食べ物によるアレルギー「食物アレルギー」の種類、症状別の対処方法を解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

食物アレルギーは複数の種類があり、原因となる食べ物や症状が現れるきっかけが異なります。また症状も人によって様々で、場合によっては命が危険にさらされることもあるため、正しい対処法を知っておくことが重要です。そこで今回は、食物アレルギーの種類や症状、対処法について解説します。

食物アレルギーとは

食物アレルギーとはその名のとおり食べ物が原因で起こるアレルギー反応を指します。アレルギーは免疫機能が過剰に働くことで起こるもので、本来は害のない物質に対して身体が「有害だ」と判断し、排除しようとすることで様々な症状が現れます。
食物アレルギーではアレルゲン(アレルギーの原因物質)となり得る食べ物がいくつもありますが、代表的なものは以下です。

  • 鶏卵
  • 牛乳
  • 小麦
  • 木の実類
  • 落花生
  • 果物類
  • 魚卵類
  • 甲殻類
  • そば
  • 大豆

食物アレルギーの種類と症状

食物アレルギーは、次のようにいくつかのタイプに分けられます。

IgE依存性アレルギー反応(即時型食物アレルギー)

IgE依存性アレルギー反応は、アレルゲンが初めて体内に侵入した時にIgE抗体が作られることで起こります。IgE抗体が作られると、次にアレルゲンが取り込まれた時にヒスタミンなどが分泌され、アレルギー症状が出るようになります。アレルゲンの摂取から2時間以内に症状が現れるため「即時型」とも呼ばれています。
最も多いのは皮膚の赤みや痒み、蕁麻疹(じんましん)、発疹といった皮膚症状で、患者様のおよそ9割に現れます。その他、くしゃみや鼻水、咳込みなどの呼吸器症状、結膜の充血やむくみなどの粘膜症状、口腔内の違和感や唇のむくみ、腹痛、吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状、頭痛などの神経症状を訴える人もいます。こうした症状は軽症であれば30分~1時間をピークに治まっていきます。ただし、即時型食物アレルギーの約1割は重篤な全身症状が現れることがあるので注意が必要です。全身の蕁麻疹やのどのむくみ、呼吸困難、血圧低下、意識障害など、全身の臓器に同時多発的に症状が現れる状態で、「アナフィラキシー」と呼ばれます。特に意識障害や血圧低下などを伴うショック症状は「アナフィラキシーショック」と呼ばれ、命に関わるような危機的な状態のため、周囲の人は救急車を呼ぶことが求められます。
また、IgE依存性アレルギー反応の特徴として、アレルギーを起こしやすい食べ物が年齢とともに変化することも挙げられます。先に挙げた食品のうち、鶏卵や牛乳へのアレルギーは0歳児に多く見られますが、成長とともに減少します。また幼児期になると木の実類や魚卵類などが、また学童期になると甲殻類や果物類、そばなどがアレルゲンとなるケースが増えてきます。さらに成人の場合は甲殻類が最も多く、次いで小麦、魚類、果物類と続きます。

〇非IgE依存性アレルギー(遅発型食物アレルギー)

IgE抗体が関与しない食物アレルギーです。アレルゲンの摂取から6時間~数日以上経過してから現れることがあり、「遅発型」「非即時型」とも呼ばれています。詳しい原因はわかっておらず、症状が腹痛や腹部膨満感、頭痛、疲労感など、一見するとアレルギー症状と思えないようなものがあるため、食物アレルギーと気づかれないことも少なくありません。

〇食物依存性運動誘発アナフィラキシー

特定の食べ物を摂取した後に運動することで、めまいや呼吸困難、蕁麻疹、吐き気や嘔吐といったアナフィラキシー症状が起こるものです。食後30分~4時間後に運動をすることがきっかけになりますが、ストレスや体調、生活環境といった他の要因も発症に関係しています。

〇口腔アレルギー症候群

特定の野菜や果物、大豆などを食べることで、口の周りが赤くなる、口腔内が腫れる、のどに痛みや違和感が生じる、といった症状が現れます。野菜や果物、大豆などに含まれる特定の物質が口の粘膜に触れることで起こります。稀ですが、アナフィラキシーを起こすこともあります。野菜や果物、大豆などに含まれるアレルギー物質が影響していて、これらは花粉症の原因となるスギやイネ科の植物のアレルゲンと似た構造をもっています。そのため、花粉症と合併するケースが少なくありません。また、ラテックス(ゴム)アレルギーがある場合も、バナナやキウイ、アボカドなどに対してアレルギー症状が出やすいことがわかっています。

食物アレルギーの症状が出た時の対処法

食物アレルギーの症状が出た際の対処法は、その重症度によって大きく異なります。

〇重症の場合

全身症状が悪い(意識がもうろうとしている、ぐったりしているなど)、呼吸が苦しい、我慢できないほどの強い腹痛が続いている、嘔吐をくりかえすなどの症状が見られる場合は、周囲の人は適切な対応が求められます。まずは救急車を呼び、患者様が「エピペン(アドレナリン自己注射)」を持っている場合はすぐに使用します。もし救急車を待つ間に呼吸が確認できなくなったら、心肺蘇生を行いましょう。さらに、症状に合わせて次のような安静状態をとらせます。

  • 意識がもうろうとしている、ぐったりしている:血圧が低下している可能性があるため、仰向けに寝かせて足を少し高くします。呼吸が苦しく仰向けになれない場合は、背中に寄りかかれるものを置いて、上体を起こした状態で座らせましょう。
  • 吐き気がある:吐物によって窒息してしまわないように顔と身体を横向きにします。

〇中等症の場合

全身に蕁麻疹などの皮膚症状が現れている、我慢できないほど強い痒みがある、顔全体が腫れている、強い腹痛や複数回の嘔吐がみられる、激しい咳があり軽い息苦しさがある、といった症状がある場合は医療機関を受診しましょう。また過去にアナフィラキシーを起こしたことがある場合や、元気がないなど全身状態が悪い場合には救急車を要請しましょう。

〇軽症の場合

部分的に蕁麻疹が出ている、唇やまぶたが腫れている、鼻水や鼻づまり、咳込みなどの症状があるような場合は、まずは様子を見ましょう。1時間程度は症状が急変する可能性があるので、特に注意が必要です。その後、症状が落ち着いた場合は急いで受診する必要はありませんが、初めて症状が現れた人や過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人、その他心配なことがある人は、医療機関に相談しましょう。
なお、軽症の場合、受診時には皮膚症状などが消えている場合も少なくありません。症状が出ている時に写真などを撮っておくと受診の際に役立ちます。

食物アレルギーの治療法

医療機関では、食物アレルギーかどうかの検査をすることができます。代表的な検査は血液検査やプリックテスト(少量のアレルゲンを皮膚に入れて反応を見る検査)です。より詳しい検査方法として「食物経口負荷検査」がありますが、16歳以上は保険適用外です。また食物経口負荷検査は、原因と考えられる食べ物を実際に摂取して反応を見る検査で、アナフィラキシーなどの危険性も伴うことから、検査を実施している医療機関が限定されています。

問診や検査を受けて食物アレルギーと診断されると治療が必要になることがありますが、特に成人の場合、根本的な治療法はありません。そのため、原因となる食べ物を除去することと、薬を使った対症療法が基本の対策になります。たとえば、皮膚の痒みや蕁麻疹に対しては抗ヒスタミン薬が、喘息症状が強い場合にはステロイド系の薬が用いられます。またアナフィラキシーの可能性がある患者様にはエピペンが処方されます。
一方で小児の場合は、耐性を獲得することによって症状が出なくなることもあるため、医師の指導のもと、少しずつ食べさせて慣れさせていく「経口免疫療法」が行われることがあります。さらに小児の食物アレルギーはアトピー性皮膚炎と合併するケースが多いため、皮膚のケアとして保湿剤の塗布なども重要になります。

気になる症状があったら皮膚科などに相談を

特定の食べ物を食べた後に皮膚症状が出たり、体調が悪くなったりした場合は、皮膚科や内科、アレルギー科などを受診しましょう。食べ物が原因で皮膚に痒みが出たりすると、「食物アレルギーに間違いない」と思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。たとえば青魚やタケノコ、肉類などは、食品中にヒスタミンに似た物質が含まれていて、それが原因で蕁麻疹などの症状が出ることがあります(ヒスタミン食中毒)。こうした他の疾患と判別するためにも、まずは医療機関を受診して検査を受けましょう。
また自分では食物アレルギーだと思っていたものが、実は別の物質に対してのアレルギー症状だった、という可能性もあります。自己判断で決めつけてしまうと、対処法を誤り思わぬ不調に悩まされる可能性がありますので、気になる症状がある時には皮膚科などに相談しましょう。

まとめ

  • 食物アレルギーは、食べ物が原因で起こるアレルギー反応で、免疫機能が過剰に働くことで生じる
  • 代表的なアレルゲンには鶏卵、牛乳、小麦、木の実類、落花生、果物、魚卵類、甲殻類、そば、大豆、魚がある
  • 食物アレルギーはIgE依存性アレルギー反応(即時型)、非IgE依存性アレルギー(遅発型)、食物依存性運動誘発アナフィラキシー、口腔アレルギー症候群に分けられる
  • 症状は皮膚症状、呼吸器症状、消化器症状、神経症状など多岐にわたり、重症の場合はアナフィラキシーショックを引き起こすことがある
  • 症状が出た時の対処法は重症度によって異なり、重症の場合は救急車を呼び、中等症の場合は医療機関を受診し、軽症の場合は様子を見てから受診を検討する
  • 根本的な治療法がなく、症状を出さないよう原因となる食べ物を除去するか、薬を使った対症療法が行われる
  • 特定の食べ物を食べた後に症状が出た場合は、皮膚科や内科、アレルギー科などを受診し、適切な検査や治療を受けること