背中のニキビの原因って?ニキビ痕や色素沈着が出来てしまった時の皮膚科での治療もご紹介

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

背中の開いた服や水着などを着る際、背中のニキビが目立ち恥ずかしくなったことはありませんか?自分ではなかなか気が付かない「背中ニキビ」は、知らずしらずのうちに悪化し、痕が残ることもあります。背中ニキビの原因や治療法についてお伝えします。

顔だけではないニキビ

一般的にニキビは顔にできるイメージがありますが、背中や首、肩、胸、お尻など、体のいたるところにできます。その中でも背中は皮脂分泌が多く、意外にも思えますがニキビができやすい部分です。今回は、体にできるニキビの代表として、背中ニキビに注目し、ご説明しましょう。

そもそもニキビとは、医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚の病気です。ニキビそのものの原因としては、皮脂の過剰分泌や毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖が関わっており、毛穴の出口が詰まると「アクネ菌」が過剰に増殖して炎症を起こし、発疹ができると考えられています。

単にニキビといっても、その種類や症状はさまざま。ニキビのでき始めは、「面ぽう」や「コメド」と呼ばれ、毛穴に皮脂が詰まっただけの状態です。続いて初期の段階は、発疹が白っぽく見えるため「白ニキビ」と呼ばれますが、進行してニキビ部分の毛穴が開くと、空気に触れた部分が黒っぽく酸化するため「黒ニキビ」に。さらに炎症が起きたり膿疱になると「赤ニキビ」や「黄色ニキビ」、「紫ニキビ」などと言われる状態になり、なかなか消えづらいニキビ痕やクレーターのような凹みが残ることもあります。

背中ニキビの原因

背中ニキビができやすい原因は、皮脂分泌が多いだけではありません。手が届きづらい背中は、シャンプーやトリートメントのすすぎ残しなど、汚れが落ちづらい部分でもあるため、結果としてニキビができやすくなります。また、衣類やカバンで擦れるなど、外からの刺激や摩擦も皮膚へのダメージとなり、ニキビができたり、悪化しやすい原因となります。

さらに、ホルモンバランスの乱れも背中ニキビができる要因の一つ。偏った食事や運動不足、睡眠不足、過度のストレスといった生活習慣の乱れは、ホルモンのバランスを崩します。私たちの肌は「ターンオーバー」と呼ばれる一定のサイクルで日々新しく生まれ変わっていますが、その働きにはホルモンが関わっています。つまり、ホルモンバランスが乱れる生活を送っていると、ニキビができやすく、またできてしまったニキビも治りにくい状態になるのです。

さらに、自分ではなかなか目につかない背中。ニキビができていても気が付かなかったり、ケアがおろそかになりがちな点も、背中ニキビが悪化しやすい原因の一つと言えるでしょう。

背中ニキビにはカビが関わっていることも?

背中にできたニキビだと思っていたものが、じつは別のできものだった、というケースもあります。

例えば、背中ニキビと間違えられやすい「毛のう炎(毛包炎)」は、毛穴の奥に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌といった細菌が感染し、炎症を引き起こす皮膚の病気です。また、「マラセチア菌」という真菌(カビ)の一種が毛包の中で増殖すると、マラセチア毛包炎という疾患を発症します。これらは赤みのある小さな発疹や皮膚の盛り上がりができるもので、放っておくと膿がたまったり、熱をもってくることもあります。
背中ニキビだと思って様子をみていたり、ニキビの市販薬を使ったりしても改善しない場合は、このように細菌やカビが原因のできものであることも。気になる場合は、早めに病院を受診し、原因にあった治療を受けることが重要です。

背中ニキビの予防とケア

さて、背中ニキビを予防するためには、まず皮膚を清潔に保つことが第一です。背中は皮脂や汗が盛んに分泌されるところですが、そのケアは顔などに比べると忘れられがち。汗をよく吸う肌着を選んだり、汗をかいたらこまめに着替える、などして清潔を保ちましょう。ただし、毎日背中を洗って汚れを落とすことは理想なのですが、過度な刺激はご法度。よく泡立てた洗浄剤で丁寧に洗い、優しくすすいだ上で、保湿ケアも入念に行いましょう。

さらに、ニキビを予防するためには、生活習慣の見直しも肝心です。暴飲暴食は避け、食事の栄養バランスを意識すること、十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムにすることでターンオーバーのサイクルが整い、肌トラブルは起こりにくくなるでしょう。

このような予防方法を心がけていても背中ニキビができてしまった場合は、市販の塗り薬などを使うことも有効です。ただし、それでも改善しない場合は、他の原因が関わっている可能性もあるため、前述の通り早めに病院を受診することをおすすめします。

ニキビ痕や色素沈着の治療法

ここまで背中ニキビの原因や予防法などをお伝えしてきましたが、やはり、なかなか目につかない背中のニキビは自分では気づきにくいものです。痛みを感じるなどして気がついた時には、炎症を起こしていたり、化膿しているケースもあります。そして、そこまで悪化したニキビは、症状がおさまっても、色素沈着やニキビ痕が残りやすく、水着や背中の開いた服を着る際、困ってしまうことに。

ただし、そのようなニキビ痕も、皮膚科の治療で目立ちにくくすることはできます。例えば、ケミカルピーリングは、サリチル酸などの薬剤を用いて古い角質を剥がし、新しい角質の再生を促すもので、ホームケアよりもニキビ痕改善の効果を期待できます。色素沈着には、電圧によりビタミンCを浸透させるビタミンCイオン導入もおすすめです。

背中ニキビは気づきにくく、ケアもしづらいものですが、現在はさまざまな治療法が登場しています。気になる場合は、一度病院で相談してみましょう。

まとめ

  • ニキビができるのは顔だけでなく、とくに背中は皮脂分泌が多いためニキビができやすい
  • 医学的に尋常性ざ瘡と呼ぶニキビには、さまざまな種類や症状がある
  • 背中ニキビの原因には、汚れが残りやすいことやホルモンバランスの乱れも関わっている
  • 背中ニキビと混同しやすい皮膚疾患に「毛のう炎」や「マラセチア毛包炎」等がある
  • 細菌やカビが原因のできものは、放っておくと熱をもったり膿がたまることもある
  • 背中ニキビが治らない場合は、原因の診断も含め早めに医療機関を受診することが必要
  • 背中ニキビを予防するには、皮膚を清潔に保ち、規則正しい生活習慣を送ることが大切
  • ニキビ痕や色素沈着が改善しない場合は、皮膚科の治療で目立ちにくくすることができる
  • 背中ニキビは自分では見えないためケアしづらいが、早めの対処が重要