医療コラム
雪焼けに日焼け止めは効果ある?日焼けとの症状の違いや顔が赤い時の対策まで解説。
スキーやスノーボードなど、ウィンタースポーツを楽しむ季節。気がつくと顔が真っ赤に日焼けしていた、という経験はありませんか。雪が積もっているところでは、紫外線のダメージを受けやすいため、肌をしっかりと守る必要があります。そこで、雪焼け対策の基本についてご紹介します。
紫外線が引き起こす肌のダメージ
一般的に紫外線が肌の老化を招くことは広く知られてきていますが、その影響の大きさについてはそれほど知られていないかもしれません。紫外線を長時間浴び続けると、日焼けをして肌が赤くなる、ヒリヒリする、皮がむけるといった症状が出る他、シミやそばかすができる原因となります。また、ハリや弾力の低下、しわなど肌の老化にも、紫外線は大きく関わっています。
肌に影響を与える紫外線には、UVA(A波)とUVB(B波)の2種類があります。UVBは全紫外線の5%程度しかありませんが、日焼けの直接的な原因となるもので、春先から量が増え夏にピークを迎えます。日差しの下で、肌がジリジリと焼けるように感じるのは、UVBの影響です。
一方、UVAはUVBに比べるとパワーが弱いためあまり感じませんが、季節を問わず1年中降り注いでいて、雲や窓ガラスも通過するため、晴れていない日や室内でも浴びることがあります。
UVAは肌の奥まで届くため、コラーゲンやエラスチンにダメージを与えてしまいます。その影響が蓄積すると、肌のハリや弾力は失われ、しわの増加につながります。肌の老化に大きく関係しているのは、このUVAです。
冬こそ紫外線対策が必須
このような紫外線の対策として、春から夏にかけて日焼け止めを使う人は多いのですが、寒い季節も油断できません。冬は日差しを強く感じないためうっかりしがちですが、1年を通して紫外線対策を徹底することが、肌の老化を予防するためには必要不可欠です。
そして、さらに注意したいのが、雪焼けが懸念されるウィンタースポーツのシーンです。まず、スキー場は高地にあるため、平地よりも紫外線の影響を受けやすくなります。一般的に、標高が1000m高くなると紫外線量は約10%増加すると言われていて、空気が澄んでいるとさらに強くなることもあります。加えて、雪は日光を反射するため、スキー場では下からも紫外線を浴びる状態と言えるのです。そのため、冬の晴れた日にスキー場で長時間過ごすと、雪焼けの症状が強く出ることがあります。
日焼けとは違う?雪焼けの症状とは
日焼けと雪焼けの症状は、紫外線を多く浴びることによって生じる炎症という意味では、ほぼ同じです。初めは肌が赤くなったり、ヒリヒリしたりする症状が現われます。これは「サンバーン」とも呼ばれています。サンバーンを起こすのはおもにUVBで、紫外線によって皮膚がやけどしている状態のため、時間が経つと水ぶくれやむくみが生じることもあります。これに対して、日焼け後に肌が黒くなるのは「サンタン」と呼ばれます。肌細胞に含まれるメラノサイトが「メラニン」という色素を生成することで、肌を紫外線のダメージから保護しようとする働きによるものです。
このように、日焼けと雪焼けは肌に炎症反応が起こるという点では同じですが、雪焼けのダメージは、通常の2倍近くになるとも言われています。というのも、雪焼けの場合は上空から降り注ぐ紫外線と、地表の雪から反射される紫外線の両方を浴びるからです。晴れた日のスキー場では短時間でも肌の赤みや、赤い斑点(紅斑:こうはん)が出ることがあるため、注意が必要です。
さらに、紫外線のダメージを受けて目が充血したり痛くなったりする「雪目」の症状が出ることもあります。雪目は、目の表面にある角膜が紫外線によって傷つくことで起こります。場合によっては角膜保護剤や抗生物質の点眼薬、眼軟膏による治療が必要となるため、目に痛みが出た時は早めに眼科を受診しましょう。
このような症状を予防するためにも、ウィンタースポーツを楽しむ際や、雪が積もっている場所で長時間過ごしたりする際は、雪焼け対策を徹底しましょう。
雪焼けを予防するには
冬の紫外線対策も、まずは日焼け止めを適切に使用することが基本です。日焼け止めには、その効果の目安となる指標が2種類あります。
1つは、サンバーンの原因となるUVBの予防効果を表す「SPF(Sun Protection Factor)」です。2〜50の数字で予防効果を示していて、数字が大きいほどUVBを防ぐ効果が高くなります。数字は50が最大値ですが、それ以上の場合は、「50+」と表記されます。
もう1つは、UVAへの予防効果を示すPA(Protection Grade of UVA)で、「PA+」「PA++」「PA+++」「PA++++」の4段階があります。+の数が多いほど、肌老化を招くUVAを防ぐ効果が高くなります。
日焼け止めは効果の高いものを使えば良い、というわけではありませんが、ウィンタースポーツをする際は、「SPF30」、「PA+++」以上のものが推奨されます。また、汗をかく場合にはウォータープルーフのタイプ、肌が弱い人は刺激の少ないタイプなど、使用するシーンや肌の状態に合わせて選びましょう。また、日焼け止めは朝しっかり塗っても時間の経過とともに効果が薄れてしまうため、こまめに塗り直すことが重要です。さらに、ファンデーションやフェイスパウダーには、紫外線を散乱させる酸化チタンなどが含まれているため、日焼け止めの上から重ねるとより効果的です。
さらに、肌の露出をできるだけ抑えるため、フェイスカバーやネックウォーマーを使用し、目はサングラスやゴーグルで保護することもおすすめです。それでも紫外線にさらされがちな耳や首の後ろ部分などには、忘れずに日焼け止めを塗っておきましょう。
雪焼け後のケア
このような対策を徹底していても、うっかり雪焼けをしてしまった場合は、次のような入念なケアで、肌のダメージを和らげましょう。
〇肌を冷やす
赤みやほてりが出ている時は、濡れタオルや冷却作用のあるアフターサンケア商品などで肌を冷やし炎症を抑えましょう。
〇保湿ケアをする
紫外線のダメージを受けた肌は、とても乾燥しやすく、刺激に弱い状態となっているため、保湿ケアを丁寧に行うことも重要です。
〇栄養面でのケアも忘れずに
ビタミンCを意識して摂ると、シミを予防したり皮膚の修復力を高めたりする効果が期待できます。また、緑黄色野菜などに多く含まれるビタミンAやビタミンEも高い抗酸化作用があるため、バランスの良い食事を基本に、これらのビタミン類を意識して摂ると良いでしょう。
雪焼けの症状が治らない時は皮膚科に相談しよう
雪焼けによる肌の赤みや痛み、水ぶくれなどの症状がセルフケアではなかなか治らない場合もあります。その際は我慢せずに、早めに皮膚科を受診しましょう。
皮膚科では、症状に合わせて炎症や痛みを抑える塗り薬や、痛み止めの飲み薬などを処方してもらうことができます。誤ったケアのせいで症状が悪化することもあるため、適切な治療を受けることが肌の状態を改善する近道です。適切な治療の他に、症状に応じたアフターケアの相談ができる点も受診のメリットでしょう。
ウィンタースポーツを楽しむ時は、紫外線対策を徹底し、雪焼け後のケアも丁寧に行いましょう。
まとめ
- 肌に影響を与える紫外線には、日焼けの原因になるUVBと老化を招くUVAの2種類がある
- 1年を通して紫外線対策を徹底することが、肌の老化を予防するためには必要不可欠
- スキー場は標高が高く、雪が反射するため、紫外線の影響が特に強くなる
- 雪焼けの代表的な症状は、肌が赤くなったりヒリヒリする症状が出たりするサンバーン
- 短時間でも雪焼けをすると、肌の紅斑や雪目の症状が出ることもある
- 雪焼けを予防するには、適切な日焼け止めを使い、こまめに塗り直すことが重要
- フェイスカバーやネックウォーマーなどで肌の露出をできるだけ少なくすることも大切
- 雪焼けの対処としてはまず肌を冷やし、保湿ケアを徹底する
- 症状が改善しない場合は皮膚科受診を