ニキビに抗生物質による治療は効果がある?その種類やメリット・デメリットについて解説

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

ニキビができた時、どのように対処していますか?
様子を見ていたり、化粧で隠してごまかしていたりする人も多いでしょうが、対処法を間違えると悪化して、跡が残ってしまうことも。そうならないためには、皮膚科を受診して治療を受けることがおすすめです。皮膚科ではおもに薬物療法が行われますが、よく使われる薬の一つに抗生物質があります。そこで、ニキビ治療に使われる抗生物質の種類や、メリット・デメリットなどについて解説します。

ニキビってどんな状態?

そもそもニキビとは、毛穴が詰まってしまい、毛の根元にある毛根を包む「毛嚢(もうのう)」という組織が炎症を起こしてしまう慢性の皮膚疾患です。専門的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれます。
毛穴の詰まりの一因になるのが、肌表面の角層が異常に厚くなってしまう角化異常です。健康な肌では、ターンオーバー(皮膚細胞の生まれ変わり)の機能が働くことによって、古い角質は剥がれ落ちていくため、角質が異常に厚くなってしまうことはありません。ところが、ターンオーバーの乱れや間違ったスキンケアなどの要因が加わると、古い角質が肌表面に残って蓄積してしまい、角化異常を起こしてしまいます。その結果、古い角質で毛穴の入り口がふさがれてしまうと、毛穴内部に皮脂などが溜まるようになり、ニキビの原因になります。
また、皮脂の過剰な分泌もニキビの一因です。特に成長ホルモンの分泌が盛んな思春期は皮脂量が増えるため、ニキビができやすくなります。また、ストレスや過労、ホルモンバランスの変化、間違ったスキンケアなどでも皮脂の分泌量は増えることがあるため、思春期に限らず、成人してもニキビに悩まされる人は少なくありません。

ニキビの経過

毛穴の中に皮脂や汚れなどが溜まると、アクネ菌が増殖して皮膚表面が盛り上がったようになります。これがいわゆる「白ニキビ」と呼ばれる状態で、ニキビの初期段階にあたります。また、白ニキビが酸化して黒ずんだ状態は「黒ニキビ」と呼ばれます。これらの段階で適切に対処すれば、比較的早く改善しニキビ跡も残りにくいのですが、そのまま放っておいたり必要以上に触ったりすると、アクネ菌が増殖して炎症が強くなり、赤みや痛みを伴う「赤ニキビ」へと変化してしまいます。そして、さらに症状が進むと、毛穴内に黄色ブドウ球菌などの細菌が入って膿が溜まって大きく腫れて「黄ニキビ」になってしまうことがあります。この状態になると、治るまでに時間がかかったり、跡が残りやすくなったりするため、自然にキレイに治すことはかなり難しくなります。ですから、ニキビができた時には、早めに皮膚科を受診することが、キレイに治すための近道と言えます。

ニキビ治療 どんな選択肢がある?

皮膚科での治療で最も一般的な方法は、薬物療法です。ニキビの治療薬にはいくつかの種類があり、症状に合ったものが処方されます。たとえば、白ニキビや黒ニキビといった初期の段階では、角化異常や皮脂の過剰な分泌の抑制に効果のあるアダパレンや過酸化ベンゾイルなど、抗生物質ではない外用薬が用いられます。これらの外用薬は再発予防を目的に使われることもあります。また、あわせてビタミン剤や漢方薬などの内服薬が処方されます。
一方、赤ニキビや黄ニキビといった症状の進んだニキビには、抗生物質が有効です。抗生物質には内服薬と外用薬の2種類があり、症状によって併用する場合もあります。
他に、ニキビ内の皮脂や膿を専用の器具やレーザーによって押し出す「面皰(めんぽう)圧出術」と呼ばれる治療法も、保険診療で受けられる治療法の一つです。また、保険適用外にはなりますが、ケミカルピーリングやイオン導入、ケアシス、クリアタッチなどを組み合わせることで、より早く効果的にニキビを改善させることができます。

ニキビ治療に使われる抗生物質の種類

お伝えしたように、ニキビ治療には様々な手段がありますが、特に炎症の強い赤ニキビや黄ニキビを治療する上で、抗生物質は重要な役割を果たします。
そもそも抗生物質とは、他の微生物(細菌など)の成長を抑える働きを持った物質で、おもに細菌やカビなどによって作られたものを指します。たとえば、細菌が原因で起こる病気(マイコプラズマやクラミジアによる感染症)の治療に使われますが、ニキビ治療では、アクネ菌や黄色ブドウ球菌を殺菌する目的で用いられます。
おもに、ニキビ治療で用いられる抗生物質は次のものです。

〇外用薬

患部に塗布することで、アクネ菌や黄色ブドウ球菌の増殖を抑えて、炎症や赤みを改善します。次のような薬があります。

  • クリンダマイシン
  • ナジフロキサシン
  • オゼノキサシン

いずれも軟膏タイプとローションタイプがあり、使用する部位などによって使い分けられています。また、外用薬は内服薬に比べて副作用が出にくいイメージがありますが、まれに痒みやヒリヒリ感、赤み、乾燥感などの症状が出る場合もあるため、使用後に異変を感じた場合には主治医に相談しましょう。

〇内服薬

ニキビ治療に用いられる内服の抗生物質はいくつかありますが、大きく次の3つに分けられます。

  • テトラサイクリン系
    日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡ガイドライン2017」で、赤ニキビなどの内服抗菌薬として推奨されているのが、テトラサイクリン系の「ドキシサイクリン」や「ミノサイクリン」です。赤ニキビや黄にきびの治療に有効で、皮膚科でもよく使われていますが、光線過敏症(日光に反応して皮膚症状が出る)や腹痛、頭痛などの副作用が報告されています。また、ミノサイクリンはドキシサイクリンに比べて、色素沈着やめまいなどの副作用が出やすいと言われています。ちなみに、テトラサイクリン系の抗生物質は他にもありますが、ガイドラインで推奨度が高いのは上記の2つです。
  • マクロライド系
    「ロキシスロマイシン」などが該当します。テトラサイクリン系に比べると効果はおだやかですが、副作用が少ないのが特徴です。
  • ペネム系
    「ファロペネム」などが該当します。他の薬で効果が出なかった場合や、副作用が出てしまった時(もしくは出る可能性がある時)などに使用されます。ファロペネムは副作用の報告は少ないのですが、下痢や軟便など消化器系の症状が出やすい傾向があります。

このように、ニキビ治療に用いられる抗生物質は数種類あります。そのため、皮膚科では症状や、副作用の有無、治療経過(薬の使用後に改善がみられるか)などをみながら、治療薬を選択していきます。

ニキビ治療に使われる抗生物質のメリット・デメリット

お伝えしたように、抗生物質はアクネ菌や黄色ブドウ球菌を抑制する働きがあり、特に赤ニキビや黄ニキビといった中等症から重症のニキビの改善に高い効果を発揮します。そのため、効果的な治療ができる点が抗生物質を使用する大きなメリットと言えるでしょう。
その一方でデメリットとして、吐き気やめまい、下痢、軟便、光線過敏症など様々な副作用が出る可能性があります。ただし、人によって、また使用する薬の種類によって副作用の有無や出方は異なります。そのため過度に心配する必要はありませんが、ニキビの治療を開始した後に薬による副作用が現われた場合には早めに受診し、別の薬に変えてもらうなど、対処法を医師に相談しましょう。
また、抗生物質を使用する際の注意点として、薬剤耐性の問題が挙げられます。ニキビ治療薬に限ったことではありませんが、抗生物質を長期間使い続けていると、細菌が強くなって薬の効果が効きにくくなることがあります。これを防ぐためには、必要以上に長期間、薬を使用しないことが重要です。また、自己判断で薬を中止しないことが大切です。「ニキビが良くなってきたからもう大丈夫だろう」と勝手に使用をやめてしまう人がいますが、治ったと思っていても細菌が残っていることがあります。すると、症状がまた現れたり、薬が効きにくくなってしまったりする可能性があるため要注意です。
なお、妊娠中や授乳中など、抗生物質の使用を控えたほうが良い人もいるため、皮膚科を受診する際には問診表を正確に記載したうえで診察を受けるようにしましょう。

ニキビに悩んでいる人は皮膚科で相談を

ニキビで皮膚科を受診することに対して、大げさに感じる人がいるかもしれませんが、ニキビが悪化すると自然にキレイに治すことは難しくなるため、できるだけ早めに皮膚科で適切な治療を受けることがおすすめです。今回ご紹介したように、ニキビ治療薬は抗生物質をはじめ、いろいろな種類がありますし、方法も様々です。ニキビに悩んでいる人はまずは皮膚科を受診して、適切な治療方法を医師に相談してみましょう。

まとめ

  • ニキビとは、毛穴が詰まってしまうことで、毛の根元にある毛根を包む「毛嚢(もうのう)」という組織が炎症を起こしてしまう慢性の皮膚疾患
  • 毛穴の詰まりを引き起こす原因が、角化異常と皮脂の過剰分泌
  • ニキビは初期段階で適切にケアをすれば跡が残りにくいが、赤ニキビや黄ニキビになるとセルフケアでキレイに治すことは難しくなる
  • 皮膚科での治療法として、薬物療法、面皰圧出術、ケミカルピーリングやイオン導入、ケアシス、クリアタッチなどがある
  • ニキビ治療で使われる抗生物質には、クリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシンなどの外用薬、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ロキシスロマイシン、ファロペネムなどの内服薬がある
  • 抗生物質は特に赤ニキビや黄ニキビの改善に有効だが、副作用が出るリスクや薬剤耐性が起こる可能性がある
  • 抗生物質を使用する際は医師の指示通り正しく使用すること