赤ら顔は治せるの?Vビームレーザーなど、皮膚科でできる治療法って?

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

顔全体がほてったようになったり、頬や鼻のまわりに赤みが出たりする赤ら顔。「気になるけれど仕方がないもの」と諦めていませんか。でも、赤ら顔は病院の治療で改善する可能性があります。そこで、症状や皮膚科での治療法などについて解説します。

赤ら顔とは

赤ら顔は、皮膚の表面近くにある毛細血管が拡がって透けてみえることで、顔が赤くなる状態の総称です。ひと言で「赤ら顔」といってもその症状はさまざま。いつも頬がりんごのように赤い、こするなどのちょっとした刺激ですぐに顔が赤くなる、赤いシミやできものが目立つなど、いろいろな症状がありますが、これらはすべて「赤ら顔」と呼ばれています。
また、考えられる原因もさまざまです。たとえば、いわゆる「あがり症(人前に出た際の緊張やストレスで顔が赤くなる)」や更年期の症状のように、自律神経の乱れなどが原因で赤ら顔になる人もいます。あるいは、皮膚が薄い、色白であるなどの体質に、誤ったスキンケアや加齢などの要因が重なることで、顔が赤くなってしまうこともあります。さらに、何らかの皮膚疾患の症状として顔に赤みが出てしまうことも珍しくありません。そこで、赤ら顔の原因となり得る皮膚疾患について、詳しくご紹介していきます。

赤ら顔と皮膚疾患

〇毛細血管拡張症

何らかの原因により毛細血管が拡張してしまう病気です。血管が拡がったまま戻らないので、小鼻まわりや頬の細い血管が目立つようになります。

〇単純性血管腫・いちご状血管腫

皮膚表面の血管に局所的な異常が起こるもので、「赤アザ」とも呼ばれます。単純性血管腫は表面の平坦な赤アザが生まれつきできるものです。成長とともに隆起したり、色が変化することがありますが、基本的に自然に治ることはありません。
これに対していちご状血管腫は、凹凸のある赤あざができるもので、別名で「乳児血管腫」と呼ばれています。生まれつきのことも多く、生後2~3週間から遅くとも3か月以内に発生しますが、成長とともに消えていくことがほとんどです。

〇老人性血管腫

顔に限らず、胸元や背中、腕など、身体のあちこちに赤い点が現れます。名前に「老人性」とありますが、20代や30代の頃から発症します。

〇湿疹、ニキビ、アトピー性皮膚炎など

顔に炎症が起きて、赤みが出ることがあります。

〇酒さ(しゅさ)

中年以降の女性に多い皮膚疾患です。正確な原因はわかっていませんが、遺伝や紫外線など、いくつかの要因が重なって起こるとみられています。以下の通り、大きく4つに分類されています。

  1. (1)頬、眉間、下あごなどに赤みが出るタイプ
  2. (2)毛穴まわりの炎症が悪化し、赤くポツポツとしたニキビのようなものができるタイプ
  3. (3)鼻の皮膚が分厚くなって凹凸が目立つタイプ
  4. (4)目のまわりが腫れたり、結膜炎や角膜炎などがともなうタイプ

〇酒さ様(しゅさよう)皮膚炎

酒さと同じように頬や口のまわりが赤くなる皮膚炎ですが、ほとんどの場合、ステロイド外用剤の副作用と考えられています。

〇脂漏性皮膚炎

皮脂の分泌が多い鼻のまわりなどで起こりやすい皮膚炎です。過剰な皮脂をエサに、常在菌の一つであるカビが増殖することで発症します。炎症が起こって赤みやかゆみ、湿疹などの症状が出ます。

赤ら顔の対処法

赤ら顔の症状を改善するためには、原因に合わせた対処法が必要になります。たとえば、暑いところにいる時や辛いものを食べた時に赤みが出やすい、冷たい風に吹かれると赤くなるなど、何らかのきっかけがある場合には、できるだけそのような状況を避けるようにするのも、有効な対処法の一つになるでしょう。また、とくに敏感肌の人や肌荒れなどが影響している人は、日常的なケアや紫外線対策を見直して、肌に負担をかけないようにすることも重要です。
さらに、皮膚疾患が関係しているケースでは、原因となっている病気の治療が欠かせません。アトピー性皮膚炎やニキビ、湿疹などがきっかけになっているのであれば、皮膚科を受診して治療を受けましょう。また、自分では原因がよくわからない場合や、かゆみや痛みなど、ほかの症状をともなう場合も、皮膚科で相談することをおすすめします。自己判断で誤ったケアを続けていると症状が悪化してしまう可能性があるので、早めの受診が改善への近道です。

皮膚科で受けられる赤ら顔の治療法

皮膚科では、専門医が症状の程度や血管の太さ、深さなどを確認した上で治療法が決定されます。
たとえば、毛穴のまわりで炎症が起こり赤いポツポツが目立つ場合には、薬物療法が有効とされています。よく使用されるのは、「ビブラマイシン」や「ミノマイシン」などの抗菌薬です。これらの飲み薬を2〜3か月間内服し、あわせて生活習慣やスキンケアを見直すことで、症状が改善することがあります。また、「ニキビダニ」の増殖が原因となっているケースでは、通常のニキビを治す抗菌薬は効かないので、別の治療薬が処方されます。
このように薬物療法でよくなることもありますが、血管が拡張し赤みが出ているようなケースなどは、薬では改善しない傾向があります。そのような場合に効果を期待できるのが、「Vビームレーザー」です。

赤ら顔の治療で使われる「Vビームレーザー」とは?

Vビームレーザーとは、ヘモグロビンに最も吸収される波長の光を照射する機器で、正常な組織を破壊せずに、赤みの目立つ部分に働きかけることができます。1〜3か月に1回のペースで3〜5回ほど治療を継続すると、血管の開きが改善されて赤みが目立ちにくくなります。
治療後に痛みや赤みが出たり、水ぶくれや内出血ができたりする可能性がありますが、次第に落ち着きます。症状が強いときには塗り薬などが処方されますので、主治医に相談しましょう。
なお、Vビームレーザーは、毛細血管拡張症や血管腫のように保険の適応になるものと、老人性血管腫のように保険適応にならないものとがありますので、皮膚科で確認するようにしましょう。

赤ら顔に悩む人は、専門医に相談を

赤ら顔の治療は日本よりも欧米のほうが進んでいて、海外ではスタンダードな治療薬が、日本では保険の適応外となっていることもあります。それでも皮膚科に行くと、さまざまな選択肢を踏まえて治療法を相談することができます。赤ら顔に悩んでいる人は、まずは病院を受診してみましょう。

まとめ

  • 赤ら顔は、皮膚の表面近くにある毛細血管が拡張し、透けてみえることによって、顔が赤くなる状態の総称
  • 頬がりんごのように赤くなる状態や、赤いできものが目立つケースなども赤ら顔と呼ばれる
  • 原因はさまざまで、自律神経の乱れが関係しているものや、遺伝的な体質にほかの要因が加わって起こっているもの、皮膚疾患が影響しているものなどがある
  • 赤ら顔を引き起こす皮膚疾患には、毛細血管拡張症やアトピー性皮膚炎、酒さ、血管腫などがある
  • 赤ら顔を改善するには原因に合わせて対処することが大切だが、皮膚疾患が関係している場合や、原因がわからないもの、ほかに症状があるものについては、病院で相談したほうがよい
  • 赤いポツポツが目立つ場合には、薬物療法が有効なことがある
  • 全体的に赤みが強い場合には、Vビームレーザーによる治療で改善を期待できる
  • 皮膚科にはさまざまな治療の選択肢があるので自分に合う治療法を相談できる