医療コラム
まつ毛美容液とまつげ育毛剤の違いは?まつげの状態によって使い分けるポイント
目元の印象を大きく左右するまつ毛。濃く、太く、長いまつ毛をキープしたいと思う人は多いでしょう。そんなまつ毛のケアに役立つアイテムがまつ毛美容液とまつ毛用の育毛剤です。ではこの2つはどう違うのでしょうか。それぞれの特徴や使い分けのポイントを解説します。
そもそもまつ毛が減ってしまうのはなぜ?
まつ毛のお悩みは多くの人が経験しているようです。アラガン・ジャパン社が20~60代の女性を対象に行ったアンケート調査(https://www.matsugeclinic.com/research/)によると、まつ毛に関して「何らかの悩みがある」と答えた人は全体の約3分の2にのぼりました。また悩みの内訳を見てみると、「少ない」「短い」「抜けやすい」「年齢とともに減ってきた」と答えた人が多いことがわかりました。このような悩みに関係しているのが、まつ毛の毛周期です。
まつ毛は頭髪などと同じで体毛の一種です。頭髪にはヘアサイクルがありますが、まつ毛も同じように生え代わりのサイクル(毛周期)があります。毛周期は大きく3つのステップに分けることができます。
- 成長期
まつ毛が活発に成長する時期です。毛根にある毛母細胞からまつ毛が伸び始め、産毛のような状態を経て、濃く太い毛へと成長していきます。 - 退行期
まつ毛の成長が止まります。毛根が押し上げられて、次第に抜けやすくなっていきます。退行期のまつ毛は目をこするなど、ちょっとした刺激でも抜けやすいのが特徴です。 - 休止期
まつ毛が完全に抜ける時期です。次のまつ毛が生えるための準備期間でもあります。
成長期→退行期→休止期を1サイクルとして、これを繰り返しながらまつ毛は生え代わっています。1サイクルはだいたい5~12ヶ月ですが、加齢やストレスなど様々な影響によってこのサイクルに乱れが生じることがあります。特に加齢の影響は大きく、年齢とともにまつ毛が細くなったり、量が減っていってしまいます。また、間違ったお手入れによって目元に負担がかかることでも、まつ毛の毛周期は乱れてしまいます。特にマスカラを毎日何度も重ねて塗っている、ビューラーで強く引っ張っている、クレンジングでゴシゴシこすっている、つけまつ毛やホットビューラーの使用頻度が多い、ビューラーのゴムを定期的に交換していない、といった行為は要注意です。まつ毛が切れてしまったり、減ってしまったりする原因になります。まつ毛は、毛周期の中でも休止期が全体の半分以上と長く、一度抜けてしまうと次の毛が生えるまでに時間がかかります。だからこそ、普段のお手入れの際も注意が必要です。その他、薬の副作用や、乾癬(かんせん)・アトピー性皮膚炎などの影響でまつ毛が細くなったり減ったりすることがあります。
まつ毛ケアに効果はある?まつ毛美容液について
自宅でまつ毛ケアをする時に手軽に始められるのが、市販のまつ毛美容液です。まつ毛美容液は自まつ毛を美しくキープすることを目的とした化粧品の一つです。美容成分が配合されていて、まつ毛にハリや潤いを与えることで、ダメージに強いまつ毛づくりをサポートしてくれます。またマスカラの下地として使用できるアイテムもあり、まつ毛のカールをキープしてくれるものや、アイメイクの持ちを良くしてくれるものなどもあります。
ただし、まつ毛美容液はあくまでも化粧品の一種であり、まつ毛を増やしたり太くしたりする効果までは期待できません。今あるまつ毛を美しく見せたり、キープすることが主な目的のため、自まつ毛がある程度は生えていて、今後、減ったり細くなったりすることを予防したい時に使うのがおすすめです。一方で、すでにまつ毛がかなり減ってしまっている場合や細くなってしまっている場合には、まつ毛美容液では効果を実感できない可能性があります。そのような時に効果が期待できるアイテムが、医療用のまつ毛育毛剤です。まつ毛育毛剤とはどのようなものなのか、見ていきましょう。
医療用まつ毛育毛剤とは?
医療用まつ毛育毛剤は、「睫毛貧毛症(しょうもうひんもうしょう)」の治療に使われる医療用医薬品で、医療機関で処方されるものです。睫毛貧毛症は、まつ毛が細い、薄い、短いなど、その量や質が不足している状態を指し、「まつ毛貧毛症」とも呼ばれています。現在、国内で主に使用されているまつ毛育毛剤は「ビマトプロスト」という成分を配合した医薬品です。「ビマトプロスト」はもともと緑内障の治療薬として使われていた成分ですが、まつ毛の毛周期が長くなる、メラニン色素の合成が促進されるといった副作用があることから、睫毛貧毛症の治療薬の成分として注目されるようになりました。発毛効果はありませんが、上まつ毛に対する育毛効果が高く2ヶ月程度使用すると、長さや密度、濃さに変化が見られます。
国内で流通している「ビマスプロスト」を配合したまつ毛育毛剤には「グラッシュビスタ」と「ルミガン」の2種類があります。どちらもビマトプロストを配合している点は共通していますが、グラッシュビスタは厚生労働省によって睫毛貧毛症の治療薬として認可を受けていて、副作用による健康被害が起きた場合に「医薬品副作用被害救済制度」の適用を受けられます。一方でルミガンは緑内障治療薬としての認可は受けているものの、睫毛貧毛症の治療薬としては認可されていません。なお、グラッシュビスタもルミガンも健康保険は適用されず、自由診療扱いとなります。
まつ毛美容液とまつ毛育毛剤の違いと使い分けについて
ここまでまつ毛美容液とまつ毛育毛剤の特徴をそれぞれご紹介してきましたが、最後に2つの違いと使い分けについて整理しておきましょう。
〇目的の違い
- まつ毛美容液:自まつ毛にハリや潤いを与えて美しくキープするためのもの。
- まつ毛育毛剤:睫毛貧毛症の治療薬で、育毛効果が認められている。
〇入手場所の違い
- まつ毛美容液:ドラッグストアや通販など様々な場所で入手が可能。
- まつ毛育毛剤:医療用医薬品のため医師による診察と処方箋が必要。
〇副作用の違い
- まつ毛美容液:薬ではないが、成分が合わないとかぶれや赤み、痒みなどが現れることがある。また海外で流通しているものの中にはビマトプロストが配合されているものもあるため、色素沈着などの副作用に注意が必要。
- まつ毛育毛剤:色素沈着や痒み、充血などが現れることがあるため、必ず医師の指導のもと使用する必要がある。また妊婦や授乳婦、過去にビマトプロストで副作用が出た人は使用できない。
〇使い方の違い
- まつ毛美容液:朝晩の2回、使用を推奨しているものが多い。上下まつ毛の両方に使えるものが一般的。
- まつ毛育毛剤:夜のみ、クレンジングや洗顔をしてから使用する。下まつげには塗らずに、上まつ毛のみに使用する。
※上記は一般的な例です。実際の使い方は製品・薬剤ごとに確認しましょう。
〇使い分けのポイント
- まつ毛美容液:自まつ毛を美しくキープしたい時や、加齢などによるハリや潤い不足を感じた時に使う。
- まつ毛育毛剤:まつ毛が少ない、減った、薄くなった、細くなった時に医師に相談して使用する。
今回は、まつ毛美容液とまつ毛育毛剤の違いについて解説しました。目的に合わせて使い分けることで、理想のまつ毛を手に入れることができます。それぞれの違いをしっかり理解して、正しく使い分けられるようにしましょう。
まとめ
- まつ毛の毛周期は約5〜12ヶ月だが、加齢やストレス、誤ったお手入れでサイクルが乱れ、まつ毛の量や質に変化が出ることがある
- 市販のまつ毛美容液は自まつ毛にハリや潤いを与え、美しくキープする化粧品
- まつ毛美容液はマスカラの下地としても使用できるが、まつ毛を増やしたり太くしたりする効果はない
- 医療用まつ毛育毛剤は睫毛貧毛症の治療に使用される医療用医薬品で、主成分はビマトプロスト
- まつ毛美容液は薬ではないが、成分が合わないと肌トラブルの可能性がある
- まつ毛育毛剤は色素沈着や痒みなどの副作用があるため、医師の指導のもと使うこと
- それぞれの特徴を知って目的に合わせて使い分けると良い