「いぼ」はどうしてできる?部位ごとの原因と治療方法を紹介

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

身体のいろいろな部分にできるポツッとした「いぼ」。とくに首など、人目につく場所にできて気になることもあります。
いぼができる原因は、部位にもよってもさまざまです。気になるからといってやみくもに触らず、原因にあった治療を受けることが大切です。今回は、「いぼ」ができる原因と治療法を部位別にご紹介します。

「いぼ」ってなに?

皮膚に盛り上がってできる小さな突起物を、一般的に「いぼ」と呼んでいますが、医学的には「疣贅(ゆうぜい)」といいます。いぼができる原因は大きく分けて2つあります。ウイルスに感染してできるものと、加齢や体質によってできるものです。いぼは基本的に良性のできものですが、非対称の形をしている、色ムラがある、周りの皮膚との境目があいまい、といったケースでは、悪性腫瘍の可能性も否定できません。気になる場合は早めに病院を受診しましょう。

今回は、次の5種類のいぼについて詳しくご説明します。

〇ウイルスが原因のいぼ

(1)尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)・青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)
(2)伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)
(3)尖圭(せんけい)コンジローマ

○加齢や体質によるいぼ

(1)首いぼ
(2)脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)

それでは、詳しい原因とそれぞれの特徴をみていきましょう。

ウイルスが原因のいぼ(1) 尋常性疣贅・青年性扁平疣贅

皮膚にできた小さなキズから「ヒトパピローマウイルス」というウイルスが侵入し、角化細胞に感染することが原因でできるいぼです。なかでも、手の指や足の裏などにできやすいのが「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」です。プールや温泉などの脱衣所や、感染している家族が使ったタオルなどが感染ルートになりやすいです。はじめは小さないぼですが、数mm~1cm程度の大きさになるケースも見られ、足の裏にできると「うおのめ」と勘違いされることもあります。子どもに多く現れますが、大人も増加傾向といわれています。
また、「青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)」はとくに若い女性に多いとされています。これはシミに似た淡い褐色のいぼで、表面がなめらかな突起が額の両脇や頬、手などにできます。自分の皮膚同士で感染しやすく、数が増えることもありますので注意が必要です。
どちらのいぼも、触っていると他の部位に広がったり、他の人にうつしたりしてしまうため、早めの対応が肝心です。市販の軟膏などを使っても良いのですが、誤って使用すると悪化する可能性もあります。なかなか治らない場合は、皮膚科を受診するほうが安心でしょう。病院で受ける治療としては、内服薬や皮膚が厚くなっている部分を溶かす薬の塗布、液体窒素による凍結療法のほか、炭酸ガスレーザーで削る方法などが挙げられます。どの治療にするかは、いぼができている部分や症状に合わせて選択されます。完治するまで少々時間はかかりますが、根気よく続けることが大切です。

ウイルスが原因のいぼ(2) 伝染性軟属腫

医学的には「伝染性軟属腫」と呼ばれる、小さな子どもによく見られる「水いぼ」です。「伝染性軟属腫ウイルス」への感染が原因で、肌色~ピンク色をした直径1~3mm程度の小さないぼが、顔や背中、胸、おなか、わき、おしり、手足や肘・膝の内側などにできます。直接皮膚に触れることで感染するほか、タオルや浮き輪などを介しても感染するため、保育園や幼稚園などのプールで広がりやすくなっています。
痛みや痒みは少なく、半年から数年で自然に治る事例が多いので、基本的には様子見ということになります。

ウイルスが原因のいぼ(3) 尖圭(せんけい)コンジローマ

ヒトパピローマウイルスの感染によって性器や肛門の周囲にできるいぼで、性感染症のひとつです。性行為による感染が多く、オーラルセックスで口に感染するケースも見られます。身体の外側の見えやすいところに多くできる場合もあれば、内側の見えにくいところにできる場合もあります。
ひとことで「ヒトパピローマウイルス」といっても、その種類は100種類以上もあるといわれ、感染したウイルスの種類によって症状の現れかたもさまざまです。タイプによっては、感染するとがんのリスクが高まると考えられているウイルスもあります。
治療としては、液体窒素による凍結療法や炭酸ガスレーザーが挙げられます。目に見えなくてもウイルスが潜在している可能性は否めません。感染が心配なときは早急に医師に確認をして、パートナーがいるのであれば一緒に治療を受けることも大切です。

加齢や体質によるいぼ(1) 首いぼ

首すじやデコルテ部分にできるいぼは、おもに「アクロコルドン」と言われますが、ほかにも「スキンダック」や「軟性線維腫」とも呼ばれます。年齢だけではなく、紫外線によるダメージや摩擦、遺伝的な体質なども関わっていると考えられています。加齢に伴って目立つ傾向がありますが、早い人では20代で発症します。肌に近い色でやわらかく、直径1㎜以下~数mmのいぼがたくさんできたり、または、直径1~2cmのいぼが一つだけできたりします。基本的には良性のため問題ありませんが、目立って気になる場合は、ハサミや炭酸ガスレーザーで切除するなどの治療を受けられます。
首いぼの予防や増やさないようにするためには、日頃から紫外線対策に気を配り、首周りに密着する服やネックレスはできるだけ控えるなど、皮膚への刺激を少なくする工夫が必要です。

加齢や体質によるいぼ(2) 脂漏性角化症

「脂漏性角化症」は加齢によってできるいぼで、別名「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」とも呼ばれます。顔や手の甲、胸、背中、腰などにできる良性のいぼで、皮膚に近い色や茶~黒色のものがほとんどです。皮膚の老化や紫外線の影響で、表皮のメラニン色素が増え、厚くなることによってできます。表面がザラザラしているのが特徴で、ほくろのようなものから1~2cm程度の大きさになるものまであります。脂漏性角化症は良性で治療の必要はありません。しかし、顔など目立つところにできて気になる場合は、治療によって除去することも可能です。治療としては、凍結療法や外科治療や炭酸ガスレーザー治療などが挙げられます。

いぼの原因や種類はさまざま

このように、ひとくちに「いぼ」といっても原因や種類は多種多様です。今回ご紹介したいぼ以外にも、頭皮や背中にできるものや、ニキビやそれ以外のデキモノとの区別が紛らわしいものもあります。
原因がはっきりしないときは、安易にセルフケアをせず、病院で診断を受けましょう。とくにウイルス性のいぼは早めの治療が重要です。また、良性であっても、いぼかどうかわからず悩みの種になっている場合は、一度医師に相談してみましょう。切除して取り除ける可能性もあります。

まとめ

  • 一般的にいぼと呼ばれる皮膚の小さな突起物は、医学的には「疣贅」という
  • いぼの原因はおもにウイルスによるものと、加齢や体質によるものに分けられる
  • ウイルスが原因でできる代表的ないぼに、尋常性疣贅や青年性扁平疣贅がある
  • 水いぼも、伝染性軟属腫ウイルスの感染によってできるウイルス性のいぼである
  • 尖圭コンジローマは、性行為による感染が多く、性感染症の一つである
  • 首いぼはおもにアクロコルドンと呼ばれ、加齢や体質によってできることが多い
  • 加齢によってできる代表的ないぼに、脂漏性角化症がある
  • いぼは悪性の可能性もあるので、原因がはっきりしない場合は早めに診断を受けることが大切である
  • 良性のいぼでも、治療で切除できる場合もあるので、悩みの種になっている人は医師に相談するとよい