医療コラム
セラミドってどんな成分?期待できる効果や他の成分との併用について解説
保湿成分の代表格とも言える「セラミド」。乾燥肌対策としてセラミド配合の化粧水などを使っている人も多いでしょうが、実際にどんな成分なのでしょうか。そこで、セラミドに期待できる効果や他の成分との併用などについて解説します。
セラミドとは
セラミドは、私たちの皮膚(角質層)にもともと存在する保湿成分です。角質層は皮膚の最も外側にあり、皮膚を守る重要な働きを担っています。具体的には、外的な刺激から肌を守ること(バリア機能)と、体内の水分が逃げていかないようにする働きで、これに欠かせないのがセラミドです。
セラミドは角層細胞の隙間を埋める「細胞間脂質」の50%を占めていて、油分と水分の両方と繋がることのできる性質をもっています。角質層ではセラミド同士が繋がりつつ、水分の層と交互に重なり合うような構造(ラメラ構造)をとりながら、角層細胞の間を埋めています。ラメラ構造は皮膚の状態を大きく左右するものです。ラメラ構造が整っていると皮膚は必要な水分をキープすることができますが、逆にセラミドが減少してその構造が乱れてしまうと、乾燥したりバリア機能が低下したりして外部からの刺激に弱くなり、肌トラブルを起こしやすくなります。特にセラミドは年齢とともに減少するため、加齢に伴う乾燥や、小じわなどの肌トラブルにはセラミド不足が大きく関わっています。
ヒトの皮膚に存在するセラミドの種類と作用
ヒトの皮膚内には300種類以上ものセラミド分子が存在しています。さらにセラミドは結合パターンによって12個のタイプに分けられます。いずれも水分保持やバリア機能の強化に関わっていますが、タイプごとに構造や働きがやや異なります。
たとえば、「セラミドEOP」にはラメラ構造を安定化しバリア機能を強化する作用がありますが、「セラミドNG」は水分を保持したり、水分を保持する能力を強化する作用、バリア機能を補修する作用があります。
ちなみに、セラミドはかつて「セラミド1」「セラミド2」というように「セラミド+数字」の名前がつけられていましたが、その後、化粧品成分表示の見直しが行われ、現在は「セラミドNG」や「セラミドAZ」というように「セラミド+アルファベット」と表記されるようになっています。
化粧品に含まれるセラミド
化粧品に含まれるセラミドは、ヒトの皮膚に存在するセラミドを真似て作られています。どのように作られたかによって、大きく4つのタイプに分けられます。
〇天然セラミド
天然セラミドは馬や牛などの動物から抽出されたセラミドで、ビオセラミド、セレブロシドなどがあります。ヒトのセラミドと似たような構造をもっているため、多くの化粧水などに使われています。ただし、高価なものが多いため気軽に使いにくいと感じる人もいます。
〇植物性セラミド
米や小麦、トウモロコシ、イモ、大豆などの植物から抽出されたもので、米ヌカスフィンゴ糖脂質などが該当します。ヒトのセラミドとは構造が異なり、浸透力などはやや劣りますが、一定の保湿効果が確認されています。また、安価なため、化粧水などによく配合されています。植物性のセラミドの中でヒトのセラミドに近い構造をもつものは、特に「植物性ヒト型セラミド」と呼ばれています。
〇ヒト型(バイオ)セラミド
「ヒト型」とありますが、ヒトから抽出されたものではなく、酵母などを使って作られたセラミドです。化粧品成分表示に「セラミド+アルファベット(例:セラミドAG)」と記載されているものは、ヒト型セラミドです。
皮膚内のセラミドと構造が似ているため、刺激性が少ない、肌へ浸透しやすい、保湿効果が高いなどの特徴があります。一方で、高価な点がデメリットと言えます。
〇疑似セラミド
化学物質を合成して作られたセラミドで、「合成セラミド」とも呼ばれています。ヒトのセラミドを真似て作られていますが、構造が異なり、保湿効果もヒト型セラミドなどに比べると劣ると言われています。一方で、安価なものが多く、気軽に試しやすい点はメリットと言えるでしょう。
このように、化粧品に配合されているセラミドにはいくつかの種類があり、構造や保湿力、価格などの面で異なります。最近では、よりヒトの構造に近い疑似セラミドを配合した化粧品も登場しているため、製品の良し悪しは一概には言えませんが、一般的には、天然セラミドやヒト型セラミドは高価で効果も高く、疑似セラミドは安価で効果が劣る傾向があります。このような違いを頭に入れておき、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
なお、セラミド配合の化粧品は「医薬品」のように特定の症状を治すことを目的としたものではありません。即効性があるものでもないため、あくまでも化粧品の一つと捉えて普段のスキンケアに取り入れましょう。
セラミドの安全性について
セラミドは基本的に安全性の高い成分ですが、種類によっては刺激を感じる可能性があります。特に疑似セラミドは、ヒトのセラミドとは構造が異なるため、他の種類に比べると刺激を感じる可能性は高いと言えるでしょう。一方、ヒトの皮膚内に存在するセラミドと近い構造をもつヒト型セラミドは安全性が高く、刺激性が低いと言われています。また、植物性セラミドもヒトの皮膚内のセラミドと類似性が高いことから、肌の刺激になる可能性は低いと考えられています。皮膚が敏感な人はヒト型セラミドや植物性セラミドが配合されたものを選んだほうが安心でしょう。ただし、これらの種類であっても、肌トラブルが起こる可能性はゼロではなく、またセラミド以外の成分が肌に合わない可能性もあるため、使用前にはパッチテストなどをすることをおすすめします。
セラミドは他の成分との併用できる?
セラミドは他の成分との併用も可能です。美容成分としてよく知られるコラーゲンやビタミンC、レチノールなどとの併用も可能ですので、肌の状態に合わせて選ぶと良いでしょう。ただし、敏感肌の人や肌の乾燥がひどい人は、バリア機能が著しく低下していて他の成分が刺激になる可能性が考えられます。そのため、いくつもの成分を併用するよりも、まずは保湿作用の高い成分を中心に使用し、肌の状態が落ち着いてから、別の成分と併用するほうが良いでしょう。
今回ご紹介したように、ひと言で「セラミド配合」と言っても、使われているセラミドの種類は様々です。成分表示などを確認し、目的に合わせて使いましょう。
まとめ
- セラミドは、角質層にもともと存在する保湿成分
- セラミドは角層細胞の隙間を埋める「細胞間脂質」の50%を占めている
- セラミドが不足するとラメラ構造が乱れてバリア機能の低下を引き起こす
- セラミドは年齢とともに減少する
- ヒトの皮膚内にあるセラミドは結合パターンによって12個のタイプに分けられ、いずれも水分保持やバリア機能を強化する作用がある
- 化粧品に含まれるセラミドは、動物由来の天然セラミド、植物由来の植物性セラミド、酵母などをもとに作られたヒト型セラミド、化学物質を合成して作られた疑似セラミドに分けられる
- 基本的にセラミドは安全性の高い成分で、他の成分との併用も可能