ほくろの盛り上がりはなぜ起こる?原因や痒みのある時の対処法、除去の必要性について解説。

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

ほくろは基本的に良性のできものですが、盛り上がっていると見た目が気になったり、衣類に引っ掛かったりして困ってしまうことがあります。そこで、ほくろの原因や対処法、除去の必要性について、具体的に解説します。

ほくろとは

ほくろは、医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれる良性の腫瘍です。メラニン色素を作る「メラノサイト」が「母斑細胞(ぼはんさいぼう)」に変質し、細胞の塊を形成することで発生することが明らかになっています。
ほくろは生まれつきのものから、子どもの時に生じるもの、大人になってから目立ってくるものまで様々です。色は茶色から黒色で、はじめは小さなシミのような点状であることが殆どですが、少し大きくなってから成長が止まり、多くは直径5mm以下です。直径が5mmを超えた場合、稀ではありますが、悪性腫瘍などほくろ以外のものである可能性も否定できません。少しずつ大きくなっているものや、周りの皮膚との境目が不明瞭なものがある場合には、早めに皮膚科を受診しましょう。

ほくろが盛り上がる原因

ほくろが盛り上がっていると目立ちやすく、「悪いものでは?」と思う人がいるかもしれません。そもそもほくろは平坦なものや隆起したものなど色々な形があるため、基本的には問題ありません。母斑細胞が変質し増殖する過程で隆起したタイプが、盛り上がるほくろになると考えられています。
また、盛り上がっているほくろと混同しやすい皮膚の病気には、「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」があります。30代以降、加齢に伴って増えやすいため「老人性イボ」と呼ばれることもありますが、良性のできもののため心配はありません。色は褐色から黒色で、ザラザラとしたイボが顔や胸、背中など体の様々な場所にできます。ウイルスが原因ではないため、周りの人にうつることはありませんが、見た目が気になる場合は炭酸ガスレーザーなどで除去することが可能です。この治療は、保険適用外となりますが、医師の判断によっては保険適用内になる場合もあります。
ただし、メラノーマと呼ばれる悪性腫瘍の場合は、早期の治療が必要です。良性か悪性かを見分けるため、皮膚科では病理検査や、ダーモスコピーと呼ばれる機器を使った検査が行われます。

痒みがあるほくろの対処法

盛り上がっているほくろは、見た目が気になるだけでなく、衣類に引っ掛かったり、痒みを感じたりすることもあります。ほくろだけが痒みの原因となることは殆どありませんが、盛り上がっているほくろを引っ掻いてかさぶたができたり、ほくろの周りに湿疹が生じたりすると、痒みが強くなることがあります。そのような症状が出ている場合はできるだけ掻かず、ハンカチなどで包んだ保冷剤などを当てて患部を冷やしましょう。また、ほくろの周りに赤みが生じている時は湿疹の可能性もあるため、市販薬を塗るか、皮膚科を受診することがおすすめです。

自己流のほくろ除去にはリスクが伴う

ほくろが気になるからと言って、頻繁に触ったり、自分で無理に取ろうとするのは厳禁です。手でむやみに触るとほくろや周囲の皮膚が傷ついたり、雑菌が付着して炎症が起こったりするためです。さらに、刺激になってほくろが大きくなったり、悪性化のきっかけになる可能性も否定できません。巷では、ほくろを除去するクリームを塗る、お灸でほくろを取るといった方法を見かけますが、やけどなどのリスクがあるだけでなく、傷跡が残る可能性もあるため、やめておいたほうがよいでしょう。
ほくろがそれ以上大きくなることを予防するためには、紫外線対策が重要です。紫外線を浴びると肌のメラノサイトがメラニンを作り出し、その過程で何らかの刺激が加わるとほくろができます。日焼け止めは天候に関わらず毎日使用し、外出時は帽子や日傘を活用するなどして、ほくろが大きくなったり増えたりしないようにしましょう。

除去したほうがよいほくろとは

ほくろは医学的には良性の腫瘍ですので、無理に除去する必要はありません。ただし、顔などの目立つほくろがコンプレックスになっていたり、ほくろが頻繁に衣類に引っ掛かって気になっているような時には、皮膚科で除去治療を受けることがおすすめです。
皮膚科ではまず、専用の器具を用いて、患部のできものが良性か悪性であるかを診断します。その結果を踏まえて、悪性の可能性が否定しきれない場合や、色素の深いほくろや大きいほくろ、完全に取り除きたいほくろなどは外科的に切除することになります。
局所麻酔を用いた30分程度の日帰り手術で、経過に問題がなければ、翌々日以降はご自宅にて処置を行って頂き、手術から7日後に抜糸を行います。手術後24時間経過してからシャワーが可能となり、抜糸後は日常生活の制限もありません。手術した箇所には線上の傷跡が残りますが、1年程度で目立たなくなります。個人差はありますが、体質や部位により、傷跡が目立って残る場合もあります。
その他、盛り上がったほくろは、医師の判断によっては保険適用内でのレーザー治療が可能な場合があります。局所麻酔を用いて隆起した部分をメスなどで切除した後、炭酸ガスレーザーで病変を焼く方法で、傷跡が目立ちにくく、キレイに仕上がります。治療後はかさぶたができますが、1〜2週間で剥がれます。数ヶ月間赤みは残りますが、外科的手術よりも負担の少ない方法と言えるでしょう。なお、赤みが引いた後もほくろの色素が残っている場合や、ほくろが深い場合は、複数回治療を繰り返す場合があります。

このように皮膚科ではほくろのサイズや深さ、ほくろができている場所などを踏まえて、適切な治療法を検討していきます。気になるほくろがある時や、盛り上がったほくろを除去したいと考えている人は、自己流のケアは控えて診察を受けましょう。

まとめ

  • ほくろは、医学的には「色素性母斑」と呼ばれる良性の腫瘍である
  • メラノサイトが母斑細胞に変質し、細胞の塊を形成することでほくろが発生する
  • 母斑細胞が変質し増殖する過程で隆起すると、ほくろが盛り上がったようになる
  • ほくろと混同しやすい皮膚の病気には、脂漏性角化症やメラノーマなどがある
  • 直径5mmを超えるほくろで、徐々に大きくなっていたり境界が不明瞭になっていたりするものは悪性腫瘍の可能性もある
  • ほくろを増やさないためには、紫外線対策の徹底が重要
  • ほくろを除去する方法には、外科的手術やレーザー治療などがある
  • ほくろを除去したい場合は、皮膚科を受診し、診断を受けることが第一