これからはじめるタイプ別エイジングケア 自分に合う美容皮膚科の施術の見つけ方

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

年齢とともに気になってくるしわやたるみ。「エイジングケアを始めよう!」と決意はしてみたものの、「実際何をしたらいいの?」と迷ってしまう人が多いのではないでしょうか。そこで今回は、悩みのタイプ別におすすめの施術を紹介します。

肌の仕組みを知ろう

エイジングケアを正しく理解するために、まずはお肌のしくみを知っておきましょう。私たちの皮膚は、一番外側にある表皮と、表皮の下にある土台部分の真皮、そして表皮と真皮を支える皮下組織の3層構造になっています。

〇表皮

もっとも外側の角層とそれ以外の複数の層で構成されています。外部の刺激から身体を守る、肌のうるおいを保つといった働きをしています。

〇真皮

真皮の重要な役割は、肌の弾力を保つこと。また、毛細血管を介して酸素や栄養を肌のすみずみまで届けています。真皮の主成分であるたんぱく質「コラーゲン」は、網目状のネットワークを形成して弾力をキープします。そのため、ベットマットレスのスプリングに例えられることもあります。そして、ゴムのような線維「エラスチン」は、コラーゲンを繋ぎとめ、支える働きをしています。コラーゲンとエラスチンが作る構造のすき間に存在する、ゼリー状の物質が「ヒアルロン酸」です。

〇皮下組織

皮下組織は皮下脂肪や筋肉を含む組織で、さらにその奥には骨があります。

しわ、たるみ...根本的な原因は同じ!

ところで、加齢に伴い出現するしわやたるみは、どこから始まるのでしょうか。老け顔の象徴ともいえるこのお悩み、実は根本的な原因は同じで、その大きな原因の一つはコラーゲンの減少です。紫外線から受けるダメージや加齢によって、真皮のコラーゲンは変性したり劣化したりします。そうすると肌は弾力を失い、皮膚が薄く硬くなっていきます。やがて、顔つきや表情のくせなどによって折りたたまれる部分に、しわが残るようになるのです。また、コラーゲンや線維が減ると、肌の土台となっていた構造が崩れ、皮膚が垂れ下がっていきます。頬の脂肪を支える皮膚が垂れ下がるということは、頬の位置も下がってほうれい線ができますし、フェイスラインの皮膚がたるめば二重あごになります。さらに、それらのたるみが原因で新たにしわができるなど、様々な肌トラブルに連鎖していきます。このように、コラーゲンの減少はしわやたるみができることと深く関わっているのです。

エイジングケアの前に根本的な原因を見つける!

もちろん、しわやたるみの原因は、コラーゲンの減少だけではありません。たとえば、乾燥によってできるちりめんジワや、脂肪の増加や筋肉の衰えから生じるしわ、骨格が変性して起こるたるみなど、原因によって現れる症状もさまざまです。
解決策として、エイジング効果を期待できる化粧品を取り入れる、しわやたるみを予防するために顔の筋トレを行う、といった方法も多少は有効でしょう。しかし、自己判断で続けているスキンケアや筋トレが、かえってしわやたるみを悪化させることもあります。ですから、本気で「エイジングケアを始めたい!」という人は、皮膚科などで受けられる美容治療という方法も検討してみましょう。セルフケアより高い効果を期待できることもあり、美容治療のニーズは急速に高まっています。ただし、治療方法や施術内容は病院によって大きく異なりますので、悩みのタイプ別に施術をご紹介します。ぜひ自分に合うエイジングケアを見つける参考にしてください。

タイプ別施術(1)乾燥や細かいしわが気になるタイプ

顔全体の細かいちりめんジワや乾燥肌に悩んでいるあなた、お肌に良かれと思って、化粧水をたたくようにパッティングしたり、拭き取りタイプのクレンジングでゴシゴシこすったり、強い力でマッサージをしたりしていませんか。たたく、こする、引っ張るといった刺激は、肌にダメージを与え、乾燥やしわの原因になることがあります。ケアの見直しはもちろんのこと、ちりめんジワを目立たなくするためには、真皮にあるコラーゲンやエラスチンを活性化させる治療が有効です。ケミカルピーリングで肌のキメを整え、イオン導入やケアシスなどの施術を行います。保湿力の高い美容成分が浸透すると、肌の保湿力がアップし、細かいしわの改善が期待できます。マッサージをして真皮層まで浸透させコラーゲン増生を促すコラーゲンピールや、ヒアルロン酸を真皮の浅い層に広範囲に注入し肌の潤いとハリを出す水光注射もおすすめです。

タイプ別施術(2)眉間やおでこにくっきりの表情ジワが気になるタイプ

気づかないうちに眉間にしわを寄せている、表情が豊かで目を見開くことが多い、そういう人は、眉間やおでこなど、特定の部位に折り目のような表情ジワが残りやすくなります。たいていの場合は無意識に行っていますので、繰り返すほどにしわはくっきりと深くなっていきます。このタイプに有効な治療法は、ボツリヌス注射です。ボツリヌス菌が作り出す成分をしわの部分に注射すると、筋肉の動きが緩和され、表情ジワが目立ちにくくなります。

タイプ別施術(3)たるみとしわが気になるタイプ

頬の肉付きやたるみ、それに伴うしわが気になるのは、丸顔やぽっちゃり体型の人だけではありません。コラーゲンが減少すると、ハリや弾力が低下して皮膚がたるみ、二重あごや輪郭が崩れるといった悩みが出てきます。また、このタイプの原因には、姿勢の悪さや筋肉の衰え、骨格の歪みなどが関わっている可能性も考えられます。
たるみの改善には弾力を取り戻すことが必要不可欠ですが、フェイスラインを引き締めようとして、手で引き上げるようなマッサージをしても効果は期待できません。ハリや弾力を回復する施術には、HIFU(高密度焦点式超音波)やラジオ波(RF)やレーザー、医療用LEDなどを利用する方法があります。皮膚の深い部分に働きかけ、コラーゲンやエラスチンの再生を促します。

タイプ別施術(4)深く刻まれたしわが目立つタイプ

ほうれい線など深くくっきりと刻まれたしわは、セルフケアで改善を図るのはなかなか難しいものです。顔の筋トレなども予防法として推奨されていますが、例えば口を大きく開けるようなエクササイズは、かえってしわを深くするリスクも含んでいます。また、口を閉じたまま舌をぐるぐる回す、マウスピースを使う、といった方法は、無理なく行えばある程度の効果は期待できます。しかし、一度刻まれたしわを消すことは困難でしょう。
このようなしわは、たるみの改善だけでは取り除けませんので、治療としてはヒアルロン酸注入が一般的です。しわの部分に沿ってヒアルロン酸を注入すると、ほうれい線などの深いしわが目立ちにくくなります。

エイジングケアの第一歩は...顔のタイプや悩みの原因を知ること

ここまでお伝えしてきたように、一言でたるみやしわといっても、原因や症状の現れ方は多種多様です。改善への第一歩は、自分の顔のタイプや悩みの原因を知ることです。今回は、現時点における代表的な施術例をご紹介しましたが、美容医療の進歩はめざましく、次々と新しい技術が生まれています。そして、エイジングケアを目的とした施術は、一度受ければ治るという類のものではありません。ほとんどの施術は、症状や悩みの程度、理想とする肌の状態を考えながら、継続していく必要があります。だからこそ、主体的に肌の状態を見極め、施術方法を理解し、信頼のおける病院を見つけることが大切になります。老化は誰にでも訪れますが、肌に自信を持ってはつらつと過ごせるように、自分に合ったエイジングケアを見つけましょう。

まとめ

  • 肌は外側から表皮、真皮、皮下組織という3層構造で成り立っている
  • 真皮にあるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸が肌の弾力を保っている
  • 紫外線がもたらすダメージや加齢によりコラーゲンが減少すると、たるみやしわが生じる
  • 顔のタイプや悩みの原因によって、効果のある施術は異なる
  • 乾燥や細かいしわを改善するには、コラーゲンなどを活性化する施術が有効
  • 表情ジワは、ボツリヌス注射によって目立ちにくくなる
  • たるみやしわは、皮膚の深部に働きかけ、コラーゲンなどの再生を促すことが重要
  • 深く刻まれたしわは、ヒアルロン酸注射で改善する
  • 主体的に自分の肌を知り、信頼のおける病院を見つけることがエイジングケアの第一歩