医療コラム
サリチル酸マクロゴールピーリングに使用するサリチル酸ってどんな成分?その効果を徹底解説
ケミカルピーリングの代表的な成分であるサリチル酸マクロゴール。その主成分であるサリチル酸とはどんな成分なのでしょうか。サリチル酸の働きや、サリチル酸マクロゴールピーリングの効果について詳しく解説します。
サリチル酸とは
サリチル酸は「βヒドロキシ酸(通称「BHA」)」とも呼ばれる酸の一種です。美容の世界ではピーリング剤として知られるサリチル酸ですが、医療の世界では古くから様々な治療に用いられてきました。その歴史は古く、古代ギリシア時代から鎮痛剤として使用されています。ただし、サリチル酸の内服には胃腸障害など強い副作用が伴うこともあり、現在では形を変えて使われています。たとえば、現在も様々な解熱鎮痛剤に含まれている「アスピリン(=アセチルサリチル酸)」はサリチル酸の誘導体です。
またサリチル酸はおもに軟膏などの外用剤として用いられています。サリチル酸の外用剤は濃度を変えることで、次のように様々な皮膚疾患の改善に効果を発揮します。
- サリチル酸濃度50%
サリチル酸濃度50%の医薬品には、ウオノメなどの治療薬として知られる「スピール膏」があります。サリチル酸には、角質を軟らかくして溶かす作用や消炎作用があり、いぼやウオノメ、たこの改善効果が期待できます。 - サリチル酸濃度5~10%
サリチル酸を5~10%の濃度で配合したサリチル酸ワセリンは、抗菌作用や角質軟化・剥離作用が期待できることから、角化症や白癬、乾癬、ニキビなど様々な皮膚疾患の治療薬として用いられています。
その他、薬ではありませんが、サリチル酸は防腐剤としても用いられています。防腐剤として使用される場合の濃度は0.025%~0.2%です。
なお、サリチル酸は化粧品や医薬部外品に防腐剤として配合されていることもよくありますが、配合濃度は0.2%以下と決められているため、ピーリング効果は期待できません。
サリチル酸マクロゴールとピーリングの効果
このように様々な皮膚疾患の改善に効果を発揮するサリチル酸ですが、美容の分野ではケミカルピーリングの薬剤として用いられています。ケミカルピーリングは角質剥離作用のある薬剤を皮膚に塗布し、浸透させた後に拭き取る施術で、クリニックなどの医療機関で受けることができます。皮膚表面の古い角質や毛穴の汚れが除去されるため、ニキビが改善したり毛穴トラブルが起きにくくなったりします。また肌の新陳代謝(ターンオーバー)が促され、シミやくすみ、ニキビ痕、色素沈着が薄くなり、透明感のある滑らかな肌へ近づくことができます。
ケミカルピーリングの薬剤は何種類かありますが、その中でもサリチル酸は油を溶かす性質があるため、古い角質を溶かして除去する作用に優れています。またコラーゲンなどの生成を促す作用もあります。こうした働きから、サリチル酸によるケミカルピーリングは、ニキビや毛穴トラブルの改善、美白、小じわの改善、ハリやツヤのアップなど、幅広い効果が期待できます。
ただし、角質剥離作用が強いサリチル酸は、それだけを肌に塗布すると、赤みや皮剥け、痒み、痛みなどの副作用が出やすくなるというデメリットがあります。そこでクリニックでは、サリチル酸を「マクロゴール」という基材に溶かし「サリチル酸マクロゴール」として使用しています。これにより、サリチル酸の効果が皮膚表面の角質層のみにとどまり副作用が起こりにくくなります。また、一般的に多くの医療機関では、サリチル酸濃度が30%、pHが1.7のサリチル酸マクロゴールが使用されていますが、肌の状態に合わせてその濃度などを調整することが可能なため、副作用が心配な人は医師に相談するとよいでしょう。
サリチル酸マクロゴールピーリング:施術の流れ
国内で販売されているホームケア用のピーリング剤には高濃度のサリチル酸は配合されていません。そのためサリチル酸を使ったピーリングをしたい場合は、美容皮膚科などのクリニックを受診する必要があります。
医療機関では、カウンセリングを行い、医師が実際に肌の状態を見た上で、サリチル酸マクロゴールピーリングが適しているかどうかを判断します。問題ないと判断された場合には、施術に入ります。サリチル酸マクロゴールピーリングを顔に塗布し、5分程度浸透させた後、軽く拭き取ります。その後は洗顔をして終了です。所要時間は合計で30分程度です。
一般的に施術は4週間に1回程度のペースがすすめられていますが、肌の状態や悩みによって推奨頻度は異なります。どのくらいの頻度で施術を受けるのがよいのか、主治医と相談して決めましょう。
サリチル酸マクロゴールピーリング:施術の注意点
サリチル酸マクロゴールピーリングを受けたい人は、以下の注意点を理解しておきましょう。
- 痛みや副作用
強い痛みはありませんが、拭き取る際にヒリヒリ感が強くなることがあります。また、明らかな傷がある場合は傷の部分は薬剤塗布を避ける対応をしますが、目に見えないような細かい傷があった場合などは、角質層より奥に薬剤が浸透し、一時的に施術後にかさぶたができることがあります。 - 施術後のケア
施術後は洗顔やメイクが可能です。ただし、ヒリヒリしているうちはメイクを控えたほうがよいでしょう。また施術後1週間程度は角質を剥がす作用のある薬剤を使用しないでください。さらに、施術後は紫外線の刺激を受けやすい状態になっているため、必ず紫外線対策を行いましょう。施術後1週間は、紫外線吸収剤が入っていない日焼け止めを使用してください。 - 施術を受けられない人
皮膚に炎症がある人、日焼けをしている人、アスピリンに対してのアレルギーや喘息がある人は施術を受けられないことがあります。
サリチル酸マクロゴールピーリングを受けてみたい人は皮膚科医に相談を
「ケミカルピーリングは刺激が強そうだから心配」という人がいるかもしれませんが、お伝えしたとおり、サリチル酸マクロゴールピーリングは副作用のリスクを抑えた施術です。サリチル酸マクロゴールピーリングに興味のある人や、ニキビや毛穴トラブルを改善したい人は、一度、美容皮膚科などで相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- サリチル酸は、古くから鎮痛剤として使われ、現在は主に外用剤として皮膚疾患の治療に使用されている
- サリチル酸はその配合濃度により異なる効果を発揮し、いぼやウオノメ、たこ、角化症、白癬、乾癬、ニキビ、炎症性皮疹の治療などに用いられている
- ケミカルピーリングは薬剤の角質剥離作用により、古い角質や毛穴の汚れを除去し、肌のターンオーバーを促進する治療法で、ニキビ、シミ、くすみ、小じわなどの改善が期待できる
- サリチル酸の副作用を抑えるために、ケミカルピーリングでは、マクロゴール基材に溶かした「サリチル酸マクロゴール」という形で使用されている
- 化粧品や医薬部外品には高濃度のサリチル酸は使用できないため、サリチル酸を使ったピーリングを行いたい時は皮膚科などに行く必要がある
- 施術を受ける際は注意点をよく確認しておくことが重要