医療コラム
皮膚のカビ(真菌)感染は意外と身近?!症状、治療方法もご紹介
食品や衣類などに発生するカビ(真菌)。実は、皮膚の病気の原因にもなることを知っていますか。皮膚のカビ感染は意外と身近で起こっているかもしれません。そこで、カビ感染による症状や治療方法についてご紹介します。
皮膚のカビ(真菌)感染とは
カビの感染によって生じる皮膚の病気は身近にあふれていて、医学的には「皮膚真菌症(ひふしんきんしょう)」と呼ばれます。いわゆる「カビ」は、キノコや酵母などとともに「真菌類」に分類される生物の俗称で、菌糸と胞子から成り立っています。カビはパンやお菓子など糖分を含む食品を特に好み、増殖に適した環境に置かれると、数日で目に見える塊となって胞子を周りに撒き散らすようになります。カビには10万以上の種類があると考えられていて、その中には有益なものもありますが、健康に悪影響を与えるものも少なくありません。また、カビは食品だけでなくヒトの垢なども栄養源とするため、皮膚で増殖すると皮膚真菌症を発症します。
皮膚真菌症として最も代表的なものは、医学的には「白癬(はくせん)」と呼ばれる「水虫」です。その他に、カンジダやマラセチアなどによる皮膚真菌症もよく知られています。それぞれの症状について、具体的にみていきましょう。
水虫の症状と治療法
代表的な皮膚真菌症である水虫は、白癬菌という名のカビ(真菌)が皮膚に住み着き、増殖することで生じる皮膚の病気です。足の裏や足の指の間、足の爪などに発症することが多く、部位によって「足白癬」、「爪白癬」などと呼ばれます。また、水虫は足や足の爪以外に生じることもあり、手に症状が出る「手白癬」や、胴体、腕、脚などに症状が出る「体部白癬」などもあります。
特に多い足白癬にみられる症状は、指の間の皮が白くなったり、皮がボロボロと剥けるもので、痒みを伴うこともあります。また、ただれてジュクジュクした状態になったり、乾燥して皮膚に亀裂が入ったようになったりします。爪白癬の症状は、爪が濁って白色や褐色になり、脆く崩れやすくなる、といったものです。足白癬が長引くと、爪にもうつって爪白癬を合併することがあり、より治りにくい状態になるため注意が必要です。
水虫治療の基本は、抗真菌薬(外用薬)の使用です。症状が出ている部位や範囲によっては、抗真菌作用のある内服薬を併用することもあります。適切な治療を継続した上で、症状が落ち着くまでにかかる期間の目安は、足の水虫の場合1ヶ月程度、爪の水虫の場合は6ヶ月程度です。一見治ったように思えても、爪の中に住み着いた白癬菌が増殖している場合があるため、医師の許可が出るまでは根気強く治療を続けましょう。
また、水虫は放置していると身体の他の部分に拡大したり、同居している家族などにうつる可能性もあります。水虫の感染が疑われる場合は、適切な治療を受けることはもちろん、タオルや足拭きマットなどを他人と共有することを避け、感染が広がらないよう注意することも大切です。
カンジダ症の症状と治療法
カンジダ症の原因菌である「カンジダ」は、ヒトの皮膚や口の中、消化管、膣などにもともと常在しているカビ(真菌)です。普段は悪さをしませんが、免疫力が低下していたり、その他の病気が関わったりして増殖すると、カンジダ症を発症します。また、カンジダが増殖する要因には、高温多湿な環境や汗、肌の長時間の蒸れなども関わると考えられています。
皮膚のカンジダ症として多い症状は、股や脇の下、腹部などに、赤い斑点やびらん、黄色いブツブツなどができるもので、皮が剥けてカサカサした状態になることもあります。また手や足の指と指の間、爪などに症状が出るケースもみられます。外陰部で発症することもあり、女性の膣に痒みやヒリヒリ感が生じたり赤みやびらん(ただれている状態)を伴うものは「膣カンジダ」と呼ばれます。男性も尿道や性器周辺の皮膚に感染することがあります。
カンジダ症の治療も基本は抗真菌薬の外用で、数週間で改善することが多いのですが、重症の場合には内服薬を併用します。生活上の注意点としては、患部を清潔に保ち蒸れないようにすることが大切です。乾燥した状態をキープすると、より早く治り、再発を防止することに繋がります。高温多湿な環境に長時間いる、汗をかいた後にそのままにしておく、入浴やシャワーができない期間が続く、といった悪化要因はなるべく避けるよう注意しましょう。
マラセチア菌によって起こる症状と治療法
マラセチア菌は一般的にはあまり知られていませんが、カンジダ菌と同じく健康な人の皮膚にいる常在菌の一種です。過剰に増殖すると、胸や背中、首、肩、脇の下などに丸い形の発疹ができ、医学的には「癜風(でんぷう)」という病名で呼ばれます。発疹の色は、薄い赤〜茶色ですが、白っぽいこともあり、徐々に広がっていきます。症状が出ているところを擦ると細かいフケのようなものが出てくることが特徴です。
マラセチア菌は皮脂を栄養源とするため、脂性肌の人や、皮脂の分泌が盛んな思春期から20代、30代の人に多くみられます。高温多湿な環境や汗が悪化因子となるため、夏場は特に症状が出やすくなります。また、マラセチア菌は脂漏性皮膚炎やマラセチア毛包炎といった他の病気とも関連があることが明らかになっています。
マラセチア菌による癜風は、抗真菌薬の外用で治療できますが、再発を繰り返していたり、症状が広範囲に広がっていたりする場合は内服薬も併用します。ただし、マラセチア菌は常在菌のため、悪化因子を取り除かなければ再発を繰り返すことも少なくありません。気温の高い季節は特に、汗を掻いたままにしないよう心がけ、肌を清潔に保ちましょう。また、症状が落ち着いた後、皮膚の発疹が出ていた部分の色が抜けて白く見える状態が続くことがあります。これは紫外線を浴びると悪化しやすいため、病変部を直接光に当てないように保護することも必要です。
皮膚のカビ感染が疑われる場合は皮膚科の受診を
お伝えしてきたように、カビが原因の皮膚の病気は身近なものです。様子を見ているうちに悪化したり、周りの人にうつしてしまったりすることも珍しくないため、気になる症状がある場合は早めに皮膚科を受診しましょう。また、症状を繰り返さないように生活を見直し、悪化要因を取り除くことも重要です。
まとめ
- カビの感染によって生じる皮膚の病気は、医学的には「皮膚真菌症」と呼ばれる
- カビは食品だけでなくヒトの垢なども栄養源とするため、皮膚で増殖すると皮膚真菌症が起こる
- 代表的な皮膚真菌症である水虫は、白癬菌という名のカビが原因の病気である
- 特に多い足白癬の症状は、指の間の皮が白くなったり、皮がボロボロと剥けるもので、痒みを伴うこともある
- 常在菌の一種であるカンジダは、皮膚や粘膜で増殖するとカンジダ症を発症する
- 皮膚のカンジダ症として多い症状は、赤い斑点やびらん、黄色いブツブツなどができるもので、皮が剥けてカサカサした状態になることもある
- 同じく常在菌の一種であるマラセチア菌が増殖すると、「癜風」を発症することがある
- マラセチア菌は皮脂を好み、高温多湿な環境が重なると発疹などの症状が出やすくなる
- 皮膚真菌症の治療の基本は抗真菌薬の外用で、症状に応じて内服薬を併用する
- 皮膚真菌症にかかった場合は、再発を予防するため生活環境などを見直すことも重要