医療コラム
年々増えるほくろ。増える要因と対策できることをご紹介。
「年をとったらほくろが増えてきた」と悩んでいませんか。ほくろはチャームポイントとも言われますが、増えてくるとコンプレックスに感じる人もいます。ほくろが増える要因と対策をご紹介しましょう。
ほくろとは
ほくろは、医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」または「色素細胞母斑(しきそさいぼうぼはん)」などと呼ばれる良性の腫瘍です。「腫瘍」と聞くと身体に悪影響があるように感じるかもしれませんが、ほくろはあくまでも良性で、「メラノーマ」と呼ばれる皮膚がんの一種に変わることはほとんどありません。
メラニン色素をもつ母斑細胞が、皮膚の一部分に多く分布したり固まったりすることによって生じるのがほくろで、その位置や量によって茶色、褐色、黒色などになります。形は平らなものから盛り上がったものまで様々で、多くは直径6mm以下ですが、まれに10mmを越える大きなほくろができることがあります。6mmを超えてさらに大きくなるほくろは悪性の可能性もあるため、皮膚科で相談しましょう。
ほくろが増える要因
ほくろには生まれつきある「先天性色素性母斑」と、成長する中で学童期から思春期以降に目立ってくる「後天性色素性母斑」がありますが、圧倒的に多いのは後者です。特に肌の衰えが気になってくる30代〜40代以降になって、ほくろが増えてきたと感じる人も多いのではないでしょうか。大人になってほくろが増える要因としては、次のようなものがあげられます。
〇紫外線の影響
紫外線を多く浴びると、その刺激から肌を守るためにメラニン細胞の働きが活性化し、メラニン色素を生成するようになります。メラニン色素はシミの原因にもなりますが、その量や分布によっては、ほくろの生成率が上がります。ほくろの増加には遺伝的な体質も関わると考えられていますが、シミやほくろの発生を予防するためには、一年を通じて紫外線対策を徹底することが重要です。
〇ターンオーバーの乱れ
肌には「ターンオーバー」と呼ばれる新陳代謝の仕組みが備わっていて、通常約28日かけて、肌の細胞が生まれ変わっています。しかし、加齢に加えて、更年期によるホルモンバランスの乱れなどが生じてくると、ターンオーバーのサイクルも崩れたり遅れたりするため、メラニン色素がスムーズに排出されずにほくろができやすくなります。さらに、角質が剥がれ落ちにくくなり、肌の表面が硬く厚い状態になってしまうと、新陳代謝が進みづらくなってほくろが増えやすい状態になると考えられます。
〇生活習慣
栄養バランスの偏った食習慣や、睡眠不足、過度なストレスなどもホルモンバランスを乱し、新陳代謝を遅らせる要因となります。また、スキンケアやメイク、マッサージなどで肌に強い刺激を与えてしまうと、メラニン色素が集中しほくろが増えるきっかけとなります。自分では気がつかない習慣が肌の負担となっている可能性があるため、日頃のケアにも注意が必要です。
ほくろを皮膚科で除去するには
年々増えるほくろに悩んでいる人は、紫外線対策を徹底したり生活習慣を見直したりしてみましょう。ただし、「既にできてしまったほくろをどうにかしたい」という場合、自分で消すことは困難です。インターネットなどでは自分でほくろを除去する方法が紹介されていますが、肌に強いダメージを与え跡が残る可能性が高いため控えましょう。
安全にほくろを除去するためには、皮膚科での治療がおすすめです。皮膚科で受けられるほくろ治療の選択肢は、ほくろの部位や大きさ、形、深さなどによって異なりますが、一般的によく行われるのは「炭酸ガスレーザー」による治療です。
炭酸ガスレーザーは水分を含むものに吸収される性質があります。ほくろには水分が含まれているため、照射すると熱エネルギーに転換されて一瞬のうちに組織を蒸散することができます。高エネルギーをピンポイントで照射するため、治療時間が短く、皮膚組織の損傷を最小限に抑えられるのが特徴です。色素が深い場合は、一度の治療で除去しようとすると傷跡の治癒が難しく凹んでしまうことがあるため、複数回の治療に分けて最小限の傷跡を目指します。
施術時には基本的に麻酔をするため、その際の痛みはありますが、レーザー治療自体の痛みは気にならない程度です。施術時間の目安は約10分程度で、1週間ほど自宅で軟膏を塗布し、経過をみていきます。治療後は徐々にかさぶたが形成され、かさぶたが剥がれた後、赤みが1〜3ヶ月程度続きますが、その間メイクは可能です。赤みが引いた後、色素が残っている場合は、再照射することがあるため医師に相談してみましょう。
ちなみに、色素が深いほくろ、大きいほくろなどを完全に取り切る際は、日帰りで手術を行うケースもあります。この場合は、メスでほくろを切り取って、その後縫合するため、多少の傷跡が残ることがあります。
ほくろ治療に保険は適用される?
ほくろの除去治療が保険適用となるかは、ほくろの部位や大きさ、深さなどによって異なります。治療後の注意点なども治療内容によって異なるため、皮膚科でのほくろ治療を希望する場合は、まず診察を受け、治療法について相談しましょう。気になるほくろが一つでも目立たなくなると、コンプレックスが解消され、自分に自信が持てることもあります。お悩みの解決に、皮膚科を活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- ほくろは、医学的に「色素性母斑」または「色素細胞母斑」などと呼ばれる良性腫瘍である
- メラニン色素をもつ母斑細胞が、皮膚の一部分に多く分布したり固まったりすることによって生じる
- ほくろの形や大きさは様々だが、6mmを超えてさらに大きくなる場合は、悪性のものとの鑑別が必要
- ほくろには生まれつきある「先天性色素性母斑」と、成長する中で学童期から思春期以降に目立ってくる「後天性色素性母斑」がある
- 大人になってほくろが増える要因としては、紫外線の影響やターンオーバーの乱れ、生活習慣などがあげられる
- ほくろの発生を予防するには紫外線対策を徹底し、ターンオーバーを整えることが重要
- 自分でほくろを除去する方法は、肌に強いダメージを与え、跡が残る可能性が高い
- 安全にほくろを除去するためには、皮膚科で治療を受けることがおすすめ
- ほくろ治療の選択肢は、ほくろの部位や大きさ、形、深さなどによって異なる
- 一般的に多く行われる「炭酸ガスレーザー」の他、切除縫合手術が行われる場合もある
- まずは診察を受け、適切な治療や注意点、費用などを確認することが大切