レチノールに似た効果を持つと言われるバクチオールとは?違いや併用するメリットを解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「次世代レチノール」と言われる「バクチオール」。レチノールと似た働きがあると言われていますが、実際にどのような成分なのでしょうか。今回は、バクチオールについて解説します。レチノールとの違いや併用のメリットについても詳しくご紹介します。

「バクチオール」とはどんな成分?

バクチオールは「オランダビユ」というマメ科の植物の種子から抽出された成分です。オランダビユはインドのアーユルヴェーダや東洋医学で昔から使われていましたが、その後の研究で、バクチオールがレチノールと似た働きがあることが分かり、近年、注目されています。
バクチオールに期待できると言われる美容効果をご紹介していきましょう。

〇ターンオーバーを促す

ヒトの皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織という3層構造をしています。そのうち表皮はさらに4つの層(外側から角層、顆粒層、有棘層:ゆうきょくそう、基底層)に分けられ、最も深い部分にある基底層で、新しい細胞が作られています。新しい細胞が成長すると、徐々に角層に向かって押し上げられていき、古くなった細胞は最終的に垢として剥がれ落ちていきます。これがターンオーバーです。ターンオーバーがスムーズに行われなくなると、毛穴の詰まりやニキビ、ごわつき、乾燥、シミ、くすみなどの原因になります。
バクチオールにはターンオーバーを促す作用があり、こうした肌トラブルを予防する効果が期待できます。

〇コラーゲンの生成を促す

表皮の奥にある真皮には、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などがあり、肌のうるおいやツヤ、ハリなどを維持する上で重要な役割を果たしています。これらの細胞のもとになっているのが、線維芽細胞です。バクチオールには線維芽細胞の働きを活性化させる作用があり、コラーゲンなどの生成を促す働きがあると言われています。またバクチオールには、コラーゲンを分解する酵素の働きを阻害する作用があることもわかっています。

〇肌を保護して老化を予防する

バクチオールには抗酸化作用があります。加齢や紫外線などの影響で活性酸素が増え、酸化ストレスが蓄積すると、皮膚の細胞が損傷し、老化が促されます。バクチオールには、そのような酸化ストレスから肌を守る作用があります。

〇肌荒れを予防する

バクチオールには抗炎症作用や抗菌作用があります。毛穴で起きた炎症を抑え、ニキビなどの肌荒れを予防する効果が期待できます。

こうした働きがレチノールと似ていることから、バクチオールは「第2のレチノール」や「次世代レチノール」と言われ、注目されています。

バクチオールとレチノールの違い:バクチオールは「レチノール」の弱点を克服してくれる成分!?

バクチオールと似ていると言われるレチノールはビタミンAの一種で、ターンオーバーの促進作用や、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促す作用、皮脂量をコントロールする作用、紫外線から細胞を守る作用などがあります。こうした作用から、アンチエイジング効果や肌トラブルの予防などが期待され、美容成分として様々な化粧品に配合されています。
その一方で、レチノールは美容成分として使う上で、次のように大きく2つの難点があると言われています。

(1)刺激性がやや高い

レチノールは含有されている濃度によりますが、主に使い始めた直後に、赤みや皮剥け、ヒリヒリ感、乾燥感などの症状が現れやすい成分です。これらは「レチノイド反応」や「A反応」と呼ばれています。レチノイド反応は、もともと肌にビタミンAが不足している場合に起こりやすく、急速にターンオーバーが促されることで生じるものと考えられています。使用直後に症状が出ると、「肌に合わなかったんだ」と使用をやめてしまいたくなりますが、レチノイド反応は使い続けていくことで次第に治まっていくものです。ただそれでも、もともと肌が敏感な人にとって、レチノイド反応が起こり得るレチノールは、気軽に試しにくい成分かもしれません。

(2)熱や光に弱く、酸化しやすい

レチノールは、熱や光に弱い、酸化しやすい、という性質があります。そのため、一般的に日中ではなく、夜のケアで使用することが推奨されています。また、保管方法にも注意が必要で、直射日光が当たる場所や高温になりやすい場所などでの保管は厳禁とされています。

このような性質から、レチノールは「効果はありそうだけど使いにくい成分」として、認識している人が少なくないでしょう。そこで注目されるようになったのが、レチノールと似た働きのあるバクチオールです。バクチオールは、刺激性が少なく、レチノイド反応のような症状が起こりにくい成分です。また、成分としての安定性が高いため、熱や光、酸化などによって性質が変化する心配がなく、日中のケアにも使用できます。このような理由で、バクチオールは「レチノールと似た、取り入れやすい成分」として注目を集めています。
ただし、効果についてはレチノールのほうが高いと言われています。個人差はありますが、肌への刺激が気にならず、より効果を実感したい場合には、レチノールのほうが合っているかもしれません。しかし、バクチオールもお伝えしたような作用はあるため、刺激の少なさや使いやすさを重視したい人は、日々のスキンケアに取り入れてみると良いでしょう。

バクチオールとレチノールを併用するメリットや併用可能な成分について

バクチオールとレチノールは併用することが可能です。しかも、併用することで、レチノールの安定性が増すというメリットもあります。また、レチノールによる赤みや刺激感などを軽減してくれるといった効果が期待できます。
さらにバクチオールは、他の成分との併用も可能です。特に、レチノールでは併用が不向きとされているビタミンCと一緒に使うこともできます。レチノールとビタミンCは、pH(ピーエイチ:水溶液の性質を示す指標)が異なるため、併用すると効果を実感しにくくなる可能性があります。一方で、バクチオールはそのような心配がなく、ビタミンCと併用することが可能です。
その他の成分を含め、バクチオールは併用不可とされるものが基本的にはありません。しかし、実際に併用して肌にどのような反応が出るのかは、人によって異なります。一緒に使ってみて何か症状が出たり、違和感がある場合には、どちらかの使用を中止するほうが安心です。

今回はバクチオールについてご紹介しました。「レチノールを使ってみたいけど、刺激が心配」という人は、バクチオール配合の化粧品を試してみると良いかもしれません。

まとめ

  • バクチオールは、オランダビユの種子から抽出された植物成分であり、ターンオーバー促進やコラーゲン生成、抗酸化作用、抗炎症作用を持つ
  • バクチオールはレチノールに似た作用を持つが、刺激が少なく、成分の安定性が高い
  • レチノールは効果が高いが、刺激が強く、熱や光に弱いという欠点がある
  • バクチオールは、レチノールの刺激が気になる人にとって、より取り入れやすい成分である
  • バクチオールはレチノールやビタミンCなど、様々な成分と併用ができる
  • バクチオールはレチノールと併用することで、レチノールによる赤みや刺激感などを軽減する効果が期待できる