医療コラム
目の周りの白いぶつぶつ、稗粒腫(はいりゅうしゅ)の中身って?原因や除去方法を解説。
いつの間にかできている目の周りの白いブツブツ。「ニキビみたいだけど、なかなか治らないな・・・」という場合は、稗粒腫の可能性があります。では、稗粒腫とはどんなものなのでしょうか。特徴や原因、除去方法などを詳しく解説します。
稗粒腫とは
稗粒腫とは、目の周りなどにできる1~2mmほどの盛り上がったブツブツ(丘疹:きゅうしん)のことです。見た目が穀物の稗(ヒエ)に似ていることから、「稗粒腫」と名付けられたと言われています。
手足や陰部など、身体のどこにでもできる可能性がありますが、最もよく見られるのは、まぶたや目の下など目の周りです。外傷の治癒過程で生じることもあります。乳児は鼻や顎にできることもあります。数も様々で、数個だけの場合もあれば、一か所にまとまって多数できる場合もあります。
色は白色~黄白色をしており、触れるとしこりのような硬さを感じるのが特徴です。見た目から白ニキビと間違われることがありますが、白ニキビと違って痛みや炎症が生じることはありません。
稗粒腫の中身
しこりのような感触のある稗粒腫。「脂肪が詰まっているの?」と思われることがありますが、その中身は角質(ケラチン)です。ケラチンはもともと身体にある成分の一つであり、皮膚の角質層などを形成するのに欠かせないものです。通常、角質は古くなるとターンオーバー(皮膚の新陳代謝)によって剥がれ落ちていきます。ところが、先天的な原因、もしくはその他の外的要因によって、汗管の開口部あたりに袋状の構造物ができ、そこに角質(ケラチン)が溜まることがあります。そして、それが排出されずに固まると稗粒腫になります。
稗粒腫の原因
稗粒腫の原因は、まだはっきりとは解明されていません。ただし、先天的な影響でできる「原発性」のものと、皮膚の疾患や外部の刺激によってできる「続発性」のものがあると考えられています。
〇原発性の稗粒腫
胎児期に嚢腫(袋状のもの)が作られることで、できる稗粒腫です。妊娠中のホルモンバランスや汗腺の未発達などが関係しているという説もありますが、詳しいことはまだわかっていません。原発性の稗粒腫は、そのほとんどが成長とともに自然に消失しますが、成長しても消えずに残ってしまう場合もあります。
○続発性の稗粒腫
皮膚の組織が破壊され、治癒する過程で嚢腫ができることで発生します。切り傷や擦り傷、やけど、皮膚炎がきっかけとなったり、手術痕や水疱瘡の跡にできることもあります。また、皮膚を擦る、圧迫するなど、傷痕が残らない程度の刺激でもできる恐れがあるため、注意が必要です。特に目元はできやすい場所で再発することもあるため、擦らないようにすることが大切です。
その他、先天的疾患や薬剤が原因となる場合もあります。また、特に当てはまる原因がなく、自然にできることもあると言われています。
詳しい原因がわかっていない稗粒腫ですが、女性、水ぶくれのできやすい体質の人、汗を多くかく人はできやすい傾向があります。また、角質が詰まることでできるため、ターンオーバーが乱れやすいことも、稗粒腫の要因になります。
稗粒腫は自分で除去できる?
稗粒腫は痒みや痛みを伴わず感染力もないため、治療せず放置しておいても問題ありません。しかし、見た目上の問題や、メイクやムダ毛処理の邪魔になるなどの理由から、治療を希望する人もいます。
お伝えしたように、大人になっても残っている稗粒腫は、自然に消えることがないため、皮膚科などでの治療が必要です。中には、「自分でも除去できそう」と思い試してしまう人がいますが、稗粒腫を素人が簡単に取ることはできません。皮膚にダメージを与えてしまい、炎症や細菌感染を起こしたり、傷跡や色素沈着が残ったりする恐れがあるため、絶対にやめましょう。また、ニキビ、水いぼ、脂肪腫、汗管腫、粉瘤(アテローム)など、稗粒腫には見た目が似ている皮膚疾患がたくさんあります。水いぼの場合は感染力があるため、不用意に触ったりつぶしたりすると、周囲に感染させてしまう可能性があります。「白いブツブツが気になるな・・・」という時は、皮膚科を受診し、きちんと診療してもらいましょう。
皮膚科で受けられる稗粒腫の治療法
皮膚科では、次の方法で稗粒腫を除去します。
〇圧出法
メスや注射針で稗粒腫の表面に小さな穴を開け、ピンセットなどで圧迫して中に詰まっている角質を押し出します。圧迫する時に多少の痛みを感じますが、麻酔がなくても気にならない程度です。出血や赤みを生じることがありますが、ほとんどはすぐに治まります。メスや注射針で開けた傷痕は数日すると塞がり、1週間ほどで痕を残さずきれいになります。
〇炭酸ガスレーザー
炭酸ガスレーザーを照射し、皮膚内の水分と炭酸ガスを反応させて熱エネルギーを発生させます。発生した熱エネルギーが冷める過程で、稗粒腫の組織を破壊して除去します。
局所麻酔を使用した場合は、施術中に痛みを感じることはありません。治療後に患部の皮膚が少し凹むことがありますが、数ヶ月すると目立たなくなります。また、治療後にできるかさぶたは1~2週間で自然に剥がれ落ち、赤みは1~3ヶ月で良くなります。
炭酸ガスレーザーは熱エネルギーによって病変そのものを除去できるため、再発率が低い治療法です。
「稗粒腫かな」と思ったら美容皮膚科に相談を
大人になってからできた稗粒腫が自然に消えることは少ないため、気になる人は治療を検討してみましょう。くれぐれも自分で除去することは控え、必ず皮膚科で治療を受けましょう。
まとめ
- 稗粒腫は目の周りによくできる丘疹で、乳児や成人女性によくみられる
- 稗粒腫は1~2mm程度の大きさで白色~黄白色をしており、中には角質であるケラチンが入っている
- 稗粒腫には、先天的な要因による原発性のものと、外部からの刺激などによる続発性のものに分けられる
- 原発性のものは自然に消えることが多いが、成長してからできる続発性のものが自然に消えることは少ない
- 稗粒腫は痒みや痛みを伴わず感染力もないため必ずしも治療を必要としないが、外見上の問題から治療を希望する人もいる
- 稗粒腫は自分で除去すると皮膚にダメージを与えてしまうため、皮膚科で治療してもらうとよい
- 皮膚科で行われる稗粒腫の治療には、圧出法、炭酸ガスレーザーなどがある