ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは?シミ・そばかすとの見分け方と保険適用について

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

大人になってからできた両頬の細かいシミ。「そばかす?それとも肝斑(かんぱん)?」と思っている人もいるかもしれませんが、「ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)」の可能性があります。一般的にはあまり知られていないADMですが、どんなものなのでしょうか。そこでADMについて、他のシミやそばかすとの違いを含めて解説します。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは

ADMとは、「Acquired Dermal Melanocytosis」の頭文字をとった言葉で、日本語では「後天性真皮メラノサイトーシス」と呼ばれています。ADMは、頬骨や目尻、下まぶた、額などに拡がる1~3mmほどの小さな点状のシミです。シミは顔の両側に左右対称に拡がります。色は青色~灰色などの褐色で、その見た目から加齢によるシミ(老人性色素斑)やそばかす(雀卵斑)、肝斑などと間違われやすい傾向があります。
ADMは日本語名からもわかるように後天性のもので、思春期以降(おもに成人以降)に現れます。日本人や中国人の女性に多くみられますが、男性にも発生します。

他のシミとはどう違う?ADMの特徴

ヒトの皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織という順番で層を成しています。シミの原因とされるメラニンを産生するメラノサイトは通常、表皮に存在していて、紫外線やホルモンなど、様々な影響で活性化します。その結果作られた大量のメラニンが排出されずに色素沈着を起こしてできるのが、加齢によるシミや肝斑、そばかすです。
これに対して、ADMは表皮よりもさらに深い場所にある真皮のメラノサイトが影響します。通常、表皮にしか存在しないはずのメラノサイトが何らかの理由で真皮に入り込んでしまい、活性化しメラニンを産生することがあります。その結果できるシミがADMです。
ADMの原因について、はっきりとしたことはまだわかっていませんが、遺伝的な要因などが関連しているのではないか、と言われています。
なお、ADMはこれまで、同じく真皮のメラノサイトが関係している「太田母斑(おおたぼはん:目の周りなどにできる青痣)」の仲間と言われてきましたが、現在は別物とされています。

ADMとシミやそばかすとの見分け方

ADMは他のシミやそばかすと見分けがつきにくいのですが、それぞれ次のような特徴があります。比較してみましょう。

  • ADM:1~3mmほどの小さな点状のシミ。頬骨(女性に多い)や目尻、下まぶた、額(男性に多い)などにできる。顔に左右対称にできるのが特徴。
  • 加齢によるシミ(老人性色素斑):中高年の男女にみられる。数mmほどの小さなものから5cmほどの大きいものまで大小様々で、シミの輪郭がはっきりしている、時に隆起することもあります。顔面の他、手の甲や腕など、紫外線に当たる部位に発生する。
  • そばかす(雀卵斑):数mmの小さなシミができる。両頬から鼻にかけて左右対称に出ることが多いが、顔以外の場所にできることもある。色は赤色~明るめの褐色。思春期にかけて目立つようになり、その後は薄くなっていくことが多い。
  • 肝斑:30~50代の女性にみられるシミ。要因の一つとして女性ホルモンの影響が挙げられる。頬骨あたりに左右対称にできることが多いが、口の周りや額に出ることもある。シミの輪郭はボヤっとしている。

以上のような違いがありますが、ADMが他のシミと混在しているようなケースでは、見た目だけでは判別できないことがあります。そのような場合には病理検査をしてメラノサイトの場所を調べ、確定診断をすることもあります。

ADMの治療

ADMは他のシミとは治療法が異なります。表皮のメラノサイトが原因となる他のシミは、内服薬や外用薬、光治療、レーザー治療(QスイッチYAGレーザーなど)が行われるのが一般的です。ところが、これらの一部の治療法はADMでは効果を発揮しません。ADMはより深い真皮にあるメラノサイトが影響しているためです。ADMに対して有効な治療法は、Qスイッチルビーレーザーです。Qスイッチルビーレーザーはレーザーが真皮のメラニン色素にまで届き、メラノサイトだけを破壊することができます。
治療では、シミの状態を見ながら3ヶ月以上の間隔をあけて合計で3~5回程度、Qスイッチルビーレーザーを照射します。個人差はありますが、期間にすると1年~数年以上かかります。他のシミにくらべて治療にかかる期間が長く、しかも照射直後から数ヶ月間、色素が濃くなっていく期間があります。不安な気持ちになりやすいのですが、少しずつ薄くなっていくため、諦めず根気よく治療を続けることが重要です。
なお、ADMのレーザー治療は5回までなら保険が適用されます。1回あたり3割負担で6,000円~12000円程度で受けられますが、シミの範囲などによっても異なるため、実際の料金は医療機関で確認しましょう。

ADMの治療を受ける時の注意点

Qスイッチルビーレーザーは、レーザー治療の一種であるため、治療時には多少の痛みを伴います。感じ方には個人差があり、またシミの濃さや照射範囲によっても異なります。麻酔クリームで痛みを和らげることができるため、心配な人は相談しましょう。
また、照射後は炎症後色素沈着が起こることがありますが、一過性のものです。予防として内服薬やレチノイン酸やハイドロキノンによる外用療法が必要になります。医師の指示に従いましょう。

細かいシミを見つけたらADMの可能性も!専門医に相談しよう

お伝えしたように、ADMは他のシミと間違われやすい傾向があります。加齢によるシミやそばかすなどとして治療を受けてしまうと、効果を得られません。信頼のおける専門医にしっかり診てもらい、正しい診断と治療を受けましょう。

まとめ

  • ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、頬骨や目尻、下まぶた、額などに1~3mmの小さな点状のシミで、顔に左右対称に拡がる
  • ADMは、通常表皮に存在するメラノサイトが真皮に入り込んでメラニンを産生することにより発生するもので、加齢によるシミやそばかすとは異なるものである
  • 他のシミとADMは見分けがつきにくいことがあり、病理検査が必要な場合がある
  • ADMの治療にはQスイッチルビーレーザーが有効であり、3ヶ月以上の間隔をあけて3~5回程度の照射が必要である
  • ADMの治療におけるQスイッチルビーレーザーの照射は5回までなら保険が適用される