルスが原因で手や足の裏などにできるいぼは治りにくいため、根気強く治療を続けることが必要です。治療が長く続くことから、受診をためらっている人がいるかもしれませんが、近年は効果的なレーザー治療も登場しています。そこで、ウイルス性いぼができる原因や気になる治療法についてお伝えします。

いぼとは

「いぼ」とは、皮膚が盛り上がってできる小さなできもののことで、医学的には「疣贅(ゆうぜい)」と呼ばれます。いぼにはいろいろな種類があり原因も様々ですが、単に「いぼ」と呼ぶ場合は、今回ご紹介するウイルスが原因の「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」を指すことがほとんどです。 ウイルス感染以外の原因として多いのは、加齢によってできるいぼで、基本的には良性のできものなので心配はいりません。ただし、いぼの形が左右対称ではない、色ムラがある、周囲の皮膚との境目が不明瞭、といった場合は悪性腫瘍の可能性もあります。ニキビが悪化したものやほくろなどのケースもあり、皮膚のできものを判別することは難しいため、気になる場合は放っておかずに、早めに皮膚科を受診することがおすすめです。

ウイルス性いぼの原因

ウイルスが原因の「尋常性疣贅」は、皮膚にできた小さな傷から「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が入り込んで、角化細胞に感染することによって発症します。ヒトパピローマウイルスには多くの種類がありますが、尋常性疣贅の原因となるのはおもに「HPV2型」で、型の違いによっていぼの形状やできやすい部位が異なります。
健康な皮膚にはバリア機能が備わっているので、このようなウイルスに感染することはほとんどありません。ところが、引っかき傷や擦り傷などがあると、その隙間からウイルスが入り込んで、ウイルス性のいぼができてしまうことがあります。また、風邪などで免疫力が低下していたり、アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が弱くなっていたりすると、できる傾向があります。ウイルスの潜伏期間は1~6ヶ月と考えられています。
尋常性疣贅は子どもがかかりやすいいぼですが、大人のあいだでも増えていて、同じくヒトパピローマウイルスの一種が原因で顔や腕などにできやすい「青年性扁平疣贅」は、若い女性に多くみられます。
また、保育園や幼稚園のプールなどで広がりやすい「水いぼ」は、「伝染性軟属腫ウイルス」が原因のいぼです。

ウイルス性いぼの症状

尋常性疣贅は、手の指や足の裏などによくできるいぼで、小さな皮疹ができたあと、いぼ状に盛り上がり、米粒大から親指大になることもあります。感染した皮膚の細胞が増殖するため、皮膚の表面は厚くかたくなってかさつき、でこぼこしたようになります。また、色素沈着を起こして、黒っぽくなったり茶色っぽくなったりすることもあります。
通常、痛みや痒みはありませんが、いぼが足の裏や足の指にでき、盛り上がりが強い場合は歩く時などに圧迫されて痛みを伴うことがあります。同じく足の裏にできやすい、たこやうおのめと見分けがつきにくいこともありますが、ウイルス性いぼの場合は表面に血管が増え、その部分が赤黒くなります。ですから、いぼの中に黒い点が見えれば尋常性疣贅の可能性が高いと言えますが、正しい診断には皮膚科の受診が必要です。

ウイルス性いぼの治療法

ウイルス性いぼは命に関わる病気ではありませんが、放っておくと身体の他の部分に拡がったり、周りの人にうつしてしまうことがあります。自然に治癒するケースもありますが、症状が悪化すると治るまでに時間がかかるため、早めの対処が肝心です。
今のところ原因となるウイルスに直接効く薬はないため、セルフケアとしては、皮膚をやわらかくして取り除く軟膏などを薬局で購入し、いぼを取り除く方法が主流です。ただし、これだけで完治することは難しく、原因が異なる可能性もあるため、まずは皮膚科で正しい診断を受けるほうが良いでしょう。
皮膚科で受けられる治療としては、「冷凍凝固療法」が一般的です。これはマイナス200度の液体窒素でいぼを凍結し、かさぶたにして除去する方法で、1~2週間に1回程度のペースで根気よく治療を続ける必要があります。
また、サリチル酸の外用薬やハトムギの種の製剤であるヨクイニン剤の長期内服といった薬物療法を併用することもあります。
これらの治療法はウイルスを追い出すことが目的となるため、完治するまでには時間がかかります。すぐに効果を実感できなくとも、根気よく治療を続けましょう。

治りづらいウイルス性いぼにはレーザー治療も

ウイルス性いぼの治療法としては冷凍凝固療法がスタンダードですが、治療時や、治療後もしばらくは少なからず痛みが伴う、という懸念点はあります。また、大きく深さのあるいぼの場合は、先にお伝えした治療がなかなか効かず、数年間治療を続けても完治しない、というケースも見られます。
そのような時に選択肢となるのが、レーザー治療です。代表的な方法は2種類。1つ目は血液の色素に反応するレーザーを使っていぼの栄養血管にダメージを与える治療方法で、1ヶ月に1回程度の治療を、およそ2~5ヶ月ほど続けます。
2つ目は、炭酸ガスレーザーを使用し、いぼをしっかり除去する方法です。治療後は皮膚にいぼをくり抜いたような凹みができるため、傷が塞がるまでの3~4週間、軟膏を塗りガーゼで保護する必要があります。一度で治癒する確率は7~8割ですが、短期間で治療が完了する方法と言えるでしょう。
どちらも痛みは伴いますが、局所麻酔を使用した上で行います。治りづらいいぼに悩まされている場合や、短期間で治療を終えたい場合には心強い治療法です。

いずれにしても、ウイルス性いぼが疑われる時は正しい診断の上、適切な治療を受けることが完治への近道です。気になるいぼがある場合は、一度皮膚科で相談することをおすすめします。

まとめ

  • 「いぼ」は皮膚が盛り上がってできる小さなできものを意味し、医学的には「疣贅」と呼ばれる
  • 単に「いぼ」と呼ぶ場合は、ウイルスが原因の「尋常性疣贅」を指すことがほとんど
  • 尋常性疣贅は、皮膚にできた小さな傷から「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が入り込み、角化細胞に感染することによって発症する
  • 尋常性疣贅は手の指や足の裏などによくでき、子どもがかかりやすいが大人も増えている
  • いぼの盛り上がりが強い場合は、歩く時などに圧迫されて痛みを伴うこともある
  • 自然治癒することもあるが、症状が悪化すると治りづらいため早めの対処が肝心
  • 軟膏を用いたセルフケア方法もあるが、それだけで完治させることは難しい
  • 皮膚科の治療としては冷凍凝固療法やサリチル酸の外用薬、ヨクイニン剤の内服が一般的
  • 治りづらいいぼの場合は、レーザー治療を受けることも選択肢の一つ
  • レーザー治療は痛みを伴うため局所麻酔を使用するが、短期間での完治を目指せる