グリコール酸について徹底解説。期待できる効果やグリコール酸配合化粧品を選ぶ時の注意点について

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

グリコール酸は、古い角質を取り除く角質ケアができる代表的な成分です。では、具体的にどのような働きがあるのでしょうか。そこで、グリコール酸に期待できる効果や、グリコール酸配合化粧品を選ぶ時の注意点などについて解説します。

グリコール酸とは?

グリコール酸は、ブドウなどの熟していない実や葉、サトウキビの茎中などに存在する自然由来の成分で、AHA(Alpha Hydoroxy Acid、アルファヒドロキシ酸)の一種です。AHAは、主にりんごなどのフルーツの発酵液から抽出される天然由来の成分で、「フルーツ酸」とも呼ばれています。AHAは酸の力によって、細胞同士の結合力を弱めて角質を剥がれやすくする作用があり、角質ケアやピーリングができる化粧品などによく配合されています。AHAにはいくつかの種類がありますが、グリコール酸はその代表的な成分の一つに挙げられます。特にグリコール酸は、AHAの中で最も分子量が小さく浸透力が高いという特徴があり、ピーリングや角質ケアを目的とした化粧水や美容液、洗顔石鹸、シートマスクなど、様々な化粧品に配合されています。また、一部のフットケア商品やボディケア商品にも含まれています。

グリコール酸に期待できる効果

グリコール酸を使って角質ケアを適切に行うと、様々な肌トラブルを予防することができます。なぜなら、角質ケアによってターンオーバー(肌の新陳代謝)が促進されるためです。
肌は外側から表皮、真皮、皮下組織という順番で、3つの層が重なってできています。そのうち表皮はさらに4つの層(外側から角層、顆粒層、有棘層:ゆうきょくそう、基底層)に分けることができます。表皮の最も深い場所に位置する「基底層」で新しい細胞が生まれると、古い細胞は肌の表面に向かって押し上げられます。そして、古くなった細胞は徐々に肌表面まで押し上げられていき、最終的に垢(あか)となって剥がれ落ちていきます。これがターンオーバーです。
正常なターンオーバーは、健やかで美しい肌をキープする上で不可欠ですが、加齢やストレス、ホルモンバランスなど様々な要因によってそのサイクルは乱れてしまいます。特に加齢の影響は大きく、20代では約28日とされるターンオーバーのサイクルは、30~40代になると45日ほどかかるようになります。そこにその他の要因が重なれば、そのサイクルはさらに乱れていきます。その結果古い角質が剥がれ落ちずに肌表面に溜まってしまうと、次のような様々な肌トラブルを引き起こします。

  • 毛穴トラブルやニキビ:古い角質が毛穴に詰まると毛穴の開きや黒ずみ、ニキビなどを引き起こします。
  • 小じわ:ターンオーバーが乱れると肌が乾燥しやすくなり、小じわができやすくなります。
  • シミ:シミの原因となるメラニンはターンオーバーによって排出されているため、そのサイクルが乱れてしまうと、肌にとどまってしまい将来的なシミのリスクになります。

他にもごわつきやざらつき、キメの乱れなど、ターンオーバーの乱れは様々な肌トラブルの原因になります。そのため、適切な角質ケアを行うことは、肌トラブルを防ぐ上でとても重要です。

毛穴トラブルなどで悩んでいる人は、古い角質が溜まっている可能性が考えられるため、角質ケアのできるアイテムを取り入れてみましょう。グリコール酸は市販の角質ケア用の化粧品に配合されていることが多く、手に入れやすいため、気軽に始めることができます。

グリコール酸配合の化粧品を選ぶ際の注意点

グリコール酸は安全性が確認されている成分ですが、その角質剥離作用や浸透性の高さから、肌が敏感な時に使用すると赤みや皮剥けなどの症状が出る可能性があります。そのため、国内の化粧品は、安全性に配慮して、配合濃度やpH(ピーエイチ、水素イオン濃度)が調整されていたり、他の成分と組み合わせたりすることで、穏やかに作用するように作られています。たとえばpHは、医療機関のケミカルピーリングでは0.5~3程度ですが、化粧品の場合にはpH3~3.5くらいが一般的です。pHは数値が低いほうが酸性度は高くなり、角質を剥離する作用も強くなりますが、その分、肌への刺激も増加します。また配合濃度については、医療機関では10~70%の濃度の薬剤が使用されていますが、国内の化粧品は基本的に3.5%以下のものがほとんどです(日本では3.6%以上のグリコール酸配合化粧品は「劇物」に指定されている)。もちろん、医療機関は医師が患者の肌の状態を見ながら薬剤を使用していますが、ユーザーが自分自身で判断して使用する化粧品は、より安全性に配慮して作られています。ただし、これは国内の化粧品についての話であり、海外で流通しているものはこの限りではありません。pHが低いものや配合濃度が高いものもあるため、選ぶ際には注意が必要です。

国内で市販されているものを使う場合でも、グリコール酸配合の化粧品を初めて使う際には少量から始めるほうが安心です。また使い慣れている人でも、肌の状態や体調次第で何らかの症状が出る可能性はあります。ケア後に肌の赤み、炎症、乾燥などの症状が出た場合には、使用を中止して様子をみましょう。もし症状が悪化するような場合には皮膚科を受診してください。
あわせて角質ケアのやりすぎにも注意が必要です。過剰なケアは肌トラブルの原因となるため、使用する化粧品の推奨頻度などを確認し、正しく取り入れましょう。

本格的なケアを受けたい時は美容皮膚科に相談を

グリコール酸を使った化粧品は気軽に角質ケアを始めたい時におすすめです。ただし、化粧品はpHも濃度も刺激性に考慮して調整されていることもあって、思ったほどの効果を実感できない、と感じる人がいるかもしれません。そのような場合には美容皮膚科に相談してみましょう。美容皮膚科には、サリチル酸を使ったピーリングなど様々な選択肢があります。自分に合った施術を知りたい人は、一度、美容皮膚科で相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • グリコール酸は自然由来のAHAの一種で、特に角質ケアやピーリングに効果のある成分
  • ターンオーバーの乱れは肌トラブルを引き起こし、グリコール酸はその改善に役立つ
  • グリコール酸配合化粧品を選ぶ際は、配合濃度やpHが調整された製品を選ぶことが重要である
  • グリコール酸配合の化粧品を初めて使う際には、少量から始め、肌の状態を見ながら使用することが推奨される
  • 本格的なケアを望む場合は美容皮膚科で適切な治療法を相談するとよい